第1289話 宝箱
ふぁーあ、よく寝た。ここは地下十三階だったよな。さて、今日から新しい気持ちでがんばろう。なぜか初日の出が見たくなってきたぞ。
「ガウガウ」
ごめんって! 昨日は悪かったよ! 今から洗うから許してくれよ。
疲れてたんだよ……ついカムイを洗わずに寝てしまったんだよな。悪かったって。
「ガウガウ」
まあ、待てって。今すぐ洗ってやるからさ。マギトレント湯船どーん!
よし、洗うとするかね。ほーれ、わしゃわしゃぁーーーーー!
「ガウガウー!」
ふふふ、ご機嫌だろ? やはりお前は私に洗ってもらうのが一番好きなんだろう? ふふふ。体は正直だぜ。
ふう……あー朝から疲れた。よし朝飯にしようかな。
よし、今日も頑張るぞ。昨日は情けないところを見せてしまったからな。またアレクに泣き虫カースと言われてしまうぜ。
さてここの魔物は蜂。全長わずか十センチ程度。ただの虫と考えると大きいが魔物と考えるとえらく小さいんだよな。
くっ、棍で相手をするにはかなり大変だ。当たれば一撃だが、私程度の腕ではなかなかそうもいかない。これはいい稽古になるな。本来なら毒を警戒しなければならないのだが、どうせ私には効かない。刺されるのは痛いが首から上しか刺されることはない。稽古だと割り切って魔法なしでやってやるぜ!
ちっ、さすがに蜂の魔物は素早いな。ぐおっ、危なっ! 危うく目を刺されるところだったぞ! さすがに手強いな……
ふぅ、どうにか全部仕留めたぞ。くそ、首の右側を一ヶ所刺されたか。めっちゃ痛かった。やっぱ自動防御なしってのは迷宮を舐めすぎだったか。まあいい、せめてこの階ぐらいはこのまま行こう。
「カース、大丈夫?」
「うん、問題ないよ。ちくっとしただけ。」
飛び回る蜂を棍で突くのはかなり難しい。と言うか今のところ無理だった。一度も当たってない。普通に叩き落とすことしかできてない。これはいい課題だな。ここの階の蜂を突きで仕留めることができるようになれば、私の棍術は一段階上に上がれるな。こうやってテーマを持って戦うことも大事だよな。やはり今日は新しいことに挑戦する日な気がする。きっとそうだ。
そうやって歩き続け戦い続けること二時間。この階はカムイの案内なし、私が適当にルートを選んでいる。
それは何の気なしに左に曲がった時だった。見たところこの先は行き止まり。よくあることだ。だが、その先に何かが見える。
「アレク、あの先に何があるか見てくれない?」
「いいわよ。」『遠見』
とりあえずボスまでは魔法を使わないつもりなのだ。
「何か木の箱があるわよ。赤兜が言ってた宝箱とやらかしら?」
「あー、ほとんど外れって話だったね。まあせっかくだから開けに行ってみようよ。」
どんな外れなのかも興味あるしね。赤兜の話では二十階より下では致命的な罠もあるとは聞いてるが。
「いいわよ。それも経験よね。」
「じゃあちょっと行ってくるね、待ってて。」
小走りで行ってこよう。
ふう、着いた。なるほど。宝箱とは言うものの、確かに木の箱だ。一辺が七十センチ程度の立方体か。上が開くようになっているのね。では突きをしてみる。うん、穴が空くね。次は叩いてみよう。うん、壊れるね。バラバラにぶっ壊してみよう。中身が見えるまで。さーて何が出てくるかな。
あらら? ぶっ壊した箱が見る見る元に戻っていく……なんだこれ!? 意味が分からん……
結局元通りかよ……仕方ない。それなら次は普通に開けてみようかな。パカっ。
うおっ危なっ! なぜか上から石が落ちてきた。当たっても死ぬほどの大きさではないが怪我ぐらいするわな。ちなみに箱の中からはこの階にいるのと同じタイプの蜂が出てきた。それだけだ。やはり外れか……
うーん、宝箱が外れなのはいいんだが……これはだめだな。なんだか力が抜ける。がっくり来ると言ってもいい。当たったら大きいとは聞いたがいちいちこうやって行き止まりまでやって来てこれだからな。やれやれだ……
「ただいま。外れだったよ。」
「おかえりなさい。まあそんなものよね。じゃあ先に進みましょうよ。」
「うん、そうするよ。待たせちゃったしね。」
よし、ボス部屋を目指そう。遅れた分さくさく進むとしよう。今日はガンガンやるのだ。
それからはきびきびと進んだ。棍の扱いが少しは分かってきた気がするな。ボス部屋に着くまでに三匹ほど突きで仕留めることができた。この勢いでボスもやってやるぜ!
ボスは例によって体長五メイルの巨大蜂。ここまでの雑魚との差が激しいな……でも『狙撃』終わった。さすがにあんな魔物と肉弾戦なんて無理だもんな。よし、昼飯にしよう。いやー疲れた疲れた。
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