第427話、領都一子供武闘会 開会〜二回戦

コロシアム内部の武舞台、野球場で言えばグラウンドに参加者は集まった。ざっと三百人はいるし、観客は満員だ。そこに声がかかる。


『皆様、本日は領都一子供武闘会へようこそお越しくださいました。私は本日の実況、及び進行を担当いたしますマリアンヌでございます。普段はギルドの受付、自称領都の黒百合でございます。では主催者のダミアン・ド・フランティア様よりご挨拶申し上げます。』


何かの魔道具なのだろう。姿は見えないが、声はコロシアムに響いている。声からしてさぞかし綺麗な女性なのだろう。


『野郎ども、よく来たな。お前らが欲しいのは金か? 女か? それとも両方か? ここには領都民が五千人集まっている。お前達が欲に塗れた姿を晒すのも、スタイリッシュに勝つところを見せつけるのも自由だ。今後の人生と相談しながら勝ちに行け! 面白い勝負を期待している。』


拍手は起こらない。やはりこいつは人気ないのか。


『次に、アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドル様よりご挨拶です。』


アレクの名前が出ただけでもう歓声が起こってる。


『みなさんおはようございます。アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドルでございます。この度ダミアン様より賞品になって欲しいと要請を受け快諾したのですが、一言申し上げておきます。私は強い男が好きです。しかしどんな手を使ってでも勝つ、勝つためなら何をやってもいい、なんて無様な男は嫌いです。実力で誰も文句が言えないように勝ってください。もっとも実力差がありすぎて側からは何をやったのか分からない勝負もあるとは思いますが。みなさんの奮闘に期待しております。

あ、そうそう。現在私の手元には『辺境の一番亭 最高級部屋のペア宿泊券』があります。優勝者とこれを使うことになるかどうかは勝ち方次第です。』


拍手喝采! 人気ありすぎじゃないか!?

それにしてもいい挨拶だったなぁ。しかし姿は全然見えない! ミニスカ作戦は失敗か……


「一回戦の抽選はすでに終わっておりますので、呼ばれた方以外は控え室にお戻りになられて結構です。」


武舞台は全部で四つに分けられている。

相手を円から出したら勝ちなのでもっとたくさん用意できたのだろうが、見世物的な側面を考えるとそうもいかないのだろう。


第一試合が始まり、順々に第四試合まで始まる。と思ったらもう第一試合が終わっている。控え室に戻るまでもないか……ここで見ながら待っていよう。


流れ作業のように試合は進み一回戦終了。私はもちろん勝った。勝者は箱から数字を引き武舞台を降りる。これが次の抽選というわけか。

スティード君とアイリーンちゃんもきっと勝ったのだろう。見てないけど。


『皆様にお知らせいたします。先ほど一回戦全試合が終了いたしました。これより三十分間はベットタイムといたします。優勝者を予想して再度お賭けいただくことができます。一回戦で負けた選手に賭けた方はご愁傷様です。また賭けてくださいね。倍率は現場にてご確認ください。なお、二回戦より各対戦にも賭けることもできます。奮ってお賭けくださいませ。』


賭けていいのか。自分に賭けに行きたいが間に合いそうにない……

そうだ! マーリンに賭けてもらおう!


どこだ! どこにいる!?

あと十五分……




あっけなく時間切れとなり、出番を待つだけとなった。結局賭けられなかった。


『二回戦第一試合を始めます。ナルキッソス選手対マセーノ選手。では賭けを締め切ります。双方構え! 始め!』


それは戦略も何もなくただ魔法をぶつけ合っているだけのように見えた。水球と水球がぶつかり合い、ナルキッソス選手が押し切った。あっさりしたもんだ。一回戦もこんな感じで淡々と決着がついていたもんな。ならば私もしばらくはこれで行こう。




二回戦も終了。やはり楽勝だった。残りは百人もいないかな。あと何回戦あるのだろうか。


『二回戦全試合が終了いたしました。ここでベットタイム及び昼休憩といたします。優勝者を予想するのはこれが最後のチャンスとなります。お賭け忘れのないようにお願いいたします。』


現在の残り選手は八十名、午後から残り二十名になるまで同様の対戦を繰り返すらしい。


さて、昼だ。何を食べようか。やはり屋台へ行こう。スティード君達はどこだ?

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