1294話 迷宮の秘密
うーむ。深い赤。いや紅とでも言うべきか。 思わず魅入ってしまう原石だな。
「この紅玉石はこの
アレクが私を見て首を縦に振った。アレクから見てそうなのなら間違いないだろう。
「いいだろう。そいつと引き換えにポーションを三本くれてやる。」
しかし、私が近付こうとすると……
「待て! 近寄るな! そっちに置け! こっちもそこに置く!」
赤兜のくせにえらく用心深いな。彼我の距離がだいたい十二、三メイル。その中間地点を指定しやがった。
こいつらを殺すだけなら今すぐ可能なんだが、私としては『解呪』をしたいんだよ。そのためにはせめて二メイル圏内には近付きたい。あぁ面倒くさい……もういいや。
『徹甲弾』
「なっ!? きさっ!?」
吹っ飛ぶ三人。私の徹甲弾を受けて鎧がへこむ程度で済むのは気に入らないが、その場で踏ん張ることはさすがに不可能だよな。おっと紅玉石ゲット。これでアレクに似合うイヤリングでも作ろうかな。それとも髪飾りがいいかな。迷うなあ……
「こ、この薄汚い……冒険者め……」
おっ、一人は意識があるのか。でも抵抗するほど元気はないだろ。遠慮なく近付いて『解呪』っと。そのまま他の奴らにも。
うーん、こいつらにかけられた洗脳魔法って結構強力なんじゃないかな? 今までの赤兜より魔力の消費が多かったんだよな。
「ほれ、約束のポーションだ。サービスで六本やるよ。まあ飲め。」
「くっ……」
ふーむ。こいつは今までの奴らとは違うな。解呪されたばかりだというのに意識がはっきりしてやがる。他の奴らは呆然としたままだけど。
「それで……どういうつもりだ? 我らを殺したいのか助けたいのか、どっちだ?」
「助けたいに決まってるだろ。分かってるんだぞ? お前ら赤兜は天王に洗脳魔法をかけられてここで働かされてるんだよな。お前達のような立派な騎士にそんな酷い真似をするなんて許せなくてな。」
半分ぐらい嘘だけど。
「そうか……知っているのか。だが、俺たちを正気に戻したところで無駄だ。一体どれだけの騎士が洗脳されていると思うんだ? 少なく見積もってもカゲキョーだけで二百、タイショーでは四百。そして天都やシューホーなら千人ずつはいるだろう……」
へー、結構いるんだなぁ。しかもこいつ自覚あったのか?
「ちなみに、ここの赤兜はほとんどが正気に戻ってるぞ。ここから先でも出会えば正気に戻してやるし。ここより深い所には何人ぐらい潜ってんだ?」
「知る限りで四組、二十四人だ……」
おー、意外といるねぇ。
「ところでお前ら一体どうしてそんな大怪我してんだ? ポーションも飲み尽くしたんだよな?」
「変異種だ。滅多に出会わないんだが、運悪く遭遇してしまったのさ。真っ赤なオーガ、ブラッディオーガだった。」
ふむ、詳しく話を聞いてみると、この階のボス部屋前で遭遇し、そのまま戦った。しかしブラッディオーガは皮膚が頑丈な上に動きがかなり素早かった。装備をムラサキメタリックに換装する間もなく三人が瀕死に追いやられた。どうにか魔法で牽制したり目眩しをしたりしながらここまで退却してきたと。
「奴があそこにいる限り、この階の突破は難しい。ちょうどいい頃合いだから外に出たくはあったが三十階には行けそうにない。だから二十階まで戻るしかないのさ。」
ん? どういうことだ?
「なぜ外に出るのに三十階まで行くんだ?」
「外に出るために決まってる。」
さっぱり分からん。
「詳しく話してみな。」
「……まさか……初めて潜ってここまで来たのか……?」
「オワダから南に下ったからな。このカゲキョーが初めての
そんなことはいいからさっさと教えろってんだ。
「十階を踏破するごとに帰りは転移が使えるようになる。その場所も十階ごとにある……」
「ん? よく分からんな。」
これまた詳しく聞いてみると、十の倍数階のボス部屋から下に降りた所に転移可能な地点があるらしい。知らなければ見ても分からないらしいが、それと知っているなら行けば分かると。そう感じるらしい。ならば帰りはすぐなのか。うーん親切な迷宮なんだな。帰りが楽ってのはいいね。
「よく分かった。何なら三十階まで付いて来てもいいが、どうする?」
「いいのか? だが……あのオーガに勝てると言うのか?」
「さあな。やってみれば分かるだろ。それよりお前ら腹は減ってないのか? 晩飯にしようぜ。」
毎度お馴染みミスリルバーベキューを始めよう。いい情報を話してくれたからな。これぐらいサービスしてやるさ。装備や有り金を奪うのも勘弁してやろう。
「なっ!? これは……」
「ガンガン焼くから好きに食べな。」
とりあえずここで手に入れたオーク肉から焼こう。
「ガウガウ」
「ピュイピュイ」
真っ先に食べ始めたのはもちろんこの二人。いい食べっぷりだね。赤兜の奴らも夢中で食べてやがる。やはりミスリル板で焼くと美味しいよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます