第406話

アレクを学校に送り出した私は楽園に戻った。そこではコーちゃんと白い狼が楽しそうに遊んでおり、私を見つけると猛スピードで駆け寄ってきた。コーちゃんはもちろんかわいい。白い狼は……悔しいがかわいい。コーちゃんに負けない円らな瞳、しかも精悍な顔をしている。クロちゃんよりだいぶ大きい、子供ではないのか?


「ピュイピュイ!」

「ガウガウ!」


侵入者はなしか。きっちり警備してくれてたんだな。ならばご褒美だな。この前のオーガベアの内臓を全て放出してあげよう。全部食べていいんだよ。

それらに魔力をたっぷり込めて……さあ食べてくれ!


おお、二人とも美味しい美味しいとガッツいてくれている。やはり嬉しいものだな。


「ガウガウ」


え? 名前をつけろ?


それって……お前はただの狼じゃないのか? 精霊?


「ガウガウ」


あ、違うのね。コーちゃんは親しげに呼んでるんだから自分も呼べと。


白い狼……

白い戦士……

白い恋人……

青い山脈……

赤い流星……

黄色い魔神……

紫の高速……

黒の引鉄……


どうしよう……

うーん……


よし! お前の名前は『カムイ』だ!

貧しい生まれ、逆境にも負けず戦い続けた誇り高い男の名前をもらった! 時には逃げてもいい! この楽園の警備は全て任せたぞ!


「ガウガウ!」


ふふ、喜んでやがる。かわいい奴め。





さて、次なる建築は……さらに外周だ。


堀を掘った時に出てきた土砂は堀の外周に積み上げてある。ここに岩と土砂で小山を作ってやる! 山を越えたと思ったら、滑って堀まで一直線というわけだ。やはり堀には水が必要かな?


そんなわけでもう何度目か分からないが岩石砂漠に往復し、堀の外周に大岩をひたすら並べる日々。


これに五日を費やした。次はその岩に土砂を被せる作業だ。堀側に土砂が落ちないように注意しなければ。


結局、さらに五日かかり山の高さは二十メイルに達した。堀との高低差は三十メイルか。傾斜もきついし侵入者へ嫌がらせぐらいにはなるだろう。




この日は朝から大雨だった。こんな日は何もしたくない。しかし気付いてしまった。城壁内を全てフラットに作ってしまったため、排水ができない……

そもそも排水溝すらない……


私が乾かせば済む話だが、留守中に水が溜まってしまったらどうにもならない。排水ってどうしたらいいんだ? クタナツや領都では一体どうやってるんだ? 全く分からない……

基礎部分は池と化してしまっている。


よし! 分からないなら分からないなりに対策しよう! 基礎部分、つまり中心部を高くしてしまおう!


現在基礎部分は百メイル四方。そして地表から二メイルほど下がっている。まずはここを高くする。イメージは城だ! 天守閣にしてくれる!


でもそれは晴れてからだな。雨が鬱陶しいからさっさとクタナツに帰ろう。またまたコーちゃんはここに残るらしい……


どんな大雨の中だろうが雲の上に出てしまえばお構いなしだ。

まあ、雨雲の中に突っ込んだ時は何も見えなくて焦った。夜間に飛ぶ時以上に前後左右上下の感覚が分からなくなってしまったのだ。


これなら普通に雨の中を飛んだ方が早かったな……

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