第1257話 山の街道にて
オワダでやり残したことがいくつかあるとは思うが、思い出せないので気にしない。別にいいよな。海の天国館の女将と担当さんには汚れ銀で
さて、現在私達は港からまっすぐ山に向かって歩いている。方角は東だ。聞くところによると、陸路でオワダを出るにはこの東側の山を越えるルートしかないそうだ。結構攻め込まれにくい地形してんだね。で、その山を越えた後に大きく分けて三方向に分かれているようだ。
今回私達が考えているのはそこから南、なんとかってダンジョンを目指してみようと思っている。その後で畳の産地にも行くつもりだし。
「ねえカース? 誰宛に紹介状を書いたの?」
「あぁ、先王様だよ。知ってる中で一番偉い方に間違いないよね?」
「あはははっ! それってあの四人は遥か北のノルドフロンテまで行かないと紹介状が役に立たないってことね! しかもノルドフロンテなら紹介状がなくとも歓迎してくれるでしょうに。」
「そういうこと。まあ頑張ったら領地持ちの貴族にもなれなくもないんじゃないかな? あそこは相当広いから、いくらでも開拓できるもんね。」
ふふふ。バンダルゴウに着いて中身を見た時のあいつらの顔が見たいものだ。先王と知ってまずびっくり、それから北の果てだと知って超がっかり。どんな顔するんだろうな……めっちゃ見たいぞ。
道は広い。しかし山を登るためなのだろう、ぐねぐねと曲がりくねっている。
「すっかり山の中ね。そろそろ山頂かしら。」
「そうみたいだね。結構交易も盛んみたいだし。」
意外と通行人が多いんだよな。馬車とだって結構すれ違ったし。幸い私達に追手がかかることもなかったので道中はのんびりだ。だいたい歩いて一日ぐらいで山向こうの村に着くそうなので、そこで宿泊するのが普通らしい。私達はどうしようかな? 別に野宿でも全然問題ないんだがな。
そろそろ山頂か。周囲は木に覆われているので眺めがいいなんてこともない。そう言えばこの辺りって魔物は出ないのかな? ムリーマ山脈とかオウエスト山ならばうようよ現れそうなんだが。すれ違った人達の感じからすると現れないんだろうな。
おっ、冒険者風の奴らも歩いてくるではないか。六人組か。ん? こちらを、いやアレクを凝視してるな。まさかこのパターンは……
「うっひょぉー見てみろよあの娘ぉ!」
「すこぶるつきってやつかぁ!?」
「たまんねぇぜおい!」
「げっへぇっ! だっせぇ男連れてんぞぉ?」
めっちゃ聴こえてるぞ。指差してんじゃないぞこの野郎ども……
その上……
「よぉよぉ姉ちゃんよぉ! 俺らぁイコンマの七等星ミノカディオのモンだぁ。知ってんだろぉ?」
「こぉんな弱そうな野郎なんか放っておいてよぉ俺らと楽しくやろうぜぇ?」
「俺らぁ売り出し中のパーティーだからよぉ! いい事しよぉぜぇ?」
「それより名前教えてくれよ! 俺はネノメラってんだ!」
囲まれた……
面倒だな……
「この女は俺の最愛の人だ。他あたれ。今なら無傷で済ませてやるから。」
とりあえず話し合いで解決を図ろう。
「む、無傷だって? ぷっ、ぷぷっ! ギャハハ! マジでか!? 無傷で済ませてくれるってかぁ!?」
「げぁーはははは! すげぇぞこいつ! 俺ら相手に無傷で見逃してくれるんだってよぉ!?」
「ヒヒッ! ヒャーッハァ! 笑わせんなぁ! 腹が痛えじゃないねぇか!」
「おらぁ! なぁーにキョロキョロしてんだぁ! 誰も助けてなんかくれねーぞぉ?」
「俺らぁにデケェ口ぃ叩いてタダで済むと思ってんのかぁ!?」
「げへっ! おめぇこそ今なら無傷で済ましてやんぜぇ? おら、さっさと行けやぁ! おっ、こっちぁ狼かぁ? こいつぁいい毛皮がとれそうだぜぇ!」
やっぱだめか……なぜこいつら系っていつも同じなんだ? たかが七等星のくせに……
「お前ら……自分らより強い者にうっかりケンカ売って酷い目に遭ったことないのか?」
「バカかこのガキぃ! 強え奴にケンカ売るわけねぇだろぉが! 世の中の仕組みってもんを知らんのかぁ!?」
「おらぁ! ごちゃごちゃ言ってねぇでさっさと行けやぁ! あんま俺らを怒らせっだらねぇぞあ!?」
「さーあ姉ちゃんはこっちだぜぇ? 仲良くしようなぁー!」
あっ、そうだ。いい事思いついた。周囲には誰もいないから一気に皆殺しにしようかと思ったけど、たまには昔を思い出して……
「なぁお前ら、金はどんだけ持ってる? 俺はこれだけあるぜ? 欲しいだろ?」
そう言って魔力庫から取り出して金を見せる。エチゴヤからどっさり没収したからな。
「なっ!? こ、このガキ……いい金持ってんじゃねぇか……」
「へっへっへぇーちょうどいいじゃねぇか。金も女もいただきだなぁ!」
「んでぇ? 金ぇ見せてどうすんならぁ? そいつを寄越すってんなら無傷で逃してやんぜぇ?」
「お前らも金を賭けろ。俺に勝ったら金も女もくれてやる。約束してやるぞ?」
さあ、こいつらはどう出る?
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