第1263話 徴税官ハーゲン・ヘアーナイ
乱入してきたハゲは室内をジロジロと見回している。いやに欲深そうな目つきしてやがるな。
「さぁーてと……まずは酒だ! それから食事、最後に女だ! 分かっとるだろうな?」
「は、はい! そ、それはもう! すぐにご用意いたしますので!」
つかつかと中に入り上座にどすんと座った。なーんか気分悪いな。
「アレク、出ようか。」
「そうね。せっかくの料理が台無しね。」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
コーちゃんはまだ飲みたいと言い、カムイはまだ食べたいと言う。もー、仕方ないなぁ。
「やっぱりもう少し居ようか。コーちゃんもカムイもまだ飲み食いしたいんだって。」
「あら、それなら仕方な「そこの女! 酌をせい!」
あ? あのハゲ誰に向かって言ってんだ?
「聴こえんのか! そこの金髪女だ! このハーゲン・ヘアーナイ様が酌をさせてやると言うのだ! 栄誉に与るがいい!」
この野郎……アレクに向かって……よし、殺そう。
「はい。かしこまりました。精一杯おもてなしさせていただきます。」
えっ!? アレク!?
うっ、またアレクが私に向けて妖艶な笑みを浮かべた! そ、そうか! 昼間の続きだ! あんな奴に酌なんかする悪い私をお仕置きしてってことだな!? もぉー、アレクったら……レベルが高い遊びをするんだからー!
「お、おい魔王さん、いいのかよ……?」
タツがひっそりと聞いてくる。良いわけないだろ! まったくアレクったら……
「素晴らしい貫禄ですわ。お初に、ハーゲン・ヘアーナイ様でしたわね。まずはご挨拶代わりに一杯お注ぎしますわ。」
「お、おお……近くで見ると……なんという美しさ……そして凶暴な胸……」
あっ! あの野郎! アレクの胸に手を伸ば……しかけてコップを渡されたか……
「さあ、ぐいっとお開けくださいな。長旅お疲れ様でございました。」
「お、おお……ぷふぅ……旨い! そら、お前も飲むがいい。名は何と言う? どこから来た? うぬぅ……奮い立つような香りをさせよって……今夜は可愛がってやるからな?」
「まあ! 光栄ですわ。ハーゲン様はどのようなお仕事をされているのですか? 私、仕事ができる男性って好きですの。」
「お、おお……そうか! ぬはは、ワシはな! ここテンカム領全域の徴税官をしておるのだ! 日夜ご領主様のために領内全土を駆け回る過酷な仕事よ! それでな…………」
だっる……
それから数十分に渡りハゲの自慢話は続いた。さすがのアレクもこの遊びを始めたことを後悔してる表情だ。徴税官か……汚職し放題なんだろうな。さっきの態度からしても。それよりこの村はオワダとは違う領なんだな。山を隔ててるからそんなもんなのかな。
「ひびゃあぁぁ!?」
どうした? あ、ハゲの右手が凍りついてる。
ははぁーん。クソのような自慢話をしていたくせに、一向に体に触らせないアレクに業を煮やしてお尻でも触ろうとしやがったな? ここからでは見えないけど。アレクが私以外の男に体を触らせるはずないだろう。ざまぁ見ろ!
「酌はしてあげるわ。でもその行為は酌ではないわね。反省して謝るなら解かしてあげるけど?」
「うぬぬ……多少魔法が使えるからと調子に乗りおって! このワシを誰だと思っておる! ご領主様直々に徴税官に任ぜられたハーゲン・ヘアーナイであるぞ! そのワシに狼藉を働くということは! テンカム領のご領主であらせられるキトズミ・テンカム様に逆らうも同然! 恐れ入ったか!」
「ふーん。ねぇカース、あれを見せてあげてくれる?」
アレクがそれぐらいで恐れ入るわけないだろ。平然と私を呼んだ。あれね。
「いいよ。でもアレク、後でお仕置きね。」
「うん。お仕置き……して……//」
まったくアレクときたら……悪い子だ!
「ようデブ。よくも俺のかわいいアレクに凌辱の限りを尽くしてくれたな。万死に値するぞ。とりあえずこれ見ろ。」
なんとなくハゲって呼ぶのが可哀想に思えてデブと呼んでしまった。
「このガキがぁ! ようもこのワシに向かっ……て? てて? ロ、ローランド? ここ、国王? ち、直属……? はへ? なにこっれ?」
「見れば分かるだろ。俺達はローランド王国民、それも国王陛下直属の立場だ。つまり王族に準じた対応をするのが当たり前だな? それをよくもまあ、随分と舐めた真似してくれたもんだ。どうする気だ? 国際問題になるかもな。」
ならないと思うけどね。そこまで親密な国交があるわけじゃないだろうし。
「ひっ、ひいっ! 何卒っ! 何卒お許しを! まさかそのようなお方とはつゆ知らずご無礼の段、平に、平にお許しをぉぉぉーー!」
あれ? 変だな……
ここはもっと「そのような紙切れなど偽物だ」とか「ヒイズルで調子に乗るな」とか言って襲いかかってくるパターンのはずなのに。そんな太い腹を丸めて平伏されるとは……
「いや、分かればいいんだ……楽しく飲めばいいさ。じゃ、俺達は寝るから……」
心から言ってるとは思えないが、意外な反応されるとこっちも戸惑うもんだな。
「へへぇー! おやすみなさいませぇぇーー! お疲れ様でございましたぁぁーー!」
マジで何なんだこいつ……
さーて、アレクにお仕置きお仕置き。寝室はどっちだ? いや、先に風呂だな。よし、風呂場でお仕置きだ。ふふふ。
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