1432話 シーカンバーのごっつい男
シーカンバーの奴はごっつい体に凶悪な顔してるくせに、丁寧にお茶をいれてくれた。好感度アップ!
「すまんな。いただくよ。」
「ドリオラさんは夕方には戻ると思うが……」
「いや、特に用があったわけでもない。ちょいと確認しておきたいことがあってな。」
「何だ?」
「ナマラのオラカン畑があるな? 昼前にそこでオラカンをもいでたら、ここのガキに文句言われてな。因縁つけられて六万ナラーほど取られた。オラカンを好きに取っていいってナマラとの約束は代替わりしたから無効か?」
「なっ、なん……だと……」
そんなに絶望的な顔するなよ……
「すまねぇぇぇーー! そいつは入ったばかりの下っ端だぁ! とうぜん魔王さんのことなんか知らねえし荒ごとにも使えねぇから先代のオラカン農園をやらせてたんだぁ!」
そこまで頭下げなくていいのに……テーブルの上に額がべったり。またまた好感度アップ。
「シーカンバーの総意じゃないってことならそれでいい。それからもう一つ。俺がローランドから拐われてきた人間を保護し始めたのは知ってるな?」
「き、聞いてる!」
「それならいい。もちろんシーカンバーでも協力してくれるよな?」
「も、もちろんだとも! ど、どうすればいい!?」
「簡単なことさ。意に沿わぬ形でヒイズルに連れてこられたローランド人を見つけたら保護してくれりゃあいい。買い取るのに金がかかっても気にするな。使った金の倍額を払ってやるさ。」
「あ、ああ……聞いてる通りの話だな……」
そうだろうとも。
「あちこちで値上がりしてるそうだしな。でも、気にするな。保護したローランド人はオワダ商会に任せたらいい。お前たちはかかった費用だけ計算しときな。」
「わ、分かった……噂通り半端ねぇな……」
「虐待されてたり舌を抜かれてたりした場合もしっかりチェックしておいてくれ。やった奴も同じ目に遭わせるから。」
幸いなことに今回の四十人の中にはいなかった。証拠隠滅のために殺されてるって可能性もあるけどね。
「……ぐ、わ、分かった……徹底しておく……」
うーん。物わかりがよくて助かるな。さすがシーカンバー。
「じゃ、これ手付けな。頼んだぜ?」
「あ、ああ……分かった……」
渡した金額は二千万ナラー。
「なら約束な。お前に全て任せる。これとは別に百万ナラー出すから先ほどの通りローランド人保護に尽力しな。」
「おう、任っせっとおおおあ?」
「毎度お馴染み契約魔法さ。ほれ。お前にボーナスだ。百万ナラーやるから気張れよ?」
やるしかないんだけどね。
「あ、お、おう。」
よし。これでオワダへの根回しも大丈夫だろう。
「じゃあな。あぁ、例のガキは優しくしてやりな。俺は怒ってないからさ。」
「あ、ああ、すまねぇ……きっちり教育しとく……」
さてと。宿に帰ろうか。
「ピュイピュイ」
おやコーちゃん。少し飲んでから帰りたいの? 仕事終わりのサラリーマンかな。よし、なら行こうか。
「ようお前さ、飲みに行かないか? うちの蛇ちゃんが飲みたいんだとよ。いい店連れってくれよ。奢るからよ。」
「よっしゃ! 行くかぁ! ちっと待っててくれや!」
そう言ってシーカンバーのごつい男は奥に消えていった。ならば外に出ておこうかな。
「待たせたな。そんじゃ行くぜぇ!」
「あー! サシ兄ちゃん! おれも行くぅー!」
「どこ行くんー?」
「遊ぼうでぇー!」
「はらへったぁー!」
うおっ!? さっきの子供達だ! まだいたのかよ!
「おーお前らかぁ。しゃあねえな。すまんが魔王さん、こいつらも一緒でいいか?」
「ああ、いいよ。」
「お前ら! 魔王さんがいいってよ! 挨拶しろや!」
「まおー? さっきのにーちゃんじゃん!」
「まおーさん? って何?」
「また遊ぶんか?」
「ねーちゃんはおらんのぉ?」
いや、別にいいんだけどね。子供だし。
「酒場に子供連れてくのか?」
「ああ、酒飲ますわけじゃないからな。よし、行くぜ」
走り出す子供達の後を歩く私達。
なんだか私、連日飲んでないか? まだ十六、いやセブンティーンなのに。まあ今日はアレクと別行動だから早めに切り上げて宿に帰ろう。
アレクは今ごろ何やってるのかなぁ……
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