第1277話 天王の魔力
さて、あらかたの情報は聞き終えたことだし、もうこいつらに用は……あるんだよなぁ。
なんと全員が全員何らかの契約魔法をかけられていた。一体誰に? こいつらにも分からないらしい。いつの間にやらかけられていたのだろう。赤兜に共通することは『御目見』
単純に考えれば犯人は天王だろうな。だが、そうすると恐ろしい事実が浮かび上がってくる……
この街の赤兜は総勢二百人。それだけもの人間にここまで強力な契約魔法をかけ、なおかつ維持し続けていることを考えると……天王って私より魔力が高いんじゃないのか? しかもただの契約魔法とは思えないし。
例えば私の契約魔法だと『魔王カースに憧れている演技をしろ』なら可能だが『魔王カースを崇拝しろ』は無理だ。もちろん表面上崇拝しているように見えるだろうが本心から崇拝させることなどできるはずがない。
だがこいつらの場合、どうも本心から天王に忠誠を誓ってたっぽいんだよな。どんだけ強力な契約魔法を使えばそんなことができるってんだ?
「というわけでアレクはどう思う?」
「そうね……やっぱり天王がカース以上の魔力を持ってる可能性……はあり得ないとして……もしかしたら洗脳魔法かしら……?」
「洗脳魔法? 名前ぐらいは知ってるけど……」
詳しくは知らないがそれならば可能なのか……
「ローランドでも使える人間は少ないから私も名前ぐらいしか知らないの。こんな時お義母様なら何でもご存知なんでしょうね。」
「あー、確かに。母上なら普通に使えそうだしね。よし、それならこの話はここまでにしようか。天王は洗脳魔法を使えるってことにして注意しようね!」
手紙を届けるって用もあるけど、別に本人に会う必要もないだろう。そもそも会えるかどうかも分からないしね。
「そうね。どうやったら相手を洗脳できるかなんて分からないけど、カースの『解呪』が効くことは分かったし注意しておけば大丈夫ね。」
「そうだね。さあ、じゃあ探索を続けようか。でもその前に……」
赤兜どもに契約魔法をかけておこう。内容は自由に生きること。たったこれだけだ。私に絶対服従でもよかったのだが、この先何人にもかけるだろうからな。とてもそんな面倒なことはやってられない。簡単な契約で最大の効果を出すことが大事なのだ。こうやって出会うに任せて赤兜どもを片っ端から仕事をしない、役立たずに変えてやるぜ。街の治安もめちゃくちゃになるだろうね。ふふ。
「ピュイピュイ」
おやコーちゃん、お腹すいたの? じゃあそろそろ休憩しようね。もうすぐ夕方だろうしね。どこか近くに安全地帯はないかなー。
結局、一時間ほど歩いて安全地帯らしきところを発見した。ここなら魔物が現れないと聞いたが……
「さあコーちゃん待たせたね。どんどん焼くからいっぱい食べてね!」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
カムイは食後に洗えときたもんだ。出てからにしろよな。まったくもう。
あー美味しかった。カムイも満足そうだ。
「アレク、体力はどう? まだ歩ける?」
「ええ、問題ないわよ。今夜は迷宮内に泊まるのね?」
「そうだね。もう少し歩いて疲れを感じたら寝るとしようか。それで、起きたら適当に探索をして明日の夕方までには外に出るぐらいのペースでどうかな?」
「いいわよ。こんな所で夜を越すのって初めてだわ。少しワクワクしてるの。」
「イグドラシルの時は全然眠れなかったし、あそこは厳しい環境だったもんね。今のところだけど、ここは楽でいいね。」
「あれから随分と経った気がするけど、木から降りてまだ半年って不思議な気分よ。でも、ずっとカースといられて幸せよ?」
「僕もだよ。この先もずっと一緒だね。」
「ずっと一緒……ねぇカース……私、もう……」
「分かってる。僕もだよ。」
ピラミッドシェルターどーん。コーちゃんにはお酒、カムイには肉の追加。少し待っててね。
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
快く待っててくれるコーちゃんに対してカムイは手洗いを要求している。仕方ないやつめ。後でな。
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