1412話 蔓喰のゴッゾ
「姐さん姐さん!」
「ポリーヌ姐さん! 大丈夫なのかい!」
「顔色がいいよ! よくなってるよぉ!」
「なんだぁお前らぁ? おう、待たせたな。行こうぜぇ。俺の好きな店でいいだろぉ?」
こいつはこいつでプレイの邪魔をされたのに大らかな奴だな。カドーデラの名前が効いたかな。
「ああ。ちょっと待ってくれるか。お前らはその女が目を覚ましたら沈まぬ夕日亭に連れてっておいてくれ。そしたら明日にはオワダに運んでやるから。」
「なんだぁ? その女が欲しかったのか?」
「いや、治しに来たんだよ。死にかけって話だったからな。よくお前もそんな女を相手に遊ぼうと思ったな……」
「俺は弱ってる女が好きなんだよぉ。おい、さっさと行こうぜ!」
「ピュイピュイ」
酒と聞いて黙っていられないのがコーちゃんだもんね。
「ああ行こう。いい酒が置いてある店で頼むぞ?」
「当たり前よぉ! お前こそカドーデラさんの話ぃ聞かせろよな!」
「ああ。大した話でもないけどな。」
やれやれ。穏便に済んでよかった。確かに弱った女を買ってんのは気に入らないが、客は客だもんな。問答無用でぶち殺す気はなかったんだよね。店側もこいつが相手だと断りきれなかったってとこか? 無茶しやがるな……
「ゴ、ゴッゾ様! こ、この度は大変ご無礼を! も、申し訳もございま……」
「あーいい。ちいと飲みに行ってくるからよぉ。次の女ぁ用意して待っとけやぁ」
「はいぃ! かしこまりました!」
「元気な女を相手にしろよな……」
歩く事五分。路地裏の汚い店に着いた。
「ここは蔓喰御用達の店でよぉ。こんな感じだがいい酒置いてんだぜ?」
「へー……」
「ピュイピュイ」
コーちゃん的には期待できる店なんだね。
「おう、やってるかぁ!」
「らっしゃーい……ちーっすゴッゾさん」
やる気のなさそうな店員だなぁ。
「奥ぁ空いてっかぁ?」
「あー、ビレイドさんが使ってます」
「ちっ、まあいい。酒だ酒ぇ! いいやつ出せや!」
「うーっす」
「三人前な。」
「あー……」
私とゴッゾで態度が違うじゃないか。払うのは私なんだぞ? まったく……
適当なテーブルに腰掛ける。椅子が堅いな……
「そんで? お前は誰なぁ?」
「俺はカース・マーティン。こっちの蛇ちゃんはコーネリアス。コーちゃんと呼んでやってくれ。」
「どっかで聞いた名前だぁなぁ……」
「ヤチロの蔓喰から回状が回って来てないか? ローランドの女に関するさ。」
「あっ! じゃ何か!? お前があのローランドの魔王か!? オワダでエチゴヤぶっ潰したって言う!?」
やっぱ知ってんのね。
「正解。それで色々あってカドーデラに狙われちまってな。」
「その色々を話せってんだよ!」
「へいお待ちー」
やっと来た。グラスが三つ。こんな店にしては高そうなガラス製とはね。透明度もいい。
「おう、乾杯だぁ」
「乾杯。」
「ピュンピュイ」
おっ、こいつは……ラムっぽいな。一杯目からラムをストレートとは乱暴な……旨いからいいけどさ。ロックにしよ。『氷球』
「ふうぅ……ぷはぁ! で! お前はローランドの魔王なんよなぁ?」
「ああ。それがどうした?」
「カドーデラさんは無事なんか?」
妙な質問をするじゃあないか。今から私が話してやるってのに。せっかちな奴だな。
「無事だよ。死にたがるバカだけどな。」
「あぁ!? どういうことなぁ!?」
「まあ聞け。そもそもな…………」
じっくりと話してやった。
「なるほどなぁ……カドーデラさんらしいぜぇ……」
「そんなわけだ。あいつは大した男だな。」
「あったりめぇだ。だがよぉ……つまりお前は魔法なしでもカドーデラさんと
「まあ、装備のせいもあるけどな。」
「ふーん……まあええわ。ほれぇ、飲めや。」
「ああ。これ、旨いな。」
「ピュイピュイ」
コーちゃんも満足してるね。
「で、お前はカドーデラとはどんな因縁があるんだ?」
「へ、俺にも若い時があってよぉ。あん時ぁ無敵だと思ってたんだがなぁ。カドーデラさんにコテンパンにやられちまったのさぁ。あの人はすげぇぜ。で、お前はそぉんな細ぇ体でカドーデラさんと互角だとぉ? 本当かぁ?」
さっき話しただろうがよ……
「剣の腕ならカドーデラの方が上さ。圧倒的にな。だが装備の差があるからな。まあ、引き分けってとこだろうな。」
装備も実力のうちだもんね。
「はぁーん……人は見かけによらねぇもんだなぁ……まあいいや。ほれ、飲め飲め!」
アレクが待ってるから早く帰りたいのだが、ここの酒が旨いんだよなぁ。
「あれぇ? ゴッゾさんじゃあん? こんなとこで飲んでないでこっち来てくだせぇよぉ?」
「ビレイド……」
なんだ? 楽しく飲んでたのに、ゴッゾが急に嫌そうな顔してやがる。なんだこの若造は?
まあ私の方が若いけど。
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