第968話 毒針
とある密室ではダミアンと数人の魔法使いがスティングの尋問にあたっていた。
両手両足が千切れたままのスティングに尋問魔法をかけ、情報を得ようとするも捗々しくない。それどころか……
「ヒッヒッヒ、おぬしが放蕩三男か。アッカーマンの奴からよく生き残ったのお。」
「それを知ってるってことはお前がアッカーマンの『蔓』か。そんなら先代の『毒針』のことも知ってんだろ?」
「ヒッヒッヒ、毒針か。知っておるとも。毒の神サマニエルの呪いに身を焦がした愚か者よお! おぬしも味わぉてみるかぇ? 絶望に身を焼かれ、やり場のない憤怒に心を燃やされてみるがええ!」
「お前……お前か! お前が先代の毒針かぁ! もう立ち上がることもできねぇほど弱ってるって聞いたがよぉ! だからあれを飲んだってのか!」
「ヒッヒッヒ、さあのお。ワシはこうしてピンピンしておるわぃ! ほれえ、あいつはどこだぁ? 魔王カースとやらを連れてきてみぃ!」
両手両足を切断されておきながらもピンピンしてると言い張るスティング。命の火は刻々と消えつつあるというのに。
「ああ、そういやアッカーマンの本当の目的は俺じゃなくてカースだったな。どこから入った依頼か知らねぇがあいつを狙うたぁお前もツイてなかったなぁ。あいつはマジで魔王だぜ?」
「ヒッヒッヒ、本当にそう思うか? ワシから見れば隙だらけの
「その妹にいいようにやられたクセにでけぇ口きくじゃねえか。まあお前はもう終わりだし、組織もロクな人材が残ってねぇんだろ? そろそろ聞きてぇこともねぇし。大人しく死んでろや。言いたいことがあるなら聞いてやるぜ?」
「ヒッヒッヒ、確かにロクな人材が残っておらぬわぇ……だがなぁ、ワシら闇ギルドの仕事に失敗はない……魔女や好色騎士の命を諦めた奴らなどと一緒にしてくれるでないわぁ……」
「そんなの知るかよ。残った雑魚でカースを狙うってか。好きにしろや。」
「ヒッヒッヒ、こいつを見ても余裕ぶっておれるかのぉ……」
スティングの眼前にポーションの瓶が現れて、床に落ち、そして割れた。魔力庫から取り出したのだろう。
「お前ら離れろ!」
「ヒッヒッヒ……知っておったか……神をも殺す猛毒、
「全員ここから出ろ! この部屋は封鎖だぁ!」
ダミアンを含む魔法使い達が一斉に部屋から退出する。そして『土壁』などの魔法で部屋の扉や窓が全て封鎖された。
「ダミアン様、どうなされますか?」
「とりあえずお前達はここの見張りだ。毒が漏れないよう注意しておいてくれ。とっさのことだったからあれが本物の死汚危神かどうか分からねぇ。最悪スティングをここから逃さなければそれでいい。頼んだぜ。」
「はっ! かしこまりました!」
闇ギルド連合の会長であり、アッカーマンの先代毒針であることが判明したスティング。カースが欲しがっていた情報を伝えるべくダミアンは彼の元へと急いでいる。
「おい! カース! いるんだろ!」
「ちょっと、ダミアン様! カースは寝てますのよ。静かにしてください!」
「おおアレックスちゃんか。カースを叩き起こしてくれや。緊急だ。カースの仇が現れたからよぉ!」
「カースの仇……分かりました……」
それからアレクサンドリーネはカースを揺すったり、顔を叩いたり。しかしそれでもカースは目覚めなかった。最終的に高級ポーションを口移しすることで、ようやくカースは目を覚ました。
「う、アレク……ここは……」
医務室か……気を失っていたようだな。
「カース、具合はどう? 傷は全部治ってるわ。でも、どこか痛かったりしない?」
アレク、私に付いててくれたのか。ありがとう。コーちゃんもか。
「ピュイピュイ」
「ああ、いや、どこも痛くないね。それより、僕は……負けた?」
「ええ……スティード君が勝ったわ……あ! それよりもダミアン様が!」
ん? ダミアン?
「よおカース。やっと起きたかよ。おもしれぇことになってんぜ。スティングだけどよぉ……」
なんだと!? あのスティング選手が闇ギルド連合の会長である上に先々代毒針、つまりクソ針だと!?
「行くぜ……案内してくれよ。」
私を狙っているって話だが、もう時間がないんだろう。少しでも話を聞き出してやる。
「おお、こっちだ。死汚危神を持ってやがったからよぉ。気を付けろよ?」
ふん、本物かどうかは怪しいがな。
それにしても、ずっと探していたクソ針がこの大会に参加していたとは。明日をも知れぬ死に損ないじゃなかったのか。魔蠍のアンタレスにしてもこいつにしても、大会に参加するのが好きなんだろうか……たぶん、確実にターゲットが現れるからだろうな。特に私なんか領都にいたりクタナツにいたり、魔境にいたりするもんな。
クソ針、スティングか……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます