第1186話 選抜試験
さてと……アレクが魔力を垂れ流しで試行錯誤してるもんだから……海の魔物が寄ってきた。決してアレクに近づかせてなんかやらないぜ。
まずは定番のシーゴブリンか。こいつら不味いんだよな……
水中では『狙撃』も『氷弾』もあんまり効かない。しかし私には……
『落雷』
正確には雷を落としてるわけではないんだけどね。無理矢理私から放っているだけだ。おまけに私は『避雷』を使わなくても雷が効かない。つまり、使い放題だ。アレクまで痺れてしまわないか心配だが、結構離れたし大丈夫だろう。
痺れた魔物はミスリルナイフで脳天を一突き。それから軽く解体をして魔石だけゲットしておこうかな。シーゴブリンはマズいから肉はいらないや。
それから二十分間ほど断続して魔物が襲ってきた。全て仕留めて美味しいやつだけ収納しておいた。よし、魔力探査にも反応なし。さーて、アレクはどうなったかな?
おっ、昆布に切れ目が入っている。もう少しか。
『アレク、頑張って。』
おおっ、急に魔力が膨れ上がった!
おおー! ついに昆布が切れた!
『お見事! さあ、上がろうか。こいつは僕が収納しておくよ。』
コクコクと頷くアレク。頑張ったねぇ。
そして水面へ。
「ぷはぁ……はぁ……げほっ……」
「よくやったね。疲れたよね。宿に帰ろうか。」
「えぇ……はぁ……海藻ってあんなに厄介だったのね……誰も潜ってないわけだわ……」
「僕も巻き付かれたよ。びっくりするよね。」
「びっくりしただけなのね……カースらしいわ。でも改めて思ったけど、海中って本当に魔法が使いにくいわね。いい訓練になったわ……」
「だよね。結構キツいよね。」
あ……これは使える。拘束隷属の首輪ですら私にはもう効かないんだから、代わりに海中でスムーズに魔法が撃てる練習をすれば……地上での魔法行使はさらにスムーズになるだろう。制御力アップに最適だ。出港までの二週間はこうやって過ごすのもいいな。一日二時間ぐらいなら魔力的に負担も少ないし、バカンスを兼ねたいいトレーニングだな。
さあ、コーちゃんもカムイも帰るよ。
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
今はとりあえず乾かすだけにしておいて、宿でしっかり洗ってあげるからな。その後はアレクとしっぽり……ふふふ。
こうして、ややハードな一週間が過ぎた。私達のところにも、ランディ達のところにもエチゴヤの魔の手が迫った形跡はない。徹底して逃げに入ってるんだろうか。それとも私達がバンダルゴウからいなくなるのを待っているのだろうか。闇ギルドにしてはえらく慎重だな。
そして今日は選抜とやらの日。少し早起きしてギルドへ行く。訓練場は……こっちか。
集まってるのは……二十人ほどか。護衛依頼は基本的に割がいいからな。
アレクとお喋りしながら待つこと十五分。いかにも屈強な海の男っぽい奴らが現れた。こいつらに護衛って必要か?
「冒険者ども、よく集まってくれた。俺はオワダ商会所属、サンタマーヤ号の船長バルタだ。今から選抜を行う、と言っても全員合格ということもあり得るので気楽にやってくれ。ではまずこの場で六等星以上の者は無条件で合格だ。こちらに避けておいてくれ。」
あらら、そんなシステムかよ。
「おい! 同じパーティーのモンはどうすんだぁ!?」
「パーティーランクが六等星ならば全員合格だ。そうでないなら個別に対応となる。不都合があるなら降りてくれて構わん。」
パーティーランクか。私とアレクはパーティー登録をしてないんだよな。特に不都合はないからな。そう言えばアステロイドさん達の『アステロイドクラッシャー』は五等星、エロイーズさん達の『レッドウィップス』は六等星パーティーだったよな。エロイーズさんもゴモリエールさんも五等星なのに。
私とコーちゃん、カムイはアレクから離れ端に寄る。
「頑張ってね!」
「ええ、少し待たせるわね。」
私を含めて六人ほどが集団から外れた。
「へえ、兄ちゃんその歳で六等星かよ。参るぜぇ……」
「組合長直々の依頼があってな。幸運にも面倒な試験を受けずに済んだってわけさ。」
「どこのギルドだい? つーこたぁ七等星の頃すでに組合長からの信頼が厚かったってことじゃんな? やるもんだなぁ……」
「あぁ、クタナツだよ。クタナツの今の組合長ゴレライアスさんからの指名依頼で一発昇格だった。」
「ひゅーう、まじかぁ。すげえなぁ。おっと、俺らぁヒイズルは天都イカルガの六等星パーティー『パープルヘイズ』ってんだ。俺ぁリーダーのジンマ・シャールってんだ。」
「俺はクタナツの六等星カース・マーティン。この子はフォーチュンスネイクのコーネリアスとフェンリル狼のカムイだ。」
アレクの紹介は後でいいだろう。さて、どんな選抜を見せてくれるのかな?
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