第1185話 恐怖のマコンブ

今からは以前の岸壁方面に移動して水泳を楽しむんだ。特に、アレクのスク水姿ときたら最高だ。しまったな……マリーにビキニを頼むのを忘れてた。今からクタナツに頼みに戻っても間に合うのは間に合うが、さすがに帰り辛いな。それにちょっと恥ずかしい。ヒイズルに水着なんて売ってるものだろうか……海に魔物がいるのは同じはずだから、あっちにも水泳の文化はないはずなんだよな。


まいっか。スク水がキツキツでムチムチなアレクも魅力的だもんな。素晴らしい光景だ。もちろんそんなアレクは注目の的だ。恥ずかしそうに身をよじるアレク。可愛らしくてたまらんな。そんな視線を無視して私達は海へ飛び込む。釣りの邪魔をしては悪いから少し離れた場所からだが。


うーん、海はいいねぇ。ここらはちょっと深いが波も穏やかだし、頑張って潜れば栄螺サカエニナだって結構いるし。アレクは潜るのはそこまで上手くないが泳ぎ自体は問題ない。拙いながらも『水中気』だって使えるようになったしね。『水中気』と『水中視』が使えないと海中では何もできないもんね。


ちなみにコーちゃんは泳ぎも上手い。そこまで速くはないが泳ぐも潜るも自由自在だ。逆にカムイは泳ぐだけだ。潜れても一、二メイル程度だ。




「ぷはぁ!」


「ピュイピュイ」


海上に顔を出したらコーちゃんがいた。ホウアワビが食べたいそうだ。さすがのコーちゃんもあれじゃあ手が、いや口が出ないよな。吸い付き力が半端じゃないもんな。


よーし、ミスリルナイフをヘラ代わりに……


うほー、ここらのホウアワビは大きいよなー。こりゃ相当旨そうだわ。獲れるだけ獲ってやるぜ。まあ、小さいやつは放っておくけどね。




おっ、アレクも来た。ここは結構深いぞ? 無理しないでねー。


『大丈夫?』


伝言つてごとで問いかける。首を縦に振るアレク。


『あんまり大きな貝には近づかないようにね。』


人間を軽く丸飲みにできるようなシャコ貝がちらほら見えるんだもんな。あんなのに挟まれたらグチャッと潰されてしまいそうだよ。でも旨いのかな? 少し興味はあるが……一個、一匹? ぐらいなら獲ってもいいかな。

でもサザエとアワビが先だけどね。あ、雲丹ウンタンもいいな。




ふと見るとアレクがいない。もう上がったのかな? 魔力探査……横……あっちか。足裏からのジェット水流でスイスイ移動。


げっ、マジか……昆布にグルグル巻きで囚われてるじゃないか。昆布の魔物……魔昆布? いい出汁は出るのかな。昆布の味噌汁……ありだな。


『アレクー、助けは必要?』


首を横に振る。うん偉い。油断したのはアレクのミスだろうけど、ここからリカバリーすればプラスマイナスゼロだ。がんばれ。

海中は水中よりさらに魔法が使いにくい。私は魔力のごり押しで解決してるが何かコツなんかないのかな。母上に聞いておけばよかった。でもさすがの母上でも知っているのだろうか? 普通わざわざ海中で魔法を使おうとなんかしないもんな。


それよりアレクだ。踠いているが大丈夫なんだろうか。この昆布って幅広でかなり長いんだよな。全長何メイルあるんだろう。意外に丈夫そうだし。ミスリルナイフで切れるかな? 他の昆布で試してみよう。


うおっ、ちょっと近づいたらシュパっと巻きついてきやがった。素早いな。ナイフを使う暇がなかったじゃないか。私までグルグル巻きにされてしまったよ……


『アレクー。僕も捕まっちゃったよ。じゃあ見本を見せるね。』


『風斬』


私は魔法を体のどこからでも撃てる。肛門魔法の特訓をした副産物だな。当然どこから撃っても昆布は切れる。まったく、植物のクセに私を捕食しようなどと生意気な。あれ? 昆布って植物なのか? そもそもここらではこいつの名前は何と言うんだろうか? 誰も研究なんかしないんだろうな。海の中は危険だらけなんだし。

とりあえず切り刻んだ昆布は回収しとこう。いい出汁を期待してるぞ。


『分かった? 適当に風斬でも水斬でも使えば脱出できるよ。』


まあそれぐらいアレクも分かってるとは思うけどさ。どうやって使うかが問題なんだよな。がんばれアレク。




うーん、アレクの魔力が半分を切ったな。よし、二割を切ったら助けよう。


『じゃあアレク。先に上に行ってるね。がんばって。』


アレクはこちらを見て、力強く首を縦に振った。

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