第665話 宴会と代官
そんな宴会の真っ只中。私に声をかけてきた人がいる。
「カース。やはり蘇ったわね。」
「お義母さん……ご無沙汰しております。」
アレクママだ。
「クタナツにいるのに全然顔を出してくれないわね。」
「すいません。何となく気恥ずかしくて。魔力は復活しました。ありがとうございます。」
「どうせそんなことだろうと思ったわ。うちの主人は半信半疑だったけど。」
「半分は信じていただいてたんですね。ありがとうございます。幸運でした。」
「じゃあ楽しませてもらうわね。」
「はい! ありがとうございました!」
アレクママがこんな宴会に顔を出すなんて珍しい。アレクパパは見当たらない。うちのパパもいないようだ。参加しないなんてもったいないことを。
それにしても私が言うのもおかしいが、キアラは何を考えてるんだ? アスピドケロンを狙いにタティーシャ村に行ったのか、たまたまアスピドケロンがいたから狩ったのか。変な子だなぁ。
「カー兄美味しいねー!」
「ああ、美味しいな。キアラは凄いなぁ。」
「うん! だって王様ってみんなにお腹いっぱい食べさせないといけないんだよー!」
これは……キアラの帝王学?
「そっか。偉いぞ。その調子で頑張るんだぞ。」
「うん! 私が王様になったらカー兄は宰相だからねー!」
「うんうん。そうなるといいな。よーし頑張るぞー!」
「おー!」
キアラは一体……何を考えているんだ?
「カース君。ちょっといいか。」
「あっ、お代官様。どうされました?」
「大したことではない。少し君と話してみたかったのだ。滅多にない機会だからな。」
「押忍。何でも聞いてください。」
「質問をしたいわけではない。会話をしたいのだ。君は
「ざっくりしてますね……カリスマを感じました。一挙手一投足で臣民を心酔させる最高の男ではないでしょうか。」
「ふふ、そう思うか。思うよな。そうだ。陛下は素晴らしいお方なんだ。国王という地位にありながら驕ることなく臣民達のことを考え行動されている。支配者とはかくあるべきなのだ。そう思うだろう?」
代官のやつ、酔ってやがる……
「思います! 陛下ってかっこいいですよね! ドラゴンに乗って登場したり! 広い会場中に雷をすっごい落としたり!」
「ふふふ、そうよな。陛下は素晴らしいお方だ。あのドラゴン、ヘルムートは威武堂々としてまさに陛下に相応しい。カース君、君の召喚獣は狼だそうだな。私も狼だ。陛下のような龍がよかったのだが、無理なものは無理だな。」
はー、国王のドラゴンはヘルムートって言うのか。そして代官の召喚獣は狼なのか。言われてみればあんまり他人の召喚獣なんて見たことがなかったな。それよりうちのカムイが召喚獣ってバレてる。まあいいけど。
「陛下はすごいですよね! なんとフェルナンド先生の剣を折ったんですよ!」
たぶんあれ安物だよな。
「なんと! 剣鬼殿の剣を折られたのか! さすがは陛下!」
そうとう酔ってるな? 代官は堅物って話じゃなかったのか?
「それよりお代官様の召喚獣を見せて下さいよー。狼なんですよね?」
「うむ。見たいか。ならば見せよう。」
おっ、代官が魔力を練ってる。
『ゴクジューア クニンユー イショーブツ ガーヤクザー イヒーセッチ ボンノーウ ショーゲーン スイフケーン 天と地の遍く存在よ 我は求め訴えるなり レオポルドン・ド・アジャーニの名において願い奉る 出でよ召喚されし魔の物よ』
「ウオォォーン!」
おお、青い狼だ。
「どうだ、可愛らしいだろう。ブレイア狼のハズラットだ。」
「かわいいですね! ハズラットちゃんですか。」
全長一メイルもない。青毛の狼だ。優しい目をしてるな。
「ピュイピュイ」
うおっコーちゃん! どこから現れたんだ。さっきまで大酒くらってたくせに。
コーちゃんを見たハズラットは『伏せ』をしている。まさかの上下関係!?
「どうやら狼の世界ではフェンリル狼は聖域らしい。君達に染み付いたフェンリル狼の匂いがハズラットを萎縮させているようだ。」
なるほど。そんなものか。今日はカムイはいないってのに。それにしてもカムイよりだいぶ小さいな。うりうり、かわいいやつめ。「カウカウ」
「おっと、そろそろ魔力が限界だ。」
早いな。いや、普通はこんなものか。それにしてもスープが美味い。
それからオウタニッサさんやマルセルの話もした。代官とも遠い親戚みたいなものになってしまったか。
それから代官は側近らしい人に連れられて、どこかに行ってしまった。
ところで、クタナツの支配者は代官。
ナンバーツーは騎士長。常識だ。
ならば、ナンバースリーは誰なのか? 気になるなー。
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