第1159話 依頼完遂
クタナツのギルドに戻り受付に並ぶ。そして気付いてしまった……
通常、魔物の討伐を依頼された場合はその魔物の一部、もしくは全身を持ち帰る。しかし今回の場合はスライムであるため特に証拠がない。できれば魔石ぐらいゲットしたかったが全部ノヅチが吸い込んでしまったもんなぁ……
ゴレライアスさんなら信じてくれるだろうが、再度あそこにスライムが発生した場合が問題だな……
まあいいや。
おっ、順番が回ってきた。
「いらっしゃいませ。ご用件をお伺いします」
「組合長からの依頼が済んだので報告に来た。できれば直接話したいが。」
もちろんギルドカードを見せながら話しかける。
「お待ちください」
それから五分と待たずに組合長室へと案内された。
「おう、来たかぁ。終わったんだなぁ?」
「どうもゴレライアスさん。お待たせしました。終わりました。ただ証拠がないんですよね。全部ノヅチが吸い込んでしまいまして。」
「ああ? ノヅチだぁ!? マジかよ……」
「マジなんですよ。もう巨大な湖跡しか残ってません。何なら確認にどなたか職員の方を連れて行くことはできますが。」
「しゃあねぇな。俺が行くぜぇ。前々からお前の板に乗ってみたかったしよぉ。アステロイド達を王都に乗せて行ったって言うじゃねぇか。」
「そんなこともありましたね。それなら早速行きましょうか。今からなら夕方の閉門には十分間に合いますし。」
ちょっと無駄な手間だが証拠がないんじゃどうしようもない。組合長たるゴレライアスさん自身に確認してもらえば間違いないな。
それから私、アレク、コーちゃん、カムイ、そしてゴレライアスさんの五人で再びヘルデザ砂漠に舞い戻る。
「一時間とかからねぇのかよ……」
ふふふ。普通なら二、三週間コースだもんな。
「ここです。ここが一面に渡ってスライムに覆われてました。」
スライムはいなくなったし、砂もごっそりと減っている。見渡す限りのクレーターか。砂漠なのに大きくへこんで、底の方は岩盤が剥き出しになっている。
「あの穴か……ノヅチが出てきたのぁ……」
「そうです。大変でしたよ。あ、とりあえずここはこのままにしておきますね。水で満たしてもいいんですけど、またスライムが現れたら大変ですからね。」
私が出した水だからな。大量の魔力が含まれていても不思議はない。水を出した時や最後に見た時は魔力を感じなかったが、どこで変化してしまった分かったものではない。
「まあええ。よくやったぜぇカースよぉ。これでお前は六等星だぁ。」
「ありがとうございます。」
七等星から六等星、六等星から五等星に上がるのって結構大変らしいんだよな。私は昇格を狙ってなかったからどうでもいいんだが、貰えるものは貰っておくさ。
クタナツのギルドに戻り、再び組合長室。
「ほれ、これが六等星のカードだぁ。お前に依頼したい事ぁまだまだあるがよぉ……受けられるか?」
「ありがとうございます。うーん、少しならいいですよ。今から二週間ほど暇がありますので。」
「二週間かよ。そんなら仕方ねぇなぁ。一件頼むぜぇ。とりあえず明日の朝、また来いやぁ。」
「いいですよ。ただし、二週間以上かかりそうなら断りますからね。」
「おおぉ。頼むぜぇ。」
これで私を悩ませたスライム問題も解決した。ノヅチに吸わせるアイデアを思いついた私の勝利だ。毒を持って毒を制する的な? でもノヅチがクタナツで暴れたらどうしよう? あんなの手に負えないぞ? 魔王亡き後、勇者ムラサキはどうやってノヅチを懐柔してヘルデザ砂漠に住まわせたんだ? そこまで興味はないけど分からないことが多すぎる。この世界は一体どうなってんだよ。サンドラちゃんがクタナツに帰ってきたら調査してくれないかな。
ちなみに今夜は実家には帰らず、アレクと二人でクタナツのちょっといい宿に泊まった。コーちゃんとカムイは実家に帰したが。
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