第1082話 紫の金属と白い金属

あいつらはどこにいるのかなー。


おっ、いたいた。


「よう、セキヤにクワナ。前から聞いておきたいことがあったのを思い出してな。」


「何じゃあ!? 俺の強さの秘密かぁ?」

「何なりとお聞きください!」


クワナは素直でいいな。


「お前らのムラサキメタリックなんだけどな。どうやって収納してんだ?」


前々から気になっていたんだよな。この魔力と相性の悪い金属を偽勇者どもは一体どうやって魔力庫に収納してたんだろうか。それところか『換装』まできっちり使いこなしていたし。こいつらヒイズル人なら知ってるだろうか。それにセキヤには……


「それぁのぉ! 所有者登録をしちょるんじゃあ! おめぇも知っちょるようにムラサキメタリックぁ魔力と相性がクソ悪ぃ。じゃけぇ持ち主だけでも収納できるよぉに魔力庫の設定いじっちょるんじゃいや。」


納得はできないが、イメージは湧いた。個人個人がそのムラサキメタリックと所有者登録とやらをすることで、自分のだけは魔力庫に収納できるってことだな?


「他にこんな白い金属もあるよな? こいつは何て名前なんだ?」


「おお、こいつぁのぉ、アイリックフェルムっつーてのぉ、東の大国メリケイン連合国との貿易で手に入るモンらしいでぇ?」


おっと、 初耳だな。東の国ヒイズルのさらに東にはそんな国があるのか。行っちゃおっかなー。


「こいつはムラサキメタリックに比べりゃあ大した品質じゃないみたいだが、製法とかはどうなってんだ?」


「そんなん知るかいや。のおクワナ? おめぇは知っちょるか?」

「いや、秘中の秘だよ。国王陛下とその側近ぐらいしか知らないさ。そもそもアイリックフェルムはメリケインでしか取れないんだから。」


なるほど。クワナの言うことは信用できないが、セキヤには私の情報源になるという契約魔法がかかっているからな。所有者登録ね。この情報は母上やフランツにも伝えておこうかな。きっと役に立つだろう。


「それより魔王ぉおめぇそのムラサキメタリックを魔力庫から出しやがったのぉ!? まさか所有者登録情報の書き換えしやがったんかおぉ!?」


「そんなこと出来るわけないだろ。魔力で無理矢理解決してんだよ。俺の得意技、ごり押しでな。」


「は、はは……さすが魔王さん……そんなバカな……」


クワナにしては珍しく取り乱してるね。


「なんだ? おかしいか?」


「当たり前じゃあ! 世の中に同じ人間がおらんよぉに同じ魔力を持つ奴もおらんのんじゃあ! じゃけぇ持ち主しか収納できんほによぉ! おめぇはどねぇして収納しちょんなぁ!」


それにしてもセキヤの奴、さっきから言葉がめちゃくちゃだな。酔いすぎだろ。


「知らねーよ。魔力でごり押ししてるだけなんだから。ローランド王国の魔法使いを舐めんなよ?」


「さすが魔王さん! 惚れ惚れしますよ!」


「けっ! なぁにが魔王じゃあ! 俺ぁヒイズルの勇者じゃあ!」


そして新たに気になったことがある。


「えーと、君はサテュラちゃんだったよね。本気でこいつらと一緒に北に向かうんだね?」


「平民の分際で気安く呼ぶなですの! そしてクワナはワタクシが見初めた男ですの! そこらの有象無象と一緒にして欲しくありませんの!」


「それは失礼いたしました。サテュラお嬢様が本気であられるなら、それで良いのです。厳しい環境ではありますが、力を合わせて生き残ってください。」


全くもう。生意気な子供だな。確か私の二、三歳下だよな。本人がいいならいいか。よし、これでこいつらに聞きたいことはもうない、よな?




よし、後はおじいちゃんおばあちゃん達と合流して楽しく過ごそう。この二人とは今生の別れとはならないはず、だよな?


アレクと二人でおじいちゃんを挟んでお喋りをしよう。


「おおカースや。まだその首輪を付けてくれておるのか。儂は嬉しいぞ。」


「大事にしてるんですよ。せっかくおじいちゃんがくれたんですから。」


「ぬはぁー! 聞いたかアンヌ? カースはなんといい子なんじゃあ!」


「はいはい。分かってますとも。カースもアレックスもいい子ですとも。」


「俺の子だからな。」


父上がぼそっと発言する。


「バカもん! 儂の孫じゃからじゃあ! 貴様に似なくて本当に良かったわい!」


「あら父上。カースったら甘いところがアランそっくりなのよ? 少しは父上を見習って欲しいわ。そうだわ、どうやって五等星ゴモリエールに勝ったか教えてあげたら?」


おお母上! それは興味深いぞ。すっかり聞くのを忘れていたもんな。


「なんじゃと! ま、まあカースは心優しいからのぉ。それはそうとゴモリエールじゃったな。あやつは強敵じゃったわい。アンリエットの頼みとは言え厄介な事を引き受けたもんじゃて。」


「それで、どうだったんですか!?」


「ふふ、聞きたいか? 儂の戦いぶりをのぅ?」


「私も聞きたいですわ!」


アレクもノリノリだ。さあ、おじいちゃん話してくれ!

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