第318話
「次はあっしでさぁ。」
スパラッシュさんまで来てくれたのか。かなり嬉しい。
「いきますぜ。」
痛っ! 手首に何か刺さってる!?
「油断してちゃあダメですぜ。」
痛いっ! 次々と手首や顔の周辺に何かが刺さっていく。この服がエビルパイソンロード製だと見破っているのか……
何かを投げているんだろうけど全然見えない!
しかも刺さった所がどんどん痛くなる。これが毒針スパラッシュの所以なのか?
せめて近付ければ……
目にさえ食らわなければいい。腕で目をガードしながら……
「迂闊に近寄ったら危ないですぜ。」
ぐっ、左足の大腿部を刺された! これは短剣か!?
熱っ! 痛いと言うより熱い! 叫んでしまいそうだっ。エビルパイソンロードの革なのにお構いなしに突き通されてしまった……
「ここまでですかい? 」
何てこった……手も足も出なかった……いいようにやられてしまった……
「スパラッシュさん、今日はわざわざありがとうございます。さあさあ中でたっぷり飲んで行ってくださいな。」
「奥様、いつもありがとうごせえやす。存分に飲ませていただきやす。」
「さあカース、次よ。いい所を見せてくれないと治してあげないわよ?」
「お、押忍……」
大腿部の傷が痛くなってきた。血も結構滴っている……他の何かが刺さった所も熱を持っているようだ。でも意識ははっきりしているぞ。次はだれだー!
「……久しぶりだな。」
「だれ……お客様! 剣鬼ダッサルさん!?」
「お前をぶちのめしたら金貨十枚だからよ。悪く思うなよ。」
げっ、真剣じゃないか! こんなの誰が連れて来たんだよ!
いや、私の虎徹のほうが余程凶器だ。真剣だろうがブチ折ってやる。
奴は上段から切り掛かってきた。私は左足を一歩後退させ、躱し様に虎徹を叩き込む。ゴツンと頭に当たり終了。対戦相手の落差が激しすぎる。なぜこんなに弱い奴が?
それよりもう終わりなのか?
「よく頑張ったわね。治してあげるわ。」
「あー母上ありがとう。これは何だったの?」
「うふふ。 誕生日のお祝いよ。カースのためにあれだけの人達が来てくれたのよ? 負けっぱなしだと可哀想だからサービス用の人もいるわね。」
はぁ、それは嬉しいけど……言ってくれたら勝てないまでも装備ぐらい整えたのに。
はっ! 違う! この考え方がだめなんだ! 世の中は常在戦場。お祝いだからと油断した私が間抜けなのだ。
ならば、魔力庫の活用をもう少し何とかできないだろうか? それこそ以前はできなかった、一瞬で着替えるやつ……
できそうな気はするんだがなー。
それからも対戦は続き、ギルドで見覚えはあるけどよく知らない人や受付のお姉さんまで色々だった。どうやらダッサルさん同様、私を倒したら金貨十枚らしかった。
スパラッシュさんを始め一流の人達がギルドの依頼でもないのに金貨十枚程度で動くはずがない。そんな人達がわざわざ来てくれて本当に嬉しい。少し泣きそうになった。
結局対戦成績は十二勝四敗。最初の四人が強過ぎだったのだ。そして私は母上に言われるがまま道場内に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます