第809話 レッドドラゴンとブルードラゴン
『ワイバーンなんてドラゴンに比べたら子猫にすぎない』
これはフェルナンド先生の言葉だ。本物のドラゴンを目の当たりにすると、そのことを実感してしまう。いつかの虫歯ドラゴン、もう老齢だったためか……あいつとはプレッシャーが桁違いだ。
「グオォォォオオオーーーーオォ!」
「グァゴオオオオォォォオォーー!」
雷よりもうるさい。威嚇しているのか、それとも存在をアピールしているのか。どちらにしても……やるしかない。
この二匹のドラゴンを相手に……
『徹甲連弾』
空を飛ぶドラゴンの目の前に立ちはだかり魔法を放つ。後ろには領都、ここでブレスなど撃たれてしまったら簡単に壊滅してしまう。可能な限り早く仕留めないと……
「グオォー!」
「グァゴォ!」
クソが! 動きが速い! しかも徹甲連弾の着弾点がズレる! こいつらヒュドラほどではなくとも魔法を無効にできるのか?
『吹雪ける氷嵐』
ダメだ……いささかも動きが鈍ることがない。
『業火球』
クッソぉ! 一瞬で鉄でも蒸発するほどの熱量だぞ!? それが胴体に命中したのに全然効いてない! でも幸いなことに奴らは私を標的と定めたようで、私の後を追ってくる。少しでも領都から離してやる。
「グオォー!」
「グァゴォ!」
チッ、ついにブレスを撃ってきやがった……領都に当たらないんなら構うことはない。気にせず避ける。
「グオォー!」
「グァゴォ!」
クソ、広範囲にブレスかよ! ドラゴンって知恵もまわるのかよ!
『徹甲連弾』
多少ズレても構うかよ。めちゃくちゃに撃ち込んでやるよ。海上と違ってここなら鉄塊の魔法も多少は使いやすいしな。まずはどちらか一匹だけでも仕留めないと戦いにくくて仕方ない。死ぬまで撃ってやる。
「グオォガァア!」
「ギャバァアォ!」
チイッ! 派手にブレスを撃ちまくってやがる。ダメージないのかよ!
赤い方、仮にレッドドラゴンとするが、こいつは熱線を放ってくる。広範囲に撃った時には十秒ぐらい豪雨が止んでしまった。そんなことあるか? あれを収束して撃たれると私の自動防御も抜かれるかも知れない。
青い方、仮にブルードラゴンとするが、こいつは冷気を放ってくる。広範囲に撃った時には範囲内の豪雨が全て凍り刃と化してしまった。とてもただ冷たいだけとは思えない。あれを収束して撃たれたら自動防御ごと凍ってしまうかも知れない。
しかしドラゴンは口からしかブレスを放ってこない。私のように全身どこからでも魔法を撃てるわけではないのだ。よって私が空中にいる限り避けることは容易い。また牙や爪の前には自動防御も確実に切り裂かれてしまうだろうが、そんな物が当たる距離なんかまで近寄るはずがない。しかし時間がないのも事実。くそ、どうする……
一進一退の攻防に焦れたのか、ドラゴンは生意気にも二手に分かれて私を追い始めた。バカが!
私は最速で片方、レッドドラゴンの横っ腹に体当たり。もちろん奴にダメージは無し。しかし狙いは別だ。喰らえゼロ距離射撃!
『徹甲連弾』
「グオォォォオオオーーーー!」
横腹を貫かれ落下するレッドドラゴン。だがきっとまだ死んでない!
「ギャワワッギャワワッ」
しかし今はトドメを刺せない。私は間一髪その空間から逃げた。ブルードラゴンの大口が迫っていたからだ。トドメを刺そうと欲張っていたら美味しくいただかれてしまっただろう。警告ありがとうコーちゃん。
そしてドラゴンに肉迫して分かったことがある。やはり奴らは自分の周囲の魔力を無効にできるようだ。それが任意か自動なのかは分からない。分かるのは至近距離まで近付いた時、錬魔循環が著しくやりにくくなったことだ。まるで初めて循環阻害の首輪を付けた時のように。それでもゴリ押しで魔力をブン回し無理矢理魔法を使うことはできた。もしかしてヒュドラにもこの方法が使えたのだろうか。しかし、さすがに無茶をしすぎたようだ……頭が痛い。冬の朝、冷えたエンジンでいきなりロケスタかましたようなものだろうか。残り魔力は七割はあるが……
「グァゴォ!」
ん? ブルードラゴンが下にブレスを撃ったぞ? 何を? なっ!? こいつレッドドラゴンの傷口を凍らせて止血しやがった! そこまで知恵があるってのか!? くそっ、時間が……
「グオォー!」
下からも撃ってきやがった! 腹に穴を開けられてるクセに……これがドラゴンの生命力か……しかし、位置が悪かったな。これでも喰らいやがれ!
『業火球』
ブルードラゴンはスッと避けた。火球は狙撃ほどのスピードは出ないからな。相方がやられたんだ。多少は警戒してやがるな?
しかし業火球は避けた先に居るレッドドラゴンに直撃。そりゃあ避けられまい。そして普段なら全く効かない火球だとしても今なら? そう、先程ブルードラゴンが凍らせた傷口が解ける、だけでなくそのまま内部まで焼き尽くす。内臓を焼かれるのは初体験だろ?
「グァゴォ!」
再び傷口を凍らせようと下に顔を向けるブルードラゴン。バカが! 隙ありだ!
『徹甲連弾』「グァゴォ!」
奴は一瞬遅れてこちらに向き直り撃ち合いになった! クソが! なんてブレスだ! 自動防御がどんどん削られる! しかし奴もキツいはずだ。鉄の塊が高速で頭部を直撃しているのだから。
『連弾』
徹甲弾を連射しつつライフル弾で目を狙う! よし、閉じた! この隙に場所移動、奴の真上を取り魔力庫展開! とっておきの攻撃だ! 死ねや!
『メテオストライク』
「グァゴオオオオォォォオォーー!」
それはブルードラゴンの胴体を突き抜け、地上で横たわるレッドドラゴンを直撃。赤い方は今度こそ即死。青い方は力なく落下していくが……まだだ!
『電磁徹甲弾』
超加速された徹甲弾はブルードラゴンの脳天を貫き、大地を爆発させた。
ついに、ついに私はドラゴンに勝ったのだ。フェルナンド先生ですら勝てなかったドラゴンに! 惜しむらくはこいつらのサイズだ。どちらも全長三十メイル程度。国王のドラゴンや虫歯ドラゴンよりかなり小さいのだ。つまり先生と引き分けたドラゴンはもっと強いのだろう。あれも赤だったよな……
いや、そんなことは後だ。急いでドラゴンを収納してダミアンの元へ行かないと。
「モーガン様! 後を頼みます! 僕は辺境伯邸に行きます! もしドラゴン以上にヤバい奴が来たらすぐ知らせてください!」
「あい分かった。カース殿、貴殿の勇戦をワシは生涯忘れぬ。」
「モーガン様……」
いつも小僧小僧って言ってたクセに……いきなりそれかよ……嬉しいじゃないか……
ブルードラゴンだけ収納できた。レッドドラゴンはバラバラになり過ぎていて今は無理だ。よし、行くぜ。無事でいろよダミアン!
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