1411話 蔓喰の幹部

そんな下らないことを考えながらも宿に着いた。おっ、アレクともども全員入口横のロビーっぽい所にいるじゃないか。


「ああカース、おかえりなさい。早かったわね。」


「ただいま。どうしたの? 部屋に入らないの?」


「それがね、ここの特別室は娼婦の入室禁止なんですって。」


あらら。


「ご、ごめんなさい! 知ってたんですけど言い出せなくて……」


アレクの連れの一人がそう言った。そういう規則なら仕方ないな。でも変な規則だな。貴族とかが女を買って連れて来ることだってあるだろうに。もしかしてドレスコード的な問題かな?


「おかえりなさいませ」


いいタイミングで客室係の登場だ。つーか私が帰ってくるのを待ってたな?


「迷惑かけてすまんな。俺がローランドの女を買い集めていることは知ってるな?」


「ええ。噂程度でございますが」


「では部屋を一つ用意してくれ。一番安い部屋でいい。」


「かしこまりました。ではこちらに」


すでに用意済みってわけね。




さすが高級宿。特別室じゃなくても充分広い。十人入っても大丈夫。


「カース、先にこっちの子達の話を聞いてあげて。」


「うん、いいよ。」


「さ、さっきは悪かった! この通り!」

「ごめんなさい!」

「すいませんでした!」


謝ったなら許してやるさ。


「ああ。構わんよ。それで話ってのは?」


「助けて欲しいひとがいるんだ! たぶん見たこともないヤバい毒に侵されてる……それでも、あんたなら……魔王様なら何とかできるってお嬢様が……」


おおー、こいつらアレクのことをお嬢様と呼ぶようになったか。よろしい。助けてやろうとも。


「分かった。毒ならたぶん問題ない。それなら早い方がいいな。今から案内しな。あ、もしかしてお前ら三人はローランド人か? 帰りたいのか?」


「いや、帰らない。絶対帰らない。私らはここでのし上がるって決めてるんだから! そんな施しなんか受けるもんか!」


「え? 施しいらないの? 解毒も?」


「ち、違う! ちょ、ちょっと言い過ぎただけだよ! 頼むよ! 助けておくれよぉ!」


そりゃあ助けるけどさ。どうせなら気持ちよく助けさせてくれよな。


「カース、その人はローランド出身だそうよ。ムリーマ山脈に沈む夕日が見たいんですって。」


「おおー、それはぜひとも助けてあげないとね。じゃあちょっと行ってくるよ。アレク達は適当に過ごしてて。こっちの三人はローランドに帰る組だから。」


「ええ、分かったわ。気をつけてね。」


「ピュイピュイ」


コーちゃんは一緒に行こうねー。やっぱ毒にはコーちゃんがいないとね。


「ガウガウ」


分かってるっての。お前はさっさと風呂に入りたいんだろ? まったくもう……さっさと行って、さっさと帰ってこよーっと。




「ここだよ」


へえ。さっきの店よりは良さそうな門構えだな。


「いらっしゃいま、何だお前たちか……」


「邪魔するよ。度々すまないねぇ。ポリーヌ姐さんに用だよ」


「今夜はだめだ。ポリーヌは接客中だからな」


「はぁ!? ふざけんじゃないよ! あんな体の姐さんを! 殺す気かい!」


毒で弱ってる女に客をとらせるとは……

さすがの私もドン引きだわ。


「五分で終わる。部屋に案内しろ。」


「あぁ!? 無茶言うんじゃないよ! 今入ってるのは蔓喰の幹部ゴッゾさんだぞ! お前殺されるぞ!」


「心配するな。蔓喰とはいい仲なんだ。それに女が元気な方があいつも楽しめるだろ?」


ふふふ、めっちゃ知り合いっぽく言ってやった。


「い、いや……ゴッゾさんは弱った女が好きだから……」


最低な奴じゃないかよ!


「いいから案内しろ。ほら、これやるよ。」


木札を一枚。一万ナラー。


「し、知らねーからな……」


やれやれ。さっさとしろってんだよ。




「ここだ……知らねーからな!」


宿屋の一室風だな。鍵はかかってない。


「おーい! ゴッゾの兄貴ー! いるかい?」


「なんじゃオラぁ! 邪魔すんじゃねぇよ! 殺すぞオラぁ!」


うーんプレイ中なのはいいが……女は虫の息じゃないか? 乱入してよかったな。


「いやーカドーデラからさ。テンモカに来たら絶対ゴッゾの兄貴に挨拶しとけって言われたもんでさ。それはもう真っ先に行けってさ。」


「カ、カドーデラさんが? 俺に?」


「ああ。凄いお人だから絶対挨拶しとけって言われたのさ。お楽しみ中に悪いなぁ兄貴。」


「へ、へへ。いいってことよ。お前はカドーデラさんの舎弟か?」


ごっつい体してるくせに理解が早いな。


「いや、ダチかな。ちょっとばかり殺し合いをした仲さ。あいつは強かったぜ。そんなカドーデラがお前には一目置いてたぜ。凄いんだな。」


「へへっ、よせやい。それよりカドーデラさんと殺し合いだぁ? お前何やったんでぇ?」


「ふふ、長い話になりそうだな。どうよ? そこらで飲みながら話さないか? お前、かなりイケる方だろ? 奢るぜ?」


「よっしゃ! 行くぜ! いい店知ってんだぁ! ちっと待てや。服着るからよ!」


プレイ中に乱入した私が悪かったんだが……こいつ真っ裸で隠しもしないんだからさー。汚いモンをブルンブルンさせやがってさー。あーキモ。


よし。気を取り直して……


この女だな。息も絶え絶えじゃないか……


『解毒』


死汚危神ダイオキシンを解毒するつもりで……魔力特盛でかけてやった。どうコーちゃん? 効いた?


「ピュイピュイ」


オッケー。それなら後は……


コーちゃん、これを飲ませてやってくれる?


「ピュイピュイ」


高級ポーションを口に含み、弱った女の口から体を突っ込んで……直接胃袋に飲ませる。コーちゃんの得意技だ。


「ピュイピュイ」


これでもう大丈夫だね。コーちゃんありがとう。

それにしても今の感じ……

さすがに死汚危神ほどではないが、結構ヤバい毒だな……まるで姉上を襲った偽死汚危神のように……


どうなってんだろうねぇ……

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