1413話 ゴッゾとビレイド

「いやーさっきから楽しそうな声が聴こえてくるなぁーと思ったら! まさかゴッゾさんだとはね!」


「おお、お前かぁ……」


「何だよぉー、つれないじゃん? 二軒目行こぉーよぉー。次は女のいる店にさぁー?」


「いや、いい……俺ぁこいつと飲むからよぉ……」


これまた闇ギルドらしくキンキンギラギラした服装した奴だなぁ。趣味悪っ。


「ふぅん? つれないなぁ。たまには僕と飲んでくれてもよくなぁい? ああもちろん僕の奢りだよ? ゴッゾさんは心配しなくていいんだよぉ?」


なぁーんか嫌味ったらしい言い方してんなぁ。


「いいから行け! 邪魔なんだよ!」


「ふーん、ゴッゾさん僕にそんな口きいていいのぉ? 例の借金どうする気ぃ?」


「うるせぇ! 耳ぃ揃えて返してやらぁ!」


なんだなんだ? 雲行きが怪しくなってきたぞ? ギラギラ野郎の周りの奴らはクスクス笑ってやがるし。


「さっすがイケイケのゴッゾさん。じゃあ来週の幹部会が始まる前に返してね。返せない時は……うーんそうだなぁ。よし、ゴッゾさんの席を譲ってもらおうかな。いいよね?」


「て、てめぇ……!?」


「あれれ? 返してくれるんだよね? だったら問題なくない? 相手がゴッゾさんってことで僕だって利子つけてないんだしさ。いいよね。『誓う』よね?」


「くっ……ああ。いいぜっごお……クソが……」


おおー。これはびっくり。私と同じく言葉のみで契約魔法をかけやがった。書類も魔法陣もなし。言葉一発かよ。まあ違うのは込められた魔力量かな。後で私が解呪してやったらどんな顔するんだろうね。ふふ。


「じゃあねー。ゴッゾさんに二言はないよね。それに僕の『誓約』は破れないし。じゃあまた来週ね!」


「ちっ……」


ギラギラ野郎だけでなく、取り巻きまでもがニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら出て行った。せっかく楽しく飲んでたってのにさ。


「くくっ、下っ端相手に形なしだな。まあ飲めよ。それから話してみろ。たぶん面白いことが起こるぜ?」


「あぁん!? お前ぇ他人事だと思ってよお……おらぁ! 次の酒ぇ持って来いやぁ!」


あ、元気になった。


「ピュイピュイ」


コーちゃんもお代わりだね。


「で? まあ話してみろよ。」


「お、おお……それがよ……」


ふむふむ……


うーん、やっぱこいつ最低だな。


自分が弱った女が好きだからって病気持ちや不具の女、大怪我してる女ばかりを集めた娼館を作ったと。腐っても蔓喰幹部のゴッゾだ。それぐらいの金はあった。

だが、そんな娼館に好んで行くようなイカれた客がそうそういるはずもなく。たちまち経営は左前と。しかもそんな女ばかりな所為もあり見る見る人数が減っていく。主に女が死亡して……

客は客でイカれているため遊び方までもイカれている。酷い遊び方をされて残った女まで壊されてしまったと。そんな客にはそれなり以上の代償を払わせたが、それでもどんどん出て行く費用。いくら奴隷として買った女でも食費は必要だし最低限死なないように治癒魔法使いに診せる必要もあるもんな。なんだかなぁ……最低。


「で、さっきの奴に金借りたって訳か?」


「おお……あいつぁ駆け出しの頃から目ぇかけてやってたからよぉ。そいつが俺に恩返ししてぇって言うからよ……」


「あー、まんまと嵌められたわけね。闇ギルドのくせに甘い奴だな。」


「ふん……あいつぁ蔓喰で一番金ぇ持ってやがるからよぉ……つい無利子って言葉に甘えちまってよ……」


「で、結局いくらなんだ? お前の借金額はよ?」


「あー……千五百八万ナラーだ……」


半端な金額だなぁ……


「バカが……手ぇ引くのが遅いんだよ……」


さっさとやめてりゃここまで借金が膨れ上がることもなかったろうにな。


「あぁ……ビレイドの奴がな……ここでやめるのはもったいない、僕が支えますなんて言うもんでよ……気付いたらこの様だぁ……」


「お前闇ギルド稼業が向いてないんじゃないか……? まあ事情は分かった。そこで提案がある。」


「あぁ? 提案だぁ?」


「簡単な話だ。その金、俺が出してやるよ。もちろん条件付きだけどな?」


「お、お前……例の回状からして相当な金ぇ持ってんだろうとは思ったけどよぉ……」


正解だね。


「さて、条件だが……利子はなくていい。簡単な事だ。ローランドの人間を救うのに協力してくれればいい。後はそうだな……弱った女で遊ぶのはやめとけ。人の趣味に口出しするのは無粋ってもんだけどな。」


「お前……どうしてそこまで……」


「んー……そうだな。まず、蔓喰は嫌いじゃない。それからお前はローランド人を救うのに役に立ちそうだ。後はそうだな……お前はカドーデラに似てバカだからかな。あいつとは違う方向だが、バカだな。」


「カドーデラさんと……そうかよ……俺ぁカドーデラさんに似てんかよぉ……ふふ、喜ばせんじゃねぇよ……よっしゃ! そんなら頼む! おっと、その前に……おう! あの酒持ってこいや!」


ん? あの酒?


運ばれて来たのは見た目は普通の酒だが……グラスが違うな。むしろこれは……杯?

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