第496話

久々にマーリンが作ってくれた昼食を堪能した私達は領都を散策する。辺境伯家に立ち寄ってダミアンとセバスティアーノさんへのお土産を渡したり、マイコレイジ商会に顔を出したりと。


すると、注文していたカムイ用の小屋が出来ていた。カムイの奴、喜ぶかな。それから執事ゴーレム一体とメイドゴーレム三体も用意されていた。

やはり執事と言えばロマンスグレーな渋いおじ様でなければならない。メイドと言えば気品あるケモ耳お姉様でなければならない。せっかく注文できるのだからやってしまった。猫耳、犬耳、狐耳を持っている。顔が無表情なためそれはそれは不気味だ。


「ではマーティン様、ゆっくりと魔力を込めていただけますでしょうか」


この手の魔道具に魔力を込めるのは慣れたものだ。もちろん込め過ぎて壊すなんてことはない。


「さすがに素晴らしい魔力をお持ちのようで……」


『名前を登録してください』


ぬおっ、執事ゴーレムが喋った!


「マーティン様が名付けてあげて下さい」


「うーん、じゃあバトラーで。」


『登録しました。私はバトラーです』


この調子でメイドゴーレム三体にも名前を付けた。猫耳のアン、犬耳のドゥ、狐耳のトロワだ。尻尾はついていない。たぶん耳の触り心地もよくなさそうだ。見て楽しめれば十分だろう。


「ではこれにて初期設定は終了です。これからしっかり教えてあげて下さい」


「ありがとうございました番頭さん。また何かありましたらお願いしますね。」


代金を払いゴーレムを連れて店を出る。魔力庫に入れることはできるが、汚銀や魔剣と同じようなものなので入れたくはないな。




そして再び辺境伯家。

今度はセバスティアーノさんを呼んでもらう。


「カース様、アレクサンドリーネ様、先ほどは過分なお土産をありがとうございました。そちらが例のゴーレムですね。」


「そうです。執事がバトラー、メイドがアン、ドゥ、トロワです。」


我ながら安直なネーミングだ。しかし、分かりやすいのが一番だ。


「かしこまりました。厳しく育てると致しましょう。こき使います。」


「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

「お願いしますね。」

「ピュイピュイ」


これで数年後には有能な執事とメイドになるだろう。楽しみだ。それまでは料理だけが問題か……




最後にギルドだ。コーちゃんのねぐら用に依頼を出した汚銀が届いているか確認するのだ。


届いていた! これで全て揃った! 安心して楽園に行けるぞ。後はカムイへのお土産をたっぷり用意しておかねば。いや、道中で寄り道をすればいいか。




今夜からはアレクと二人だけ、と思っていたら……


「ようカース、王都に行ってたんだって? いい酒ありがとよ!」


ダミアンが来た。さっき寄った時は居なかったくせに。


「お前のことだ、どうせ王都でも暴れたんだろ? 聞かせろよ?」


隠すほどのことではないので、話してやった。アレクサンドル家上屋敷のこと、ニコニコ商会のこと。


「ギャハハハ! 賞金掛けられちまったのかよ! 間抜けだよなー!」


「うるせーな。それより偽勇者の捜査はきっちりやってんだろうな?」


「あ? やってんじゃねーのか? どこに逃げてんだろうなー?」


やっぱりスパラッシュさんがいないとだめか。どこかに二代目スパラッシュさんはいないのか?


結局今夜は楽しい夕食となった。ダミアンはお土産の酒をコーちゃんと仲良く飲んでいる。美味そうに飲みやがって……コーちゃんが喜んでいるからいいか。

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