第1278話 地下一階のボス
二時間ちょっとの休憩を終えた私達は再び行動を開始した。地図もなしに進んでいるから『階段』とやらに近づいているのかどうか全然分からないんだよな。
「ガウガウ」
ん? そっちに少しは強そうな奴がいるって? ボスかな。カムイがやってみるか?
「ガウガウ」
よし、任せる。行ってみようか。
おお……扉だ。通路を塞ぐかのように大きな扉が。ここがボスの部屋ってわけね。よし入ろう。
私達が入ると、扉が自然に閉まった。押しても引いても開かない。なるほど、ボスを倒すまで出られないってことね。それにしても広い部屋だな。縦横高さ、全てが五十メイルぐらいありそうだ。私の魔力庫とだいたい同じサイズか。
「ガウガウ」
おっ、出てきた! 少し大きいか。身の丈五メイル程度の……コボルトかな?
「ガウガウ」
あーあ、可哀想に。せっかく現れたと思ったらもうカムイに首を裂かれてる。おっ、少しだけ大きな魔石か。一応拾っておくか。そして来た方と反対側の扉が開いている。どれ、見て来よう。
おお、階段だ。ここから地下二階に下りるってことだな。だが……
「アレク、ここに泊まろうか。これだけ広いからのんびりお風呂にも入れそうだしね。」
「いいわよ。こんなところでお風呂に入るのって楽しそうだわ。」
「ガウガウ」
分かってるって。まずは洗ってやるって。
ふう。手洗いは疲れるんだよな。
「アレク、少し飲まない?」
「いいわね。お風呂に浸かりながらのお酒っていいわよね。」
「ピュイピュイ!」
おっと、コーちゃんも飲みたいよね。 よし、今日はディノ・スペチアーレをロックでやろうか。残り少ないけど、まあいいよね。
「カース、これって……」
「うん。ディノ・スペチアーレの十二年物だよ。たまにはいいよね。」
「ピュイピュイ!」
はぁ……いい湯だね。あははん。酒は美味しいしアレクは可愛いし。
「ピュイ!」
おっと、コーちゃんもかわいいよ。
「ガウガウ」
え? またボスが現れる? よし、カムイ任せた。
「ガウー」
うーん、どうやらこの部屋に滞在しているだけでボスが現れるみたいだな。だいたい一時間ごとか。ここで寝ようと思ったけど……まあいいか。カムイに任せよう。とりあえず私達は酒宴だな。あー美味しい。
ふぁーあ。よく寝た。朝かな。昨日は風呂で酒飲んでからシェルターでアレクとイチャイチャして。さーてカムイは頑張ってるかな。外に出てみよう。
「おーカムイおはよ。」
「ガウガウ」
ほうほう。退屈で仕方なかったと。悪かったな。ありがとよ。
よし、朝飯にするか。ほう、魔石が七個ほど落ちてるな。
よし、朝食も終わったし次の階層に降りてみようかな。
「二階に降りても景色は変わらないのね。」
「そうだね。一階と何も変わらないみたいだね。」
これはかなりダルいぞ……
一階も結構広かったのに。まいっか。
結局二階も現れる魔物は大して変わりがない。強いて言うならコボルトだけでなくゴブリンまで現れやがるぐらいか。
もういいかな。
「よし、アレク。だいたい分かったし帰ろうか。」
「もう帰るの?」
「うん。様子見は終わりにしよう。一度帰って食料をどっさり買って、それから本格的に潜ろうと思ってさ。」
食料はどっさりあるけど野菜と酒が少し足りないんだよね。どうせこの街はめちゃくちゃになることだし、今のうちに買い占めておいてやる。
しかし、帰り道。不思議なことが起こった。階段を登ったら……てっきりボス部屋に出るかと思ったら……
なぜか! ボス部屋の扉前に出ていた?
意味が分からない。試しに扉に入ってみれば普通にボスコボルトがいた。どうなってんだこれ?
帰り道はボス部屋をスルーできるってことか?
意味が分からん……ここの神はマジで何を考えてるんだ……
まあいいや……帰り道を歩くのはもうダルいから飛ぼう。鉄ボードにみんなで乗ってと。
「アレク、かなり飛ばすよ。指示を早めにお願い。」
「分かったわ。でもカースの速度を考えると追いつくとは思えないけど。でもまあ別に帰り道を間違えても構うこともないわよね。」
「そうそう。気楽に行こうよ。よし、じゃあ行くよ?」
うひょー! めちゃくちゃスリリングじゃん! 普段空を飛ぶのと違って周りが狭いからスピード感がもの凄い! これは病みつきになりそうだ。うっかりしてると大事故になりそうだけど……
「カース、右!」
「オッケー!」
「あの次を左!」
これはきつい……全ての曲がり道が直角なので恐ろしくGがかかる……でもおもしろい!
途中で何匹も魔物が発生しているが、その頃にはもう通り過ぎている。せっかく現れたのに悪いね。でも前に現れてたら轢き逃げアタックを食らうことになるんだから、それよりはマシだろ?
さて、出口はまだかなー。
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