第428話、領都一子供武闘会 昼休み〜三回戦
スティード君かセルジュ君を探してみる。見当たらない。
「おいおい王都かぶれの下級貴族がいるぜ?」
「鎧も買えない貧乏人かな!? なら参加しなくて正解だ!」
「精一杯オシャレしてるのか?」
「ギャハハハ! 変な蛇は連れてないのかい!」
こいつらか。見覚えがある。辺境伯のパーティーで絡んできた奴らだ。ドニデニスから何も聞いてないのか? まあ無視だな。何食べようか。
「おいおーい。何とか言えよ?」
「ビビってるのは分かるけどよぉ、ごめんなさいぐらい言えるんじゃねぇ?」
「いくら鎧も買えない貧乏人でも仲良くしてあげるぜ。」
「ギャハハハ! 君達は優しいねぇ!」
やはり屋台なら串焼き肉だな。三本買ってみた。旨い! 相変わらず何の肉か分からないが旨い! このタレはどうやって作ってるんだ?
「おいおい何平気なふりしてんだ? そんなモン食べててもバレバレだぜ?」
「それがお昼ご飯か? 貧乏人は辛いなぁ!」
「そんなにビビらなくてもいいじゃん? 俺らはたぶん同級生だろ? 君次第で仲良くしてやるぜ?」
「ギャハハハ! 嫌だよ、こんな下級貴族となんてさ!」
さすがにしつこいな。誰か助けてくれないかな。いくら何でも絡まれただけで魔法を使う気はない。串焼き肉は美味しかった。次は何にしよう。
「おい待てよ!」
奴らの一人に肩を掴まれた、よし!『麻痺』
連帯責任だ、ついでにこいつらも『麻痺』
ふぅ、すっきりした。やはり魔力の低い雑魚だったか。どうせこいつら貴族学校でも下位の方だろう。そこで夕方まで突っ立ってろ。
「クライド! クライドどうしたの!?」
「ラリーガ! アンタ何やってんの!? 大丈夫なの!?」
あの女の子達もどこかで見たぞ? まあいいや、好きにするがいいさ。絡まれないうちに退散退散。
ところでこれ系の魔法って一度くらってしまったらどうやって回復させるんだ? 解呪とか解毒かな?
結局食べ歩きはできたがセルジュ君やスティード君は見つからなかった。人が多過ぎなんだよ。
「三回戦を始めます。ペンドラム選手、ネクタール選手、マニーリフ選手、テオテア選手は武舞台に集合してください。」
ここからは二試合ずつ行われるため、ゆっくり見物できそうだ。第一試合は、ペンドラム選手対ネクタール選手か。ペンドラム選手の方は魔法学校の生徒かな? 制服を着ている。相手のネクタール選手は鎧を装備している。
勝負は拮抗している。魔力ではペンドラム選手の方が上だがネクタール選手の鎧は中々の上物なようで魔法があまり効いてないようだ。これは長引くか?
その間に隣ではテオテア選手が勝っていた。どうやったのか全然見てなかったな、残念。
「いい加減くらえ!」『水球乱れ撃ち』
「効かんな! このミスリル合金の鎧の前にはお前の魔法など小雨のようなもの!」
『解説のダミアン様、ネクタール選手の鎧ですが、あれはどういったものですか?』
『あれはな、ミスリルにマーキュリー銀を融かしこんだ合金だ。純ミスリルに比べ幾分か重量が増しているからその場で踏ん張るには最適だな。魔石もふんだんに使って魔法防御も上げているのだろう。買えば金貨四百枚以上するな。』
『ありがとうございます! ネクタール選手はあの若さでどこからそんなお金が! きっとボンボンですね!』
おお、三回戦からは実況と解説が入るのか。これはありがたい。それにしてもダミアンの野郎、えらく詳しいな。やはり腐っても英雄の血筋は伊達ではないのか。
「どうやら魔力切れのようだな。お前はよくやった。だが私の鎧は無敵! 観念するがいい!」『水球』
『魔力が切れて防御できないところに水球が直撃です! 魔法学校のホープ、ペンドラム選手惜しくも敗退! 第一試合の勝者はネクタール選手です!』
「三回戦第六試合、アイリーン選手、カース選手は武舞台に上がってください。」
お、呼ばれた。しかしアイリーンちゃんと対戦するとは……
『それでは賭けを締め切ります。双方構え!
始め!』
『水球』
『水球』
アイリーンちゃんと水球の撃ち合いになった。威力は互角、そう見せておいて風球がアイリーンちゃんを後ろから襲う!
どこかの貴族はこれで終わったが、さすがアイリーンちゃん! ふいに食らったにも関わらず、柔らかな身のこなしでその場で前方に一回転。空中で衝撃を逃して見事に着地を決めた。あの狭い円の中でよくあんなことが。
でもそんなことしたら魔法を使う暇がないよね。
『水球』『水球』(風球)(風球)
ギリギリで水球には対応できたようだが、左右から襲う見えない風球はさすがに無理だったようだ。円外に弾き飛ばされた。
『勝者、カース選手!』
『今の対戦はいかがでしたか? 傍目にはあっさり終わったようですが、やはり女の子には厳しいのでしょうか?』
『違うな。序盤、前方に一回転しただろ? あれは後ろからの攻撃を受け流したからだ。アイリーン選手じゃなければあれで終わってた。ここまで食い下がったことを褒めるべきだろう。』
『なるほど、つまりカース選手はそれほどの相手だと?』
『それは分からんな。次の試合に期待させてもらおうか。』
「カース君、さっきはありがとう。勉強させてもらった。」
「こちらこそ、あんな狭い所ですごい体捌きだったね。」
「あれは風球なのか?」
「そうだよ。姉上直伝『追尾風球』だよ。狙わなくても当たるからね。」
私の中ではホーミング風球だけどね。
「追尾風球……カース君のお兄様もお姉様もかなりの凄腕なんだな。手の内を教えてくれてありがとう。また挑戦させてもらう。」
「いいよ。いつでもとは言わないけど。」
「ね、ねぇボニー……あのカス貴族、出場してるじゃない!? しかもアイリーンに勝ったわよ!?」
「え、ええ……あんなにあっさり……」
「アイリーンが油断してたとか?」
「あの子が勝負で油断とか手加減するはずないでしょ!」
「しかもあのカス貴族の格好って……魔法対戦を舐めてるのかしら?」
「でも勝っちゃったじゃない! うちの馬鹿達は出場すらしてないのに……」
「クライドは馬鹿じゃないわ! 慎重なだけよ!」
「そ、そうね……ラリーガは馬鹿だけど」
「な、何よ! ラリーガだって向こう見ずなだけで馬鹿なんかじゃ……」
「それより! うちの、ねぇ?」
「そ、そうよ! あいつら馬鹿ばっかりだけど仲間じゃない!」
「クライドは馬鹿じゃないわ!」
「そ、そうね。あんな奴らでも仲間かしら……」
「な、何よ! 私は別にラリーガのことなんて……」
「で、どうするの……?」
「どうするって?」
「クライド達の容体? もう治癒魔法使いの所に運び込んだし……」
「あのカス貴族のこと? 放っておけばいいんじゃない?」
「あっ! もしかしてラリーガ達はあのカスの対戦を見てないから?」
「そうよ。知らせなくていいのかしら?」
「ど、どうしよう?」
「教えても信じないでしょ?」
「もう放っておこうよ。私達は帰ればいいでしょ?」
「でもそしたらラリーガ達は……」
「知らないわよ。私は先に帰るわね。」
「普通に考えてあんなカス下級貴族なんかにアイリーンが負けるわけないわよね?」
「ま、まさか!? 何らかの不正が!?」
「あり得るわね……クタナツの奴ってかなり勝ちに拘るらしいし」
「じゃ、じゃあ告発しないと!」
「まずはアイリーンに詳しく聞いてみましょうよ!」
「そうね。それからよね……」
「クタナツのカス野郎の不正を暴くのよ!」
「よし! アイリーンが帰る前に探すのよ!」
彼女達の迷走はまだまだ終わりそうにない。
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