第1264話 奴隷少女コリカ
ふぁあーぁあ……もう朝か……眠いなぁ……まだ寝てよ……昨夜はかなり燃えたもんなぁ……
むにゃむにゃ……
「ガウガウ」
えー? 肉肉しいものが食べたいって……朝から? 肉肉しいってそれ肉しかないじゃん。
勘弁してくれよ……眠いのに……
「ガウガウ」
ローランドの肉が懐かしいって? カムイって意外と繊細なんだな……
あーもー、ちょっと待ってろ……起きるから。
『消音』
アレクを起こさないように注意しないとな。コーちゃんだってぴゅいーぴゅいー言いながら寝てるし。
村長宅の裏庭。魔力庫内にたっぷり入ってる肉と言えば……ルフロックだな。カムイが自分で仕留めた大物だもんな。よし、たっぷり焼いてやるよ。 味付けはない方がいいんだったな。
『浮身』
『火球』
『水壁』
少し浮かせた肉の塊を水の壁で閉じ込めてから加熱する。ある意味スチコン、スチームコンベクションオーブン的な料理法ではないだろうか。
水壁の内部で火を燃やせばたちまち真空となる。それでも私の火は消えない。たぶん宇宙空間でも燃え続けるんじゃないかな。
「ガウガウ」
水壁できっちり覆ってるってのにカムイの鼻は食べ頃を逃さないのか。凄い奴だな。
『水壁解除』
おおー!
良い匂い!
これはすごい!
焦げた匂いとは違う芳醇な肉の香りが漂うではないか!
「ガウガウ」
いい焼き加減だって? 生でも食うくせに。ほら、食べていいぞ。このまま浮かせておいてやるから。
「ガウガウ」
カムイの体より大きな肉の塊だが、どうせすぐなくなるんだろうな。カムイは、いやコーちゃんも大食いなんだから。
「ガウガウ」
旨いか。そりゃよかった。どれ、私も少し食べてみようかな……ん? 視線を感じる……
あれは……
「おーい、おはよ。早起きなんだな。偉いな。」
「お、おはようございましゅ! な、何をされてるんでしゅか!?」
方言きついな。
「ああ、この狼ちゃんがローランドの肉を食べたいと言うもんでな。焼いてたんだよ。」
厳密に言えばローランドの肉ってより魔境の肉だよな。このルフロックはノワールフォレストの森に住んでたんだろうし。おや、この子の腹が鳴ってるではないか。私も食べようと思ってたことだしちょうどいい。
「食べてみるか? 味は付けてないけど。」
「え、ええ!? いいんでしゅか!? い、いただきましゅう!」
「待て待て、これを使うといい。」
「はいっ! ありがとうございましゅっ!」
ミスリル製のナイフとフォーク。よく切れてよく刺さるんだぜ? 材質的に魔力庫から出すべきではないのだが、まあ勘弁してもらおう。ん、誰に?
ふふ、私も食ーべよっと。
「おいしーい! みずみずしくてじゅわっと広がりましゅう!」
本当だ。味付けしてないから少々物足りないが、旨いことに変わりない。朝の胃袋にはちょうどいいかも。さすがにトビクラーやコカトリスほどの旨みは感じないが、それなりにヒットってとこだな。スチコン風に蒸し焼きにした私の功績かな。
「あっ、あの! ご、ご馳走様でした! おいしかったでしゅ!」
「もういいの? 足りた?」
「は、はいっ! お腹いっぱいでしゅ! あのっ、昨夜いただいたこれでしゅけど! こ、ここに穴を開けても……いいでしゅか……?」
おや、ペンダントにでもするのかな?
「いいよ。と言うか今開けてやるよ。貸してごらん。」
『金操』
ふふ、我ながら何という精密制御だ。五百円玉程度のコインの上の方に直径三ミリの真円を穿ってやった。
「このぐらいの大きさでどう?」
「あっ、ありがとうございましゅ! 宝物にしましゅう!」
ここまで喜ばれると嬉しくなるな。そうだ、さらにサービスしてやろう。
「君、名前は? これに名前を刻んでやるよ。」
「えっ!? あ、名前……コリカでしゅ!」
「よし、ちょっと待ってな。」
ローランド文字でも別に問題なかろう。コ……リ……カっと……
「ほい、お待たせ。」
「あ、すごいでしゅ……ありがとうございましゅ!」
うん。よかったよかった。
「ところで君は村長の孫かい?」
「い、いえ、私は村長様の奴隷でしゅ。お母しゃんもそうでしゅ……」
「そうだったか……まだ小さいのに。挫けず生きていくんだよ。」
見たところ十歳にもなってない。この子の母親も奴隷だそうだが、村長は奴隷に手をつけて子供を産ませたのか。同意なしに奴隷に手をつけるのはローランド王国では違法だがヒイズルではどうなんだ?
ついでに言うと両親とも奴隷でない限り生まれながらの奴隷とはならないものだが、よその国の法は分からんな。
「はいっ! ありがとうござ「こんな所で何やってんだい! 油ぁ売ってないでさっさと水汲み終わらせな!」
今度はヒスおばさんかよ。色んな人間がいるもんだなぁ……
それにしても油を売る……気になるな。ヒイズルで流通してるのは何の油なんだろう?
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