第1130話 卒業パーティー
卒業式後のパーティーもたけなわとなってきた。
ジーンもベレンガリアさんもキアラを囲んで楽しくお喋りしている。
私は父上と二人でちびちびと飲んでいる。少し聞いておきたいことがあるのだ。
「ねえ父上。やっぱりクタナツを出るの?」
「おう。本当はお前が卒業したらどこかで農業でもやろうかと思ってたけどな。ちょいと気が変わってキアラの卒業まで待ってしまったぜ。」
アッカーマン先生のこととか道場のこととか、色々あったもんな。
「それで、どこに行くことにしたの?」
「ルイネス村だ。お前が整備してくれたってこともあるが、あそこにはスパラッシュとジジイの墓があるからな。」
なるほど。父上らしい選択だ。
「それはいいね。てことは父上は村長になるの?」
「それがなぁ、悩ましいんだよなぁ……」
分かる。村長になることのメリットとデメリットがあるもんな。
まずはメリット。
・最下級だが貴族になれる。村長と言えば小さくても半ば領主扱いだからな。準騎士爵という爵位をゲットだ。
・法に則った対応ができるようになる。例えば盗賊や魔物が攻めてきた時にはクタナツなどの騎士団に助けを求めることができる。大抵は手遅れになるんだけどね。
・各種補助が貰える。特にルイネス村は廃村なんだから復興にはかなりの資金が必要となる。その辺りの補助が貰えるのは大きいかもな。
次にデメリット。
・納税。やっぱこれだよな。村人の数や広さに応じて払う必要がある。まあ母上ほどの功績があれば無税にもできるよな。
・村民の面倒を見る。村人が増えるかどうかはともかく、村長ならば村民の面倒を見ることは必須だよな。
・追い出される可能性。届出なしで廃村に勝手に住んだりすると、ある程度発展した段階で徴発されてもおかしくない。まああの両親を相手にそんなことが可能とも思えないが。
・各種手続き。たぶん父上はこれを一番嫌っているはずだ。私だってどれほどの手続きが必要か分からないし、村長になってからも煩わしいことがたくさんあるはずだ。
他にありそうなのは村が発展すると寄ってくる元ルイネス村の村長の血筋だろうな。自分の領地だから返せって具合に。まあ問題ないよな。あの両親なら何とでもしそうだし。
「どっちでも良さそうだね。強いて言うなら母上が今でも平民ってのが不思議な感じはするよね。」
「それもそうさな。まあクタナツを出るのは来月末ぐらいになりそうだし。のんびり考えるさ。それより兄貴の話を聞かせろよ。」
おっ、そう来たか。いくらでも話すとも。
「何ぃ!? 神木イグドラシルに登ってた!?」
「何ぃ!? 神剣セスエホルス!? 初めて聞いたぜ……」
「何ぃ!? 二人のエルフ美女だと!? さすが兄貴だぜ!」
「何ぃ!? 山岳地帯中を旅してるだとぉ!?」
フェルナンド先生の話に父上は驚きっぱなしだった。私とアレクの寿命が二倍になったことにはあまり驚いてくれなかったのに。
「ピュイピュイ」
おー、コーちゃんも飲もう。カムイはあっちで子供たちとジャレてるし。モフモフ毛皮が大人気だね。
「あー俺もイグドラシル登ろうかなー。イザベルとよぉー!」
「あら、父上マジで? 登るんならフェアウェル村までは乗せて行くけど?」
「兄貴ですら三年かかったんだろぉ? 俺じゃあ何年かかるわ分かったもんじゃねぇぜ! 兄貴はマジすげぇよなぁ……」
すっかり酔いが回ってるな。でも父上はここからが長いんだよな。
「あら? 私は登ってもいいわよ?」
母上まで参戦してきた。
「へへ、イザベルよぉ。お前はホンットきれいだよなぁ! そんなお前のためなら登るのもアリだぜなぁ!」
「あなたこそ。年々いや増す渋みが最高よ。本当に素敵。」
「イザベル!」
「アラン!」
あーあ、二人の世界に入ってしまったよ。場所を移動しよう。アレクは……いた! キアラ達と一緒だ。
キアラもシビルちゃんも卒業か。もう子供じゃないよな。成人まではもう五年あるけど。みんなそれぞれの道を行くんだろうなぁ。何だか寂しいな。私が一番自分の好きな道を行ってるってのに勝手なもんだ。
何はともあれ、婆ちゃんを救うことが最優先だ。明日から頑張ろう。
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