第536話 二回戦終了
二回戦、試合数は少ないが一試合に時間がかかるため結構待った。すると、対戦相手がまさかあの選手とは……
『いよいよ二回戦も最後の試合となりました! 一人目はァー! マルセル・ド・アジャーニ選手! 昨日の大ダメージにも負けず今日も参加! ここまで勝ち上がってきたぁー! 汚名を挽回するのか返上するのかどっちだぁー!
二人目はァー! カース・ド・マーティン選手! 昨日の決勝では壮絶な戦いの末準優勝! 今日は全試合開始位置から動かないという余裕っぷり! ぜひギャフンと言わせて欲しぃーい!』
『装備について物言いはありますか?』
「ありません。」
「ありません。」
マルセル選手の装備は昨日も見た金属鎧か。どのぐらいの強度があるのか気になるな。
『では、決勝トーナメント二回戦、第四試合を始めます! 双方構え!』
『始め!』
『狙撃』
腹部に当ててみた。軽く揺らぎはしたが、ダメージはなさそうだ。『徹甲弾』
さすがに吹っ飛んだが、ギリギリ場外に落ちずに持ち堪えた。風操を使って凌いだようだ。やるな。
『何ですか今の攻撃は! 開始直後! 立て続けに二連発! マルセル選手早くも瀬戸際だぁ!』
『鉄塊、風操、金操など何種類かの魔法を合わせて使っておる。さすがカース選手じゃ。しかも、溜めもなく連発するとはの。』
『私としてはカース選手の首元が気になるのだが……』
「ぐはっ、さすがにやるね……痛いじゃないか……」『風斬』
『水壁』『水球』
「くうっ『氷壁』っなっ!」
『おおーっと! マルセル選手! カース選手の水球を防いだのに吹っ飛んだ!? これは一体? 解説のお二方?』
『すまんな。あれは言えぬ。カース選手のオリジナルか、さもなくばエリザベスにでも教わったのであろう。』
『防御が無意味となる魔法か……恐ろしい魔法を使うものだ。』
『ド腐れクソおん……いや何でもありません。さあマルセル選手は大丈夫なのか!?』
「せめて、君の実力の一端でも……」『舞い踊る砂塵』
ぬおっ、これは珍しい。砂嵐で広範囲に渡り視界を奪いつつ、耳・鼻・口も塞いでしまう恐ろしい魔法だ。ただ防ぐだけでは芸がない、よし。『吹き荒れる暴風』
ただ風操で返すのも悪い気がするので同じ上級魔法を使ってみた。彼の砂嵐を包み込むように。
『ぬぁっ! なんとぉ! あれだけの舞い踊る砂塵が瞬く間に抑え込まれていくぅ! 行き先は!? マルセル選手危なぁーい!』
ついでだから『狙撃』
『場外! 勝負あり! ちぃっ、カース選手の勝利です!』
『さすがワシの孫じゃ。』
『結局開始位置から動いてないな。文句の付けようがない。見事だ。』
『おっとカース選手、場外へ歩み寄っているが?』
アジャーニ家とは仲良くしておいた方がいいからな。挨拶ぐらいしておこう。
「やあマルセルさん。いい勝負でしたね。」
「いや、手も足も出なかった。完敗だ。最初の二発もかなり効いている。」
最後は細長い方の弾丸で狙撃をしたのだが、鎧にはヒビも入っていない。悔しいな。
それはともかく握手だ。これこそ青春。
『な、なんと! 傲岸不遜かと思われたカース選手! マルセル選手に握手を求めている! 君が昨日やらかしたことなど僕は気にしてないよと言わんばかりだぁー!』
『フォホホホ、カースはのぉそれはそれは心優しい子なんじゃあ。』
『昨日の一件にマルセル選手は関与してないことも一因かも知れんがな。あれは敵には容赦しないタイプだぞ。』
「カース選手……」
私が差し出した手を彼は握った。剣術にも励んでいる手をしている。昨日もしスティード君がブチ切れなかったらどんな勝負になっていたのだろうか。
「勝負も終わったことだしカースと呼んでくださいよ。」
「ああ、ありがとう。こちらもマルセルと呼んでくれ。君の優勝を願っている。」
『美しい光景です! 先ほどまで戦っていた両者が握手を交わしています! 二回戦の締めくくりに相応しい試合でした! 皆さん、盛大な拍手をお願いいたします!』
これは嬉しいな。どうも私は司会者に嫌われることが多いからな。ベリンダさんはどうなんだ? やはり姉上のことも知っているようだし、ド腐れクソ女とか言ってたな。嫌われ過ぎだろ。
まあいいや。次はいよいよ準決勝。
私の相手は三人のうち誰なんだ!?
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