1371話 準備完了
それからイグサに成長促進をかけて、全て植えた。後は成長を待って収穫するだけだ。残り魔力は一割どころか五分を切ってしまったな……ちょっとダルい……
「あの……魔王様、後はどうすればいいのでしょう?」
看板娘も心配だよな。
「本来なら途中であれこれ手入れが必要だとは思うが、放置でいい。がっちり囲んで幻術までかけてあるんだから手の出しようがないだろう。一週間ほど放置でいい。ただ、大変とは思うが今から三日ばかり見張りを厳重に頼む。」
水が気になるから近いうちに見に来るつもりではあるが……
「分かりました! 頑張ります!」
「いや、頑張るのは見張りだけでいい。もし何かが起こっても体を張る必要はない。村人に知らせてあいつらを働かせればいい。」
「わ、分かりました……」
さぁて……これで大体の準備は整った。どうやら今日は長い一日になりそうだな。行き当たりばったりの思い付きから始まったが、どうなることやら。
「アレク、悪いけど夕方まで寝るよ。」
「いいわよ。じゃあ膝枕を……」
「いや、本当は凄く……して欲しいんだけどアレクには別の頼みがあるんだよ。」
「いいわよ。なぁに?」
アレクったら。何も聞かずに了承するんだから。大好き。
「分かったわ。任せておいて。じゃあ夕方までには戻ってくるわ。イロハ! カースを頼んだわよ。」
「は、はい! お任せを!」
カムイはアレクと一緒に。コーちゃんは私と一緒だ。私は狭く汚い納屋へとその身を隠す。寝るならピラミッドシェルターがいいのだが、それを外に出す魔力すら惜しい。夕方までひたすら眠って魔力の回復を図るのみだからな。おっと、魔力ポーションも飲んでおこう。ふぅ……慣れた味だけど不味いものは不味い。寝よ……
「カース……カース。起きて。」
「ふぁあ……アレク? おはよ……よく寝た……ふぁーあ。どうだった?」
「上手くいきそうよ。チラノやフォルノを中心に貧民街に噂を広めてきたわ。」
「よし。ありがとね。じゃあ行こうか。」
よぉーし、思ったより魔力が回復してるな。三割ちょいぐらいある。これなら全く問題なしだ。
「カムイ、ここを頼んだぞ。」
「ガウガウ」
私とアレク、そしてコーちゃんの三人は一路東へ。盗賊ヒチベ達と合流すべく龍の背山へと向かった。
遠き山に日は落ちた。前回あいつらと遭遇した地点に来れたが、どうやってあいつらと合流しようかな。コーちゃん、教えて。
「ピュイピュイ」
たぶんあっち? 私よりよっぽどコーちゃんの方が信用できるからね。行くぜ。でも暗いな。夜だから当たり前か。ならば!
『光源』
昼になーれ。初めからこうすれば迎えが来たような気もする。
歩くこと数分。「ピュイピュイ」
やっぱ来たのね。
「魔王様、お待ちしておりました」
「その声は……番頭のアカダって言ったか?」
「さようでございます。皆のもとへご案内いたします。灯りを消していただけますか?」
「ああ。」
暗いと足元が見えないんだけどな……まあいいや。アレクは私が手を引けばいい。これも心眼の稽古みたいなもんだ。
「お前って殺し屋なのか?」
「元……ですが……」
道中の話題がてら話を振ってみたら本当に殺し屋だった。マジでスパラッシュさん系かよ!
「それがなぜ商人なんかやってんだ?」
「よくある話ですよ……」
ふむふむ。殺しのターゲットがユメヤ商会の会長ヒチベで、夜陰に乗じて狙ったと。手際良く護衛を皆殺しにしたアカダに対してヒチベが言ったセリフが『まあ一杯飲め』だと。調子を狂わされたアカダだが、なぜか言われるがままに酒を飲み、差しつ差されつ。気が付けば辺りは明るくなり酔い潰れた二人。目覚めればヒチベの自宅の寝室に枕を並べて寝ていたと。
すっきりと目が覚めた時、もうとっくにヒチベを殺す気など無くなったアカダ。だが渡世の義理を果たすべくヒチベの自宅を出て、見届け人が待つ地点へ。到着するやいなや見届け人を刺し殺してから何食わぬ顔でヒチベのもとへ戻った。その後は陰日向にユメヤ商会の敵を消しつつヒチベの身を守る日々と。そしてアカダの依頼主は闇ギルド
それにしてもこいつ、口が軽いなぁ……これでよく殺し屋なんてやってられたよなぁ……
どこが渡世の義理だよ……
「ふーん。元殺し屋が番頭か。出世したもんだな。」
よくある話じゃねーよ!
「それでも結局ユメヤ商会を守ることはできませんでしたけどね……」
「クラヤはそんなにユメヤ商会が目障りだったのか?」
依頼主がクラヤ商会ってことまで暴露しやがったし。口軽すぎ。
「いえ……おそらくは領主でしょうね。クラヤと結託してヤチロを仕切るためにはユメヤ商会が邪魔でしかたなかったはずです。古くからヤチロに根ざした商会ですから……」
へー、なるほどね。領主にも色々と思惑があったわけね。やっぱ元凶は領主か……
まあ、長くないだろうけどな。
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