1402話 テンモカの散策

客室係に案内されて小男こと、ヒョージは入ってきた。


「ひゃはっ、おはようごせぇやす。昨夜はお楽しみでやしたか?」


「ああ、そんなことはどうでもいいんだよ。それじゃあこいつからしっかり話を聞いて動けよ? もっとも昨日の段階である程度のアタリはついてんだろ?」


「へへっへぇ。もちろんでさあ。おうボウズ。詳しく聞かせてもらおうかぁ」


「そっちはそっちで好きにやれ。じゃあアレク行こうか。」


面倒な話など聞く気はないからな。私達は観光に行くのだ。


「ピュイピュイ」

「ガウガウ」


コーちゃんとカムイも来るかい。よーし四人でお出かけだ。


「じゃあシム、しっかりやりなさい。」


「はい!」




さてと。まずは何の目的もなく街を散策といこうではないか。ヤチロより広く、オワダより遊ぶところがたくさんありそうだもんな。とりあえずメインストリート的な大通りを歩いてみようかな。うーん、活気があるねぇ。

服屋に飯屋に酒場にアクセサリー屋か。甘味屋なんてのもあるんだな。そんな並びに武器屋と防具屋って……変な街だわー。

おっ、ギルドも発見。行かないけど。宿屋に靴屋に仕立て屋か。色々あるねぇ。


あっ! 閃いた! 浴衣を作ろう! きっとアレクによく似合うに違いない!


「アレク、あそこに行ってみようよ。」


「あれは……仕立て屋かしら? いいわよ。カースも道楽者ねぇ。」


ふふふ……




ほほう。『仕立て屋ブルタ』か。


「らっしゃーい。」


クタナツのファトナトゥールといい仕立て屋はやる気がないのがあるあるなのか?


「仕立てを頼むよ。ユカタってやつを二着。」


「はいよー。そんじゃ寸法ちょうだいしますぜー。」


やる気のなさそうなおっさんだが、手際はいいな。


「こちらのお嬢さんも計っちまっていいんかー?」


「仕方ないな。手早くな?」


見知らぬおっさんがアレクの肉体に触る……当然胸周りや腰周り、そして尻周りだって……直接手で触れるわけではないが、メジャーらしきものがアレクの胸に沿って……


「おーおー、素晴らしいスタイルしてんねー。おし、そんじゃあ素材は何か希望はあるかーい?」


ふふふ。アレクはボボンキュッボーンだからな。


「値段は気にしないから一番肌触りがいいやつで頼む。温度調節やサイズ自動調整は付けられるか?」


「あー、そりゃあできるけどー。百万ナラー超えるぜー? あと、肌触りがいいっつーたら 天鵞絨てんがじゅうだなー。一着で三百万超えるぜー? いいのかー?」


てんがじゅう? 初耳だな。でも面白そうだから構わんだろう。


「それで頼むわ。金は前払いか?」


「お、おお。いや、仮縫いの時でいい……十日ほど時間をもらうがいいかー?」


あー、そうだよな。仕立てってのは時間がかかるもんだよな。むしろ十日なら早いもんだな。


「構わんよ。なら十日後に来る。俺はカース・マーティン。沈まぬ夕日亭に泊まってるから何かあったらそこまで頼む。」


「かぁーお大尽様かぁー。俺はユウ・ブルタなー。若いのにやるねぇー。とびっきりのいい女まで連れてよぉー。よっし! そんならばっちり作ってやるからなー。楽しみにしといてくれよなー。」


どんな浴衣ができるのか楽しみだな。さすがに羽織袴なんて注文する気はないが、浴衣ぐらいいいだろう。あぁでもアレクの着物姿も見てみたいなぁ……まあいいか。他の大きい街に行った時でも構わんだろう。

それに柄やデザインについては特に注文しなかったし、どんなのが出来上がるか余計に楽しみなんだよな。防御力はスカスカだろうけど、たまにはそんな道楽をしたっていいよな。あ、下駄もありか……


「お待たせ。どんなのができるか楽しみだね。」


「ユカタってヒイズル独自の服よね。宿にも置いてあったわね。」


「そうなんだよ。それでいいやつが欲しくなってさ。きっとアレクに似合うからさ。」


「ふふ、楽しみね。」


よし、さあ次はどこに行こうかな。アクセサリー屋、宝石屋は特に用はないな。アレクにはすでに最高の首飾りがあるし、まだ加工をしていない宝石だってたくさんある。仕立て屋で結構時間を使ったことだし、ここは休憩かな。茶店か甘味屋か……


よし、ここはアレクに合わせて甘味屋だな。


「あそこで少し休んでいこうよ。」


「いいわよ。」


「ピュイピュイ」

「ガウガウ」


コーちゃんは美味しそうと言い、カムイは食うものがなさそうだと言っている。そりゃあ甘味屋に肉は置いてないだろうさ……


さあて、どんな甘味があるのかなー。ローランドだと甘い物って高いけど、ここではどうなんだろ。

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