第1245話 カースとアレクサンドリーネの朝

宿の風呂にて。私は力なく湯船にぷかりと浮かび、アレクに全身をマッサージしてもらっている。本当に疲れたんだよ……


「カース、大丈夫?」


「うん、アレクが揉んでくれるからいい気持ちだよ。」


「カースはいつもカッコいいけど、今日は最高だったわ。私もうおかしくなりそうだったもの。イグドラシルの棒でムラサキメタリックに穴を開けるだなんて信じられなかったわ。」


「いやー、かなり無茶な身体強化を使ってしまったからね。校長先生も凄い技を見せてくれたもんだよね。」


「本当ね。あの時は校長先生も組合長も、そして先王様も凄かったものね。でもやっぱり一番凄いのはカースだと思うわ。」


「そう? 照れるな。」


やはりアレクが見ていると思うと力も入るよな。そしてアレク……マッサージしてくれるのは嬉しいのだが、その手が段々と……悪いが私はもう限界なんだ……だめだ……寝る……







もう……カースのバカ……

いつもいつもこんなに私を昂らせて……

自分だけ寝てしまうなんて……でも、こんなになるまで……右肩なんて真っ赤に腫れあがってる……かなり痛いんだろうな……

魔力だってほとんど残ってないって言ってたし……

本当にカースは凄い……

せめて心を込めて、きれいにしよう。







ふぁ……あーよく寝た。結局昨日は遅めの昼飯を食べてから……確か風呂に入って……そのまま寝てしまったのか。


「ガウガウ」


腹がへったって? 呼び鈴の魔道具を押して担当さんを呼べばいいだろうに。でも私もかなり空腹だな。あれからどれぐらい寝てたんだろう。もうすぐ朝か……魔力は……二割ちょいぐらい回復してるな。

アレクは……よく寝てるな。ふふ、可愛い顔してる。天使の寝顔だ。


「ピュイピュイ」


コーちゃんもお腹すいたのね。よし、呼ぼう。まだ薄暗いけど気にしない。ポチっとな。


二分後、やって来た担当さんに朝食を頼んだ。もちろんメニューはお任せ。どうもお任せで頼んだ方が旨い気がするんだよな。




十五分後、用意された朝食は……鯛茶漬け!

これは堪らんな。空きっ腹にじんわりと沁みるではないか。


「ガウガウ」


熱いだと? ゆっくり食べろよな。


「ピュイピュイ」


美味しい? だよね。さすが港街!


ん? こっちは……鯛の鱗の唐揚げか! 妙な組み合わせだが旨い! 酒が欲しくなるじゃないか……いや、さすがに今の状態で朝から飲酒はちょっとな……せめて今日の用事が終わってからだな。もう少し魔力が回復しないと飲んでも悪酔いしそうだしな。あー旨い。




はあ……満足。アレクには悪かったな。でもあの寝顔を見ると起こしたくないんだもん。

よし、寝よう。再びアレクの隣で。

すまんがカムイ、番を頼むぞ。何も魔法を使わずに寝るから。コーちゃんも頼むね。


「ガウガウ」

「ピュイピュイ」


いやー全く頼りになる二人だ。よーし二度寝二度寝と……ぐう……






朝……ね。よく寝たわ。カースもよく寝てる。あれ? この匂いは?


「ピュイピュイ」


「コーちゃんおはよう。いい匂いがするわね。」


「ガウガウ」


「カムイもおはよう。カースはこのまま寝かせておくとして、何か食べたい?」


「ピュイピュイ」

「ガウガウ」


きっとお腹が空いているのね。でもこの匂いは?

まあいいか、私も何か頼もうかしら。カースはこのまま寝かせておいた方がいいわね。かなり疲れていると思うし。


呼び鈴の魔道具って便利でいいわ。部屋に侍女を待機させても同じことではあるけど、侍女には見せられないことも沢山あるし……


「お待たせいたしました」


「朝から悪いわね。朝食を三人前お願いね。さっきカースが何か注文したのかしら。それとは違うもので頼むわ。」


「かしこまりました」


まったくカースったら。私を起こさないで自分だけ食べるなんて。まあその気持ちは分かるけど。私がカースを起こさないのときっと同じ。なんだか嬉しくなってきちゃった。




はあ……美味しかった。コーちゃんとカムイは二食目なんじゃないのかしら。よく食べるわね。


さてと……食欲が満たされたら……次は……ぐっすりと眠ってるカースを……

今この時、魔王と呼ばれるカースが私だけのもの。無敵の防御を誇るカースが私だけには無防備な様を晒して眠っている。


いやが上にも昂ってしまうわ……


ああ……もう我慢できない……カース……んっ……

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