第1131話 聖白絶神教団跡地
キアラの卒業式の翌日。私は母上とマリーを連れて王都へ向かう。もちろんアレクにコーちゃん、カムイも一緒だ。キアラはもう数日後に出発するらしい。
ムリーマ山脈の上空を越えるとスペチアーレ男爵の所に寄りたくなる。だが今回はそんな暇はない。王都へ一直線だ。
到着。今日はアレクがいるから貴族用の門を通れる。待ち時間なしでスムーズだ。
適当に馬車を拾って王都の内部へと向かう。先にゼマティス家に顔を出すべきか、それとも現場を見ておくべきか……
「二手に分かれるわよ。私とマリーは先にゼマティス家に行って事情を説明しておくわ。カース達は教団跡地を見てきなさい。それから夕方までにはゼマティス家に来るのよ?」
さすが母上、名案だ。
「オッケー。そうするね。じゃあ僕らはここから歩くとするよ。伯母様によろしくね。」
「ええ、後でね。」
さて、教団跡地か。あれでも王都の一等地だからな。何か新しい建物が建ってたりするのかな。無理だろうなぁ。地下にヤバいものがあるんだから王家がカモフラージュ程度に何かを建てていると見た。
ほぉら見えてきた。おっ、建物があるぞ。門番までいるし。
「こんにちは。私はカース ・マーティン。ここは何の建物かな?」
もちろん国王直属の身分証を見せながら質問する。
「ここは王立魔法研究所です。部外者は立ち入り禁止となっております」
なんと? そんなものが出来ているのか。てことは宮廷魔導士の管轄かな。ガスパール兄さんや母上のコネが効くと見た。まあ国王の一声で解決しそうではあるが。
「ちなみにここの所長はどなたですか?」
「グレゴリウス・ド・ゼマティス閣下です」
伯父さん? それはますます好都合。つーかむしろ伯父さんが率先して禁術の毒を研究してんだろうな。悪い人だ。
「なるほど。ありがとう。また来ると思うからその時はよろしく。」
「またのお越しを」
職務に忠実な騎士って感じだな。また来るから私の顔をちゃんと覚えておいてくれよ?
他に行く所もないのでゼマティス家へと向かう。本当はスピオスライド商会に寄って香辛料を買いたいのだが、そこまでの金がない。白金貨一枚出したら全財産の七割ぐらい吹っ飛ぶからな。
「不思議な建物ね。窓が全然ないし飾り気もないわ。まるで何かを閉じ込めておきたいみたい。」
そう。普通の建物ならまず塀があり、その内部に建物があるはずだ。しかし、ここはいきなり壁だ。全てを壁で覆い尽くしてある。
「明らかに毒の封じ込めのためなんだろうね。伯父さん達はあの毒を利用したいんだね。」
あの毒を浄化して庶民の暮らしを守るだなんて考えてるはずがない。あれを足がかりにして神殺しの猛毒すらも手に入れたいと考えてるはずだ。あーやだやだ。でも心強い味方だよな。
「先王様を殺しかけたあの毒なのに……」
「だからって放置もできないだろうしね。解毒だってできるようにしておかないと危ないもんね。」
今のところあれを解毒できるのは私だけだが、神の祝福を持つ神官や宮廷魔導士なら出来るようになってもおかしくない。ただ、私の場合は魔力と引き換えに貰った祝福だからな。あれほどの魔力を常人が提供するのは不可能だ。難しいところだね。
さて、ゼマティス家に着いた。伯母さんを交えて情報交換といこうか。
「いらっしゃいカース君。アレックスちゃん、コーちゃん、カムイもようこそ。だいたいの事情はイザベルさんから聞いたわ。あなたも苦労人ね……」
「お久しぶりです伯母様。伯父さんが所長とは驚きました。ぜひともご協力願いたいところです。」
「当然ね。カース君には色々してもらってるからね。きっとお互いのためになると思うわ。お互いのね。」
分かっているさ。私だって魔力を尽くすぜ。
明日からだ。
果たして総代教主はどのような姿で苦しんでいることやら。確か名前は……ジャンとか言ったか?
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