第1244話 凶毒四連殺終了

ムラサキメタリックの鎧を脱がせた奴から尋問開始だ。叩き起こす前に両膝をぶち折っておこう。逃げられないようにな。


「ぐがぁあ! て、てめぇよくもアガノさんを……死んだぜてめぇ!」


「そんなことは聞いてないんだよ。素直に話すか話さないか、好きな方を選べ。」


「けっ! 誰が話すかぁ! 鎧はなくても心は深紫じゃ『乾燥』あっ……うぐぐぅ……はぃぁぁ……」


オディ兄直伝の乾燥魔法。人間相手に使うのは久々だな。これだと血が飛び散らなくていいんだよな。



よし次。こいつは無傷のまま起こしてやった。


「見てたろ? こっちは別にお前の口を割らせる必要なんかないんだよ。代わりはもう二十人ほどいるんだからな。喋りたくないならそう言え。楽に殺してやるからさ。」


「うぐっ……」


「おや? どうした? 喋りたいのか? どうしても喋りたいなら聞いてやるぜ?」


どうせろくな情報持ってないくせにもったいぶりやがって。


「分かった……話す……何を聞きたい……?」


「それは後だ。話すんならまずは約束をしようぜ。俺に絶対服従しろ。そしたら命だけは助けてやるし、バンダルゴウに逃してやる。」


「む、無理だ……俺たちはすでに契約魔法で縛られている……組織を裏切ることはできない……」


へー。やっぱ深紫ともなると違うってことか。それならそれで問題ない。


『解呪』


契約魔法は呪いのようなものだ。だから私の解呪ならば魔力のゴリ押しでどうにでもなる。クーリングオフってか。


「さあ、ここまでやったんだ。約束してくれるよな?」


「あ、ああっがぐぅおぉ……」


よーし、かかった。奴隷ゲット。




こいつを皮切りに、次々と私の軍門に下る深紫。総勢十五人の深紫軍団か。こいつらを手駒にしてエチゴヤ潰しをやってもいいのだが、そんな面倒なことをする気はない。情報だけ聞き出したら適当に使って、それからバンダルゴウ行きでいいだろう。


では気を取り直して尋問タイムといこうか。





ふむふむ。思ったよりは良さそうな情報を手に入れたぞ。

・番頭は全部で四人。ヒイズルの東西南北に一人ずつ。

・それとは別に大番頭がおり、天都イカルガを仕切っている。

・他の三人の番頭の名前は分からない。

・第四番頭はおそらく南方の街、トツカワムにいる。

・オワダを仕切っていたのはアガノ。本当の拠点は山の中にある。

・ローランド王国との関わりは分からない。

・自分を勇者と思い込んでる狂人の噂は聞いたことがある。


まあこんなもんだな。

とりあえず今日のところは宿に帰って休もう。かなり疲れたんだよな。魔力は残り少ないし。よくやったもんだ。


「おい、きちんと片付けてくれるんだろうな?」


会長の奴、まだいたのか。もう用はないだろうに。


「あー、またでいいだろ。稼がせてやったんだし、目の上のたんこぶも消えた。しばらくはアンタの天下だろうぜ?」


「ふっ、まあよかろう。後日、必ず片付けに来るのだぞ?」


三日天下だろうけどね。深紫の奴らは知らないようだが、どうせ領主とエチゴヤが繋がってるってパターンだろ。領主か、いずれ挨拶に行くことになるのかねえ。


「さてと、というわけでお前らはこの深紫の面倒も見ておきな。もう数日もしたらバンダルゴウに連れて行くからな。」


「旦那ぁーすげーよ!」

「蛇ちゃんもやべぇーし!」

「狼もバカ強えぜ!」

「嬢ちゃんも容赦なかったよなぁ!」


「バカやろう、お嬢様って呼べ。とりあえず明日の昼ぐらいにあの浜辺に来い。船の中を探索するからな。金目の物があったら好きにしていいぞ。」


「ひゃっほー! やったぜ!」

「さすが旦那ぁ! 太っ腹ぁ!」

「それにしてもお嬢様のおみ足ときたらよぉー!」

「おお! 空に浮いた時なんかサイコーだったぜー!」


それぐらいは勘弁してやる。美しいものに目を奪われるのは当たり前のことだからな。じっくり見るがいい。


さて、最後に……


「おう、深紫ディパープルの奴ら。お前らが知る限りのエチゴヤの関係者を全員明日の昼、こいつらと同じ浜辺まで連れて来い。少しでも抵抗したらその場で殺せ。鎧と武器は返してやる。ついでに山の本拠地の全財産探して持ってこい。」


契約魔法がしっかりかかってるからな。誰一人として逆らえない。でもさっさとバンダルゴウに連れてってもっと軽い契約魔法にかけ直したいんだよな。絶対服従って命令する度に魔力が減るからさ。真人間になれ、とかなら最初しか減らないってのに。


よし、深紫はいなくなった。これでオワダもきれいになるだろうか。


そして現場に残されたのは死んだ奴の装備だ。深紫仕様のムラサキメタリックの鎧兜に武器。さて……収納にチャレンジしてみるか……


まずは刀から……


くっそ……やはりダメか……だが、ゴリ押しすれば解決するはずなんだ……もっと魔力を廻す! 錬魔循環……我が心すでに空なり……空なるが故に……収納!


はぁーはぁー……くっそ……なんて疲れるんだ……

でも、刀は収納できた。たった一本だけ。確か名前は山裂やまざきって言ったか。


だめだ……もう魔力がない。


仕方ないな……


「よう会長。これ預かっておいてくれよ。二日ほど。保管料払うからさ。」


「よかろう。二日なら二十万ナラーでいいぞ。」


「分かった、払おう。だから約束だぜ? この装備一式、全て欠けることなく保管して後日俺に引き渡してくれよ?」


「いいだっろおっ……ふっ、用心深いことだ。では二日後の夕方までに取りに来られい。」


「ああ、頼んだぜ。金はその時払う。」


これでいい。もう帰る。宿に帰って風呂入って寝るんだ。体の痛みがますます酷くなるし、魔力はもうないし……はぁ……まだ昼にもなってないけど大変な一日だったな。

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