第1160話 組合長からの依頼
翌朝。面倒だがギルドに行かねばならないため目を覚ました私。
「ギルドに行ってくるね。アレクは寝てていいよ。」
「うう……ん、いってらっ……しゃい……」
お眠なアレクの頬にチュッとしてから出かける。
朝のギルドって結構混んでるんだよな。これに並ぶのか……ダルいなぁ……みんな早起きしてるんだねぇ……真面目でいいことだ。
「この依頼はウチが先に目ぇつけてたんだぞ!」
「ふざけんな! 先に手ぇつけたんは俺らだぁ!」
「てめっ、足踏んでんじゃねぇぞ!」
「割り込みすんな!」
うーん、朝から騒々しいな。いつもこんな感じなんだろうか。やだやだ。
「うるせぇーーー! 黙って並べやボンクラどもがぁーー!」
おっ、組合長の登場だ。途端に静かになる冒険者達。
「上がってこいやカース。」
「はーい。」
静かになったと思ったら騒つき始める冒険者達。ざわざわ、ざわざわと。
「あ、あれが魔王……」
「千杭刺しの魔王……」
「あれが本物の魔王スタイルか……」
「顔……覚えとけよ……」
「知らねぇで絡んで酷ぇ目にあった奴ぁザラにいるぜ……」
「ちっ……特徴のねぇ顔しやがって……」
「てんで魔力だって感じねぇじゃねぇか……マジであれが?」
「組合長がカースって呼んだだろうが……」
「挑戦すんなら俺らがいない時にやれよ……」
悪くない騒めきだ。せいぜい私の顔を覚えて欲しいものだ。
「さあて、朝っぱらからすまねぇなぁ。早速だが依頼の話だぁ。」
「はい。」
「お代官直々の依頼なんだがよぉ。北に行かれた先王様にあれこれ届けて欲しいんだとよ。報酬は大金貨一枚だぁ。物は後で渡すがお前ならすぐだろぉ?」
「問題ないですね。受けましょう。」
お代官は心配性ってか。あの人って国王大好きだもんなー。いや、もう先王か。さすがに退位から一年以上経ってんのに国王って呼ぶのはまずいか。
「いやー助かったぜぇ。割が悪い依頼じゃねぇんだがよ。行き先が行き先だからなぁ。お前んとこの楽園に行きたがる奴ぁ多いんだがよぉ。あっちの方、北の開拓地に行きたがる奴ぁ少ねぇからよぉ。」
「じゃあ早速、物資を受け取りましょう。」
「おう、倉庫へ行くぜぇ。」
低温の倉庫。ここに来るのはいつぶりだろうか。
「まずぁこれだぁ。」
ふんふん。新鮮そうな野菜類だな。
「それからこいつなぁ。」
ふんふん。武器に防具ね。
「最後にこれだぁ。」
衣類か。開拓中の街では手に入りにくい物を選んだのかな。それよりあの代官大丈夫なのか? 借金まみれって聞いてるが……私財を投げうってあちこちの開発を進めてる上に、先王にもこれだけの物資を。まあ困ってたら助けてやるか。私がクタナツにいる間ぐらいは。
「あと、こいつぁ手紙だぁ。返事を貰ってきて欲しいとよぉ。」
「分かりました。明日出発して、先王様からのお返事を受け取り次第戻ってきましょう。」
「頼んだぜぇ。他にも頼みてぇ件はあるが、お前次第だぁ。」
「帰ってから考えますね。じゃあ行ってきます。」
まずは宿に帰って二度寝するけどね。
組合長室を出て、ギルド内部を歩く。冒険者達が割れるように道を開ける。知った顔は……いないな。バーンズさんやアステロイドさん達はみんな領都に行ってるんだったな。トンネル工事か……上手くいっていればいいが……
ふぁーあ。眠い……
宿に戻ってみると、アレクは寝ていた。ただし、布団を蹴飛ばしてあられもない姿を晒している。珍しく寝相が悪いな。もー、入ってきたのが私じゃなかったら大変なことになっているぞ。
とりあえず寝込みを襲うとしよう。可愛いんだからもー。
よーし、今日はもうこのままのんびり激しく退廃的にだらだら過ごすとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます