第1249話 後は野となれ山となれ
領主は死んだ。意味が分からない。榴弾も当ててないし契約魔法もかけてない。なーんかこのケースってどっかで見た気がするんだよな。何かを喋ろうとしたら死ぬ……契約魔法か!?
私じゃないぞ? 他の誰かが? うーん、ジュダ陛下とかって言ってたな……この国の王か。
仕方ない、侍女を治して話を聞き出してみるか……あーもー面倒くせぇー! なんで私達がこんな事を……
「おい! そこのメイドさん! こいつらの治療は任せたからな! この侍女だけ面倒みてやる!」
騎士や側近っぽい侍女は全滅させたがメイドなんかには当ててない。アレクに刺されて顔を殴られた奴だけ治してやる。まあ、ポーション飲ませるだけだがね。もちろん口移しなんぞしてやらん。気管に入ったらそれまでってことで。
半分は傷口にかけて、半分を口に突っ込んだ。治るといいのだが。
よし治った。
「アレク、起こしてくれる?」
「いいわよ。」『覚醒』
「うぅ……はっ!? 」
さすがアレク。効き目バッチリだね。
「やあ、おはよう。なぜか領主は死んだぞ? 話を聞かせてもらおうか。」
「なっ! きっ、きっさまぁ! よくもマナオ様をぉぉぉーー!」
襲いかかってきたから腹を蹴りとばした。バカかこいつ?
「あのさぁ……自分達のしたことを思い出してみな? 模擬戦に託けて初対面の人間の命を狙ったくせに、自分が殺されたら文句言うのか? それはともかく、領主がなぜか死んだから話を聞かせろって言ってんだ。分かるか?」
「ぐふっ、きっ、貴様らのような卑怯者の言うことが信じられるか! よくもマナオ様を! この恨み……末代まで忘れぬぞ!」
マジか、こいつ……話が通じないにも程があるぞ? せっかく話を聞いてやろうとしてるのに……
「末代まで? それは無理よ。だって末代はあなただから。じゃあね。」
「ま、待っ……ひぎぃぐぶぉ」
あーあ。アレクを怒らせてしまったか。喉にサウザンドミヅチの短剣が突き刺さってるよ。アレクも容赦ないな。せっかく治したのに。しょうがない。次の侍女から話を聞いてみるか。
それにしても情報収集が捗らないな。やたら死ぬからか?
あーもー面倒い! どいつもこいつも!
好き勝手に動きやがって!
メイドさん達は騎士の介抱に奔走してるってのに。
よし、こいつにしようかな。最初に私と対戦した奴だったかな。
「アレク、悪いけどこいつを起こしてくれる?」
「それはいいんだけど……ねえカース? もう面倒じゃない? あの領主の死因とかヒイズルの事とかどうでもいいんじゃないかしら?」
「言われてみれば。うん、そうだね! よし、そうしよう。もう放っておこうか。じゃあ、帰ろうか。」
「それがいいわ。あっ、忘れてた。あのバカな騎士達はどうする? あんなカスでも役に立つかも知れないし。」
それこそ忘れてた。あいつらは拘束されたとか言ってたな。助けてやるか……
「おーい、そこのメイドさん。オワダでは犯罪者を拘束する時ってどこに収容するんだい?」
「ひっ、あ、その、ここの地下に、牢が、ございますっ!」
そんなに怯えなくてもいいのに。
「そうかい。ありがとう。ついでで悪いが案内を頼めるかい? ほれ、これ取っときな。」
小判を握らせる。好きだろ?
「はぅ……こ、こちらです……」
再び屋敷に入り、地下へ案内される。
「こ、こちらです……この下に……」
「バカな四人組の騎士を知ってるかい? そいつらもここに拘束されてんのかな?」
「さ、さあ……申し訳ございません……その辺りのことは、私どもにはよく……」
ふーん、知らないのか。まあいいや。
「こ、この先です……あ、でも、鍵が……」
『金操』
もはやピッキング魔法だな。便利。
扉を開けて、牢屋エリアへと立ち入る。
「おい腐れ騎士ども! いるか!?」
「旦那ぁ!?」
「マジで!?」
「さすがだぜぇ!」
「出してくれぇ!」
いた……
「ここにはお前らだけか? シーカンバーの奴らはどうなった?」
「あいつらは放置されてたぜ?」
「おお、こいつんちにいるんじゃね?」
「たぶんまだウチにいるんじゃね?」
「あのエチゴヤの奴がナシつけたっぽいぜ?」
ふーん。まあいいか。『金操』
「出ていいぞ。今から船の探索するけど来るか?」
「開いたぁ!?」
「さすが旦那ぁ!」
「あの船ぇ!? 行く行くぅ!」
「旦那あざーっす!」
やれやれ。紆余曲折あったが、ようやく船内探索か。つーかこの街、これからどうなるんだ? いきなり領主が死んでさ。どうでもいいけど。
とりあえず浜に行くか……
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