第1180話 外道組織エチゴヤ

エチゴヤのやり口は、控えめに言っても外道そのものだった。


奴らがバンダルゴウへの進出を開始した時のことだった。タムロ達の『シーブリーズ』は先んじてバンダルゴウに橋頭堡を築いており、その影響力が少しずつだがバンダルゴウの裏社会に浸透していった時だった。後から来たエチゴヤはあっさりとシーブリーズを超えていった。


例えば、賭場で負けが込んできた客にはその場で金を貸す。利率は一時間に一割、しかも複利。そんなもの知っていれば誰も借りないだろうがギャンブル中毒の奴らには関係がないらしい。そんな奴らが勝てるはずもなく借金だけが残る。悪辣なのはそこからだ。本人だけでなく身内までまとめて追い込みかけて奴隷に落とす。もちろん違法奴隷だ。そうしてただ売り飛ばすのではなく、最大限利益を生むようにとことん使い潰すらしい。中には五歳で客を取らされた双子の男女もいると……

使い道のないような年寄りですら殺人ショーや解体ショーに利用される。そんな中で顔も体も一級品の男女はヒイズルに送られる。あっちの金持ち相手の慰み者としていい値段で売れるそうだ。バンダルゴウの民に同情する気はないが、ローランド王国の民をヒイズルに売り飛ばしていると考えると、ムカつくな……


逆にヒイズルから奴隷が送られてくることもある。やはり使い道は同じく金持ちの愛玩用だそうだ。ローランド王国で普通に買うなら奴隷はそんなに高くない。それでも敢えて外国の違法奴隷を買う理由は……どんな使い方でもできるからだろうな。奴隷法は大抵は違反しても金貨十枚の罰金と奴隷没収で済む。庶民からすれば自分が奴隷に落ちるレベルの大金だ。そして悪質な違反ともなればもっと大きな罪に問われることもある。だが、もちろん違法奴隷にはそれがない。抜き打ち検査もなければ身内が会いにくることもない。どんなことでもやり放題だな。吐き気がするぜ……


エチゴヤはそうやって勢力を拡大してきたらしい。ランディ達はそんな奴らと揉めるのは割に合わないと極力揉めないようにしているらしい。末端はともかく、本格的に揉めてしまうと『青紫烈隊バイオレッタ』という厄介な奴らが出張ってくるらしい。そいつらがムラサキメタリックの装備を持ってるってわけか。生意気な……

そいつらを護衛や刺客として貸し出すこともあるとか、優良顧客にはサービスがいいらしい。


タイミングも良かったようだ。王宮でのテロや王都の動乱で国内の闇ギルドは軒並み粛正されたもんな。ひっそりと潜入していたエチゴヤを含むヒイズルの闇ギルドは上手く逃れたらしい。


「それもあるけどよぉ! あいつら同じヒイズル人のワシらにも容赦ねぇんじゃ! エチゴヤの幹部以外はみんな奴隷じゃあ思うとるんじゃあ! ワシの弟なんかよぉ……!」


ふむふむ。タムロも弟を殺されたと。それも生きたまま黒髭危機一髪をされたのか。あれって私もされたよな。で、弟は二十三本目の剣で事切れたってわけね。趣味が悪いな。特に後日それを本人に詳細に伝えるところなんか。ラグナは気に入らない奴はすぐ殺してたそうだが、はたしてタチが悪いのはどっちなのやら……


それにしてもエチゴヤか……バンダルゴウの役人とズブズブなのかも知れないが、よく摘発されないものだな。領主は何やってんだ? そんなことだからフランツがここを奪おうとするんだよ。ざまあないね。

前回私がバンダルゴウに来た時には闇ギルドなんて一件しか耳に入らなかったのにな。ホワイトシャーマンだっけ? あれってどうなってるんだろうな。興味ないけど。




ふー、腹も膨れたし今夜はここでのんびりとアレクとイチャイチャだな。


「じゃあまた明日な。昼前にここに来ておいてくれよ。」


「おう……エチゴヤぶっ潰してくれぇのぉ……」


それは分からん。明日行ってみてからだな。まあ、スパラッシュさんとヤコビニの別荘に殴り込んだ時みたいに、全てを焼き尽くしたくなるかも知れないがね。あいつは人間を的にして魔法や投槍を当てて遊ぶ外道だったからな……同類か……




客室にてアレクとお風呂。あんまり広くないけど湯船があるだけマシだな。


「こんな狭いお風呂も悪くないわね。カースと密着できるから。」


「ふふ、そうだね。密着だね。」


これはこれで悪くないが、アレクにこのような庶民的な風呂は似合わないな。まあ家に風呂がある時点で庶民なんかじゃないんだけど。


そして愛欲の時間。何度味わっても飽きることなどない。アレクは最高の女性だ……







明け方、目が覚めてしまったのでトイレに行こうと寝室を出ると、妙な男が二人ほどカムイに踏み潰されていた。


「カムイおはよ。侵入者か?」


「ガウガウ」


「そっか。よく捕まえておいてくれたな。ありがとよ。もう一眠りするからそのまま頼むわ。」


「ガウガウ」


そのままカムイは二人の男の上に寝そべった。生きてるよな? ふぁーあ、まだ眠いや。取り調べは起きてからでいいよな。むにゃむにゃ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る