1404話 アレクサンドリーネと三人の女

「なあチンピラにメス豚ぁ。お前らさっきから調子に乗ってるよなぁ?」


まあ調子に乗らせた私にも原因がなくはないのだが。


「あ? なんだこのガキぃいきなりよ?」

「頭おかしーんじゃね?」

「俺らチンピラだってよ!」


「メス豚って言った? 言ったよね!」

「生意気ぃー! お姉さん怒るよぉ?」

「平凡な顔してるくせに!」


「とりあえずこれ見ろ。」


この紋所が目に入らぬか。おそれおおくもローランド王国国王直属の身分証なるぞ。ふふ。


「は? ローランド……てめっ! ローランドもんか!」

「あ? 国王直属だ? こいつ貴族野郎?」

「カース・マー……あれ? どこかで聞いたような……」


「ちょっ! 貴族なの!?」

「こんな顔して!?」

「じゃあこっちの女も!?」


「ローランド王国四大貴族、アレクサンドル家の者よ。よくもこの私を娼婦扱いしてくれたわね?」


おお、さすがアレク。かっこいいぜ。


「なっ、何よ! 娼婦で何が悪いのよ! 私らそうやってのし上がってんのよ!」

「そうよ! ここじゃあ稼げる女が偉いんだから! 舐めんじゃないよ!」

「この街で貴族風吹かせて行方知れずになった奴はいくらでもいるんだからね!」


「あら? 娼婦は立派な職業よ? それぐらい常識じゃない。胸を張っていいのよ? 私が言ってるのは、この私は娼婦ではないってこと。この……ローランドの魔王カースの妻になる女だって言ってるのよ?」


あらら、もうネタバラシしちゃうの? アレクったら気が早いんだからもう。

でも、妻になる女だってさ。ふふ、ふふふ、うふふぅうー。


「ローランドの……まおお?」

「まお、魔王……まさか……」

「オワダでエチゴヤを潰したって……」


「え? 何こいつ? 有名人うれもんなの?」

「うっそぉ? こんなショボい顔してぇ?」

「エチゴヤを潰した? 嘘ばっかり!」


「お前らが信じるかどうかは勝手だがな。さてと、さんざんふざけた口きいてくれたな。詫びいれるんなら許してやるが?」


私は優しいのだ。それにしてもここまで私らの噂が届いているのか。ヤチロとも近いもんな。それならそれで……コーちゃんとカムイを連れてるんだぞ? なぜもっと早く気付かない……


「ちっ、こんなやつ相手にしてられっかよ……」

「おう、行こうぜ……」

「おお、くそ……よその国ぃ来て貴族ぶってんじゃねぇよ……」


「勝手に行けば?」

「ばいばーい!」

「うちらの話はまだ終わってないんだよ!」


「な、なんだよぉ! 今から連れ込みぃ行くんじゃねぇんかよ!」

「そりゃねぇぜ! どうしたってんだよ?」

「そんなにこいつが気に入らねぇってのか?」


あーなるほど。こいつらはトリプルデートとかじゃあなくて普通に店外連れ出しデートって感じか。で、ランチも済んだもんだから宿に連れ込んでチョメチョメって予定だったのかね。よく見ればいい生地を使った洒落た仕立て服着てるじゃないか。しっかりとした稼ぎがあるってことか、この三人のお姉さんは。


「女には女の意地があるんだよ! いいからすっこんでなぁ!」

「ほらぁ、そこの女。ちょいと顔かしな! テンモカの流儀を教えてあげるから!」

「あれ? もしかしてビビってんの?」


なんだ? スケ番的なムーブなのかこれは?


「ふぅん? 私に何を教えてくれるのかしら? 興味深いわね。いいわよ? どこに連れてってくれるのかしら?」


「ほう、いい度胸してんじゃん?」

「じゃあ行こっか。しっかり教えてやろうかねぇ?」

「あの店がいいねぇ。行こうか?」


おいおいアレク……


「じゃあカース、ちょっと行ってくるわね。」


んもぅ! 仕方ないなぁ……コーちゃん。


「ピュイピュイ」


アレクを頼んだぜ。カムイは肉を食わせに連れてってやらないといけないからね。


「じゃあそこら辺をうろうろしてるね。気をつけてね。」


「ええ。じゃあ後でね。」


そしてアレクは三人の女とそこらの店に入っていった。ん? なぜ店?


「くっそ……せっかく連れ出したってのによぉ……」

「このままじゃおさまんねぇなあ……」

美糸楼びいとろう行こうぜ! めちゃくちゃやってやろうぜ!」


野郎どもも行ってしまった。私も行こう。カムイと肉を食べようかな。


「ガウガウ」


ん? あっちからいい匂いがする?

よし、行ってみるか。

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