第969話 第四試合終了

「この部屋だ。本当に入るつもりか?」


ダミアンに案内されたのはごく普通の奥まった部屋。ここにクソ針が……

行くよコーちゃん。


「ピュイピュイ」


「ああ、入る。なるべく離れておいてくれ。」


扉を塞いでいる土壁を解除し、ドアを開けすぐに『解毒』

本物の死汚危神でないなら私の解毒で解決するはずだが…….


「ヒィーッヒッヒ! まんまと来たか魔王ぉ! 死ねえ!」


いきなりだな。すっかり回復してやがる。キアラにバラバラにされたんじゃなかったのかよ。


『榴弾』

『麻痺』

『重圧』

『拘禁束縛』


何やら攻撃をしてきたが、私の自動防御は無敵だ。


それより、私の解毒が効いたってことはやはり本物の死汚危神ではないってことだな。まあ当然だろう。エルフが禁術を使って初めて生成される猛毒なんだから。


「おめーこの毒、どうせ教団から手に入れたんだろ? もう教団はねーってのにしつこい奴だな。」


「呪いに苛まれたこの身の苦しみ……闇ギルドの誇り……おぬしなどには分かるはずもないわあ……」


何言ってんだこいつ?

それより、闇ギルド連合、毒針、聖白絶神教団、ヤコビニ派……ぜーんぶ繋がってやがったってことか……


「おめーがアッカーマン先生の前の毒針なんだな? 闇ギルド連合の会長とかってのはどうでもいいがよ。」


「アッカーマン……アイギーユと名乗っていた小僧が……達人とはなあ……あやつが失敗したばっかりに……呪いがワシに返ってきてしもうたわあ……」


ああ、スパラッシュさんが死んで呪いがアッカーマン先生に戻った。そのアッカーマン先生も死んだから、さらに先代まで呪いが戻ったってことか? ならこいつが死んだらもう呪いは消滅するよな? ざまあみやがれ!


「じゃあもう死ね。灰も残らないように焼いてやるからよ。」


「ヒッヒッヒ……理不尽に全てを奪われたワシらの恨み……アイギーユが小僧の恨み……そしてスパラッシュとやらの恨み……消えはせぬ……決して消えはせぬぞお……」


知るかボケ。


「じゃあな。」『火球』


密室だけど気にしない。死ね、消えろ……




終わった……灰も残ってない。

とうとう先々代毒針を殺した……

これで闇ギルド連合も終わりだ……本当は色々と吐かせたかったが、まあ無理だろう。だからこれでいい。


雑魚はまだまだ生き残っているだろうが、主要な敵はこれで全滅したはずだ。

これで心置きなく、スパラッシュさんの墓参りに行ける……スパラッシュさんの命日までまだ時間はある。間に合ってよかった……




「ダミアン様! 大変です! 客席で騒ぎが起こっております!」


「あぁん!? 詳しく報告しろぁ!」


「はっ! 先ほど、突如何かが弾けたのです! すると、その周辺の観客がたちどころに血を吐き意識を失ったのです!」


ちっ、最後の悪あがきってとこか? まさか客席にあの毒を撒きやがったのか……市民を殺したぐらいで私が気に病むとでも思っているのか?


さしあたっての問題は千単位の観客が暴れていることだ。確かここは五千人ぐらい入るんだったか。


『うおらぁ! てめぇら動くな! 鎮まりやがれ!』


ダミアンの声だ。拡声の魔道具のボリュームを全開にしてやがるな。かなりうるさい。


『大した毒じゃねぇーってことが分かった! 倒れた奴から距離をとって静かにしてやがれ! 騒いだ奴はぶち殺すからよぉ!』


だから何であれぐらいで会場が鎮まるんだよ! そんなにダミアンの言うことは信用できるってのか!


まあいい。ギチギチの観客達が空白になってるポイントに毒が撒かれたってことだ。幸い空気感染するような毒じゃないんだからそこら一帯をまとめて解毒すれば解決だ。


解毒の最中に何人か私に攻撃しようとした奴らがいたが、無駄なこと。自動防御に阻まれて何もできずにお縄となった。きっと闇ギルドの残党なんだろうな。


さて、これでひと段落ついたかな。大会はどうなってんだ?


『勝負あり! 四回戦の勝者はセキヤ・ゴコウ選手でぇーす!』




なんと……

セキヤかよ……

あいつきっちり起き上がってやがったのか……しぶとい奴だわ。


そうなると、準決勝はどうなるんだ?

第一試合のクワナ対スティード君はいいとして、第二試合が……




『会場に来てる野郎どもー! 一連の状況を説明するからよぉ! しっかり聴いておきやがれ! 二度は言わねぇからよぉ! そもそもスティング選手だがな………………』


ダミアンによる説明アナウンスが流れる。闇ギルド連合、魔蠍、聖白絶神教団、ヤコビニ派。それらを含んだ王都の動乱との関係。その過程で私とキアラが王都を守ったこともさりげなくアピールしていやがる。

しかもダミアンの話術はそれらを解決したのがあたかも自分の差配によるものかと錯覚を与えかねないものだった。悪い奴め。


『と言うわけだぁー! カース選手とキアラ選手の二人にもう一度大きな拍手をしてくれやぁーーー!』


うおっ! まさしく怒号のような歓声が私に降りかかった。悪い気分ではない。はて、キアラはどこにいるんだ?


それにしてもキアラめ。的確な状況判断をしたらしいじゃないか。誇らしいぞ。母上の教えかな。しっかり褒めてやらないといけないな。

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