1388話 ゲームの達人
ついに九連敗になってしまった。金額的には少しも痛くないが、私が負ける度に周囲が盛り上がっていくのが……なんだかなぁ……
「ほれ、次いくぜ。出しな、札をよ?」
「お、おお。」
あっと、いかんいかん。いきなり六をだすなんてもったいない。最初なんだから様子見の二で上等だろ。
「おい、一度置いた札ぁ変えるのは違反だぜ?」
「聞いてないぞ。次からでいいだろ。ほれ、さっさと裏返せよ。」
私はもちろん二だ。
「ちっ……」
おっ、グンチクは一か。これは気持ちのいい勝利だな。
幸先が良かったせいか、十回目にしてようやく私が勝った。うーん気分がいいね。よし、気分がいいから勝ち逃げしよう。収支はマイナスだけど。だから……
「二人ずつだと見てる奴らが退屈だろ? ルールを変えてやってみないか?」
「ほう? 一回勝ったぐらいで調子いいじゃねえか。どう変えるんだ?」
「まず参加者を四人にする。札は一から十三まで。ただし『一の札』が勝てるのは『十三の札』のみ。四人が同時に札を出して一番大きい奴の総取り。もちろん一度使った札は使えない。」
「例えば四人が、六・六・五・四なんて出したらどうするんだ?」
おお、頭の回転が早いじゃないか。
「六の札を出した二人に四と半ほど入ることになる。札は俺が半分に切ってやるよ。なぜなら使う札はこれだからよ?」
『鉄塊』
『点火』
『金操』
厚さ一ミリの鉄札だ。目の前で作ってやった。これが五十二枚。
「ルールは分かったな? おっと、言い忘れてた。合計十三回勝負をするわけだが、賭け金を手にするのは一位のやつだけな。各自が札の数字を合計して一位との差、かける千ナラーでどうよ?」
「すまん、よく分からんぞ……一回賭け金なしでやってみてもいいか?」
「おう。まずはやってからだよな。きっと燃えると思うぜ? あ、ちなみに、一・十三・五・五なんて出た場合は一を出した奴は十三と一を取れるが十三を出した奴は残った五・五を取れるからな。」
うーん我ながら面倒なルールにしてしまったな。そもそもこのゲームって一対一向きだもんな。
「あ! じゃあ俺も!」
「俺もやる!」
よし、四人集まったな。面白いゲームになりそうだ。
こりゃあだめだ……やってる最中は面白いんだけど、終わった後がだめだわ……
「えーっと……俺は十八枚あるけど……これ全部たすってのか……」
グンチクのは百三十七だ。
「俺は十二枚あるぞ!」
だから枚数じゃねーっての! こいつは六十九か。
「へへーん、俺ぁ十六枚あんぜ!」
だから! 足し算しろっての! こいつは百二十か。
そして私が六枚で……三十八……
「そんじゃあ計算するぞ。もし本番だったらお前はグンチクに一万七千ナラー払うことになるな。」
「俺、二位なのに払うんか……」
十七点差だからな。
「それからお前は六万八千ナラーだな。」
「げっ、マジかよ……」
「へへっ悪ぃなぁ!」
実際に払うのは次からだけだね。
そして私が払うのは……
「九万九千ナラーだな。」
「マジでか! これすげぇな! ちぃと計算は難しいけどよ! よっしゃ! そんなら本番やろうぜ!」
たったひと勝負で二十万ナラー近く儲かったんだからな。そりゃあ有頂天にもなるだろうさ。
「くっ! 俺だってやってやるぜ!」
「おおよ! 勝ちゃあいいんだからよぉ!」
「よし。それならやろうか。」
いよいよ本番だ。ふふふ……
「なっ……そんな……」
「マジかよ……」
「嘘だろ……」
私が勝った。三十枚で二百五点。グンチクは十三枚でぴったり百点。他の二人は二枚半で十五点と、六枚半で四十四点。引き分けが一回あったからな。
「グンチクは俺に十万五千ナラーな。そっちのお前は十九万ナラー。お前は十六万千ナラーな。」
「あっ、ああ……払う……」
「なーんてな。今日はお祭りじゃねーか。盛り下がることなんてやめようぜ。金なんかいらねーよ。さあ、飲め飲め。」
「あっ、ああ……す、すまねぇ……」
ただし……
「でもな、イカサマはほどほどにしとけよ。確かに決まりを破ることとは別物だろうけどな。」
ぼそりと釘を刺してやった。
まったく私ったら。九連敗してようやく気付いたんだから。まあイカサマってほどでもないよな。グンチクの野郎、木目を覚えてやがったんだよな。トランプと違って木の札だから一枚一枚木目が違うはずなんだよな。だから一度出した札を引っ込めた時、予定が狂ったんだろうな。
なもんだから金操で鉄札を作った時に同じことをしてやった。誰が何を出すか私にだけ見えるように魔力でマーキングしてやったぜ。魔力探査の応用ってとこか。微弱な魔力を十三段階に分けて鉄札に込めておいたのさ。
だから誰が何を出すか私にはバレバレってわけだ。その上で練習では大負けをして見せたら、まんまと食いついてきたね。まあグンチクは嫌いじゃないからね。軽くお灸をすえる程度でいいだろう。思い通りに勝ててすっきりしたし。
「あ、ああ……気付いてたのか……」
そもそも金儲けのためのイカサマじゃないよな。賭け金が低かったし。仲間の前でカッコつけたかったってとこか?
「そりゃあな。でもまあ面白かったしな。ほれ、飲め飲め。」
「お、おお! 飲むぜ!」
まったく。面倒見がいいかと思えば変なところで色気出すんだから。さあ、そんなことは気にせず飲もう。まだ昼にもなってないんだから。
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