第1223話 腐れ騎士との酒宴

結局四人の腐れ騎士を連れて海の天国館へ戻った。宿泊客じゃなくても食事はできるからな。せいぜいたらふく飲めばいいさ。


「マジでここに泊まってんのかよ……」

「しかも特別室、白砂……」

「ローランド国王直属って儲かるんか……」

「その若さで……」


オワダの者からしてもやはりここは高級宿なんだよな。分かりやすいステータスだわ。食堂だと話しにくそうなので部屋で食事をすることにした。


「それで? ここを治めてるのはどんな貴族なんだ?」


そこまで興味はないが、情報収集は大事だもんな。


「ありゃーいー女だよなぁー」

「そーそー! あれで独身ときたもんだ!」

「あれでも三十超えてんだっけ? 肉付きが堪らんよなー」

「男の噂って聞かねーよな?」


「聞かねーっつーか陛下のお手付きって噂だろー?」

「そーそー。だーから誰も手ぇー出せねーんだろ?」

「側近もやたら女が多いーし? そいつらだって揃いも揃っていー女だよなぁ……」

「手ぇ出してーけどなぁ……陛下のお手付きとなるとなぁ……」


なんだそれ?

愛人を捨てる代わりに領地をくれてやった的な話なのか? それとも愛人を重用してるとでも言うのか? まじでヒイズルの国王は正気なのか? なんだか情報集めするのがバカらしくなってきたな……


「ここの領主についてはもういいわ。ダンジョンのことを教えてくれよ。お前らは騎士だから少しは入ったことあんのか?」


「ねーよ!」

「あんなやべーとこ誰が行くかよ!」

「そーそー! 冒険者に潜らせとけばいいものをよー」

「俺らはオワダの騎士でよかったよなあー!」


マジで使えない奴らだな……


「ダンジョンは三つあるんだったな。ここから一番近いのは何てとこだ?」


「あーっと、どこだっけ?」

「カゲキョーじゃね? ここから真南のよー?」

「シューホーの方が距離的にぁ近いんだっけ? でも入り口が東側だからカゲキョーの方が近ぇーんだっけ?」

「そーそー。天都からならシューホーが近いんだけどなー」


東側? よく意味が分からんな。まあカゲキョーとやらの方が近いんならそれでいいや。


「ヤチロの里とカゲキョーならどっちが近い?」


「そりゃカゲキョーだろ?」

「おー、そんなもんじゃね?」

「途中までは一緒なんだがな。トゥス村辺りで道が分かれるぜー」

「そーそー。なんだぁ? ダンジョン潜んのかー?」


「ここを出てから考えるさ。のんびり歩いて回るつもりだからな。」


ヤチロの里もあることだし、オワダを堪能したら南回りでヒイズルを歩くつもりなのだ。飛んだら一時間で一周しそうだからな。のんびり楽しむのさ。


「のんびりと旅かー、その若さでいい身分だよなー」

「金もめっちゃあるみたいだし? こぉーんないい女連れてんしよー?」

「それに引き換え俺らぁよー? てきとーにぶらぶらして金ぇ巻き上げてよー?」

「これじゃあ結婚もできねーわなぁ……」


「ローランド王国で一旗上げるって手もあるぞ。今あっちはあちこちで動きが活発になってるからな。やりようによってはひと財産ぐらい築けるかもな?」


こんな腐った奴らは死ぬ可能性の方が高いけどね。


「あー無理無理。ローランドは普通に魔物が多いんだろぉ?」

「だよなぁ? やってらんねーよなぁ?」

「国ぁデケぇし金もうなってんだろうけどよー」

「命が大事だもんなぁ。それよりよー、武勇伝聞かせてくれやー」


私の武勇伝だと? それは困った。何を話せばいいのやら。


「いい質問ね。あなた見所があるわ。カースの武勇伝って多すぎて何から話していいのか分からないけど、私が知る限りのことを話してあげるわ。」


「ア、アレク……」


「大丈夫よ。私嘘なんかつかないから。」


そしてアレクは話し始める……




「ドラゴン!?」

「サウザンド? ミヅチっての?」

「ヒュドラってまさか九頭龍のことかぁ!?」

「クラーケンだぁ!? イカの化け物ぉ!?」


「優勝ぉぉ!? 一歩も動かずにぃぃ!?」

「国王に契約魔法かけたって!? マジで!?」

「千杭刺しっ!? ヤバすぎんぞ!」

「精霊と神の祝福持ちかぁ!」


アレクが止まらない。こいつらの反応が気持ちいいのか私の情報を次々と与えている。まあ別に秘密にしているわけではないから構わないが。


「……ってところかしら。ローランド王国で魔王を知らない人間はモグリね。カースの顔を知らない人間はたくさんいるけれど。」


「マジかよ……」

「話半分でも理解できねぇ……」

「そりゃ国王直属の身分証持つわ……」

「あんなボンボンじゃあ相手にもならねえ……」


「あれ? お前らアレクの話を信じたのか?」


どう考えても荒唐無稽とは思うぞ?


「だってお前らの風格っての? 只者じゃない感ばりばりだろ……」

「おお……そんな平凡な顔してるくせに反則だぜ……この子は可愛いすぎるし……」

「その服とかクソ高ぇんだろ? あの首飾りとかもよ?」

「そーそー。ぜってぇ敵対したくねーよなー」


意外だな。こいつらって見る目がある方なのか。だからたかる相手、擦り寄る相手を間違えずに生き残ってるってことか?


「アレクの首飾りは石の値段だけで白金貨五枚。こっちで言えば五億ナラーだな。それにオリハルコンの鎖、そして名人のカットを入れたら値段なんか付けられないだろうな。」


「ばっ、ごっ、オリ……」

「ごおっく……」

「オリハル……コンって確か王家ゆかりの……」

「やべぇよ……こいつらやべぇよ……」


正直な反応で好感が持てるね。タダ飯にタダ酒飲ませてやっても大した情報はなかったけど、まあ楽しいからいいか。


あ、そうだ。まだ聞いてないことがあった。


「エチゴヤってどうなんだ?」

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