1327話 一番隊のはねっ返り

「カース。起きて。そろそろお昼よ。」


むにゃむにゃ……うーんアレク……


「起きないのね? いいわ。じゃあそのまま……」


服を着ていない私はアレクにされるがまま……





「カース、起きた?」


「おはよ……朝からいい夢見心地だったよ……」


アレクったら……どんどん妖艶になっていくな。もうエロイーズさんを上回ってるね。私限定かも知れないが間違いない。


「じゃあ朝食を用意するわ。待っててね。」


朝食と言うか昼食かな。まだ体は痛いが激痛というほどではない。あれだけきつい身体強化を使ってるんだから体が徐々に強くなっていってもおかしくないか。いいトレーニングだよな。

よし、ストレッチしながら待ってよ。




「ピュイピュイ」


おっ、できたんだね。コーちゃんありがと。


それにしても昨夜の料理は凄かったよな。こんな場所でよくあれだけのことができたもんだ。アレクはすごいなぁ。


シェルターから出ると赤兜の奴らもいた。もう昼なんだろ? 何やってんだ?


「勝負しろやテメェ!」


ん? あぁ、昨日ぶっ飛ばした奴か。


「すまない魔王殿。こいつがどうしても貴殿と勝負をせねば気が済まないと言うものでな。どうか一勝負してやってもらえないだろうか?」


まさかそんな理由でわざわざ待ってたのか? 仲間想いと言えばそれまでだが……

私を叩き起こそうとせず待っていたのは好感度高いけどね。


「勝負ぐらい構わんが……ただし飯の後な。それから何を賭ける?」


せっかくアレクが用意してくれたんだから。暖かいうちに食べるぞ。


「何でも言えや! テメェの欲しいもん賭けてやんよぉ!」


欲しいものねえ? アレクとの平穏で淫靡な時間だな。じゃあわざわざヒイズルまで来るなって話だけど。


「特に欲しいものなんかないが……まあせっかく迷宮内にいることだし、もしこの先またどこかでカチ合った時の優先権でも貰っておこうか。つまり、お前じゃなくて一番隊の隊長。アンタに約束してもらおうか。いいよな?」


「ふむ。例えばボス部屋前に同時に着いた時は魔王殿に先を譲るということだな?」


「そう。宝箱でも同様な。それに同時じゃない場合は特に気にすることもないだろ?」


「いいだろっうっおぉっ……契約魔法か……ナミクサから聞いてはいたが……」


「勝負のルールは任せる。とりあえず食べ終わるまで待ってな。ごめんよアレク、待たせてしまったね。」


「いいのよ。食べましょ。」


「ピュイピュイ」

「ガウガウ」


おぉ、コーちゃんにカムイも待っててくれたの? 寝坊して悪かったね。




はぁーおいしかった。アレクの味噌汁が着実に上達している。ただ濃いだけの味ではなく、他の具材とのバランスも考えた深い味へと。


「ご馳走様。美味しかったよ。アレクはすごいね!」


「どういたしまして。カースのためなら当然よ。」


ふふ、嬉しいなぁ。さーて食後は運動か。どんなルールでやる気なのかな?


「やっと食い終わりやがったかぁ! そんじゃやっぞ! ルールは魔力以外なんでもありだぁ! 文句ぁねーよな?」


「いいぞ。で、お前はそのルールにした上にムラサキメタリックの鎧を着る気か?」


「はっ、舐めんじゃねぇぞ? そしたら俺の勝ちが決まっちまうだろぉが! 鎧なしでやってやんよ! テメェは好きに防御を固めていーぜぇ?」


あらあら。ムキになっちゃって。せっかく勝てるチャンスをくれてやったのに。


「いや、このままでいい。それじゃあやろうか。サザール、合図を頼むわ。」


この際だから呼び方を改めてやった。せっかく隊長って呼び方に慣れてたのに。この場には隊長が二人いるもんなぁ。


「分かった。双方構え!」


ほう、こいつ真剣を使う気かよ。でもムラサキメタリックじゃないな。普通のロングソードか。舐めてんのはどっちだって話だな。私は不動でいくけどね。


「始め!」


「おらぁ死ねやぁ!」


上段からの大振り。つくづくバカな奴だな。丁寧にやればいくらでも勝ち目があったものを。


奴が振り下ろすロングソードに合わせて不動を振ると……「うぐぅぉっ」

弾き飛ばされるロングソード。折れないだけマシなのかな。私は勢いそのままに不動を振り下ろす。狙いは奴の肩。おっ、避けた。切り替えが早いな。


「テメェ……その棍は何だよ……」


「さあな。何でもいいだろ?」


神木イグドラシルです。たぶん私の籠手、エルダーエボニーエントより頑丈だろうな。最強です。


「ちっ、こいつでエグってやんよぉ……」


ナイフか。それにしてもこいつ、言葉遣いが騎士じゃないよな。そこらのチンピラじゃん。よく一番隊なんてところに所属してるもんだ。


「おらぁっ!」


エグるとか言ってたくせにナイフを投げやがった。私の心臓を狙って。


「もらったぁぁー!」


「そうでもない。」


「なっ!?」


おーわり。残念、目論見が外れたねえ。


「さすが魔王だな。あのナイフを避けもしないとは。いい服だとは思っていたが、あいつのナイフを弾くほどとはな……」


「いい勝負を見せてもらった。カグロスの奴、ナイフで隙を作って接近戦に持ち込むつもりだったようだが、あてが外れたな。隙を作るつもりが自分が隙を晒すはめになるとは。見事だ。」


ナイフがムラサキメタリック製なら防ぐか避けるぐらいしただろうけどね。普通のナイフじゃあね。あいつにしても顔を狙えばよかったのものを……的の大きい胴体を狙ったんだろうな。ナイフを投げ終わって隙だらけの格好で突っ込んでくるから普通に腹をぶっ叩いてやった。いくら腕が立っても相手を舐めてかかっちゃあ勝てないぜ?


「じゃあ先に行くからな。サザールはどうするんだ?」


「もちろん魔王について行く……問題あるか?」


「いや、ない。好きにすればいいさ。それじゃあアレク、行こうか。」


「ええ。」


さーて、ここのボスはどんな奴かなー。

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