第310話
次の日、先生と父上は早々に出かけて行った。何でも候補地をいくつか見回るらしい。道場ができるのは嬉しいが、先生が居なくなるのは少し寂しいな。
まだ二泊しかされてないのに、長い間うちに居たように感じるのだ。
学校にて。
「スティード君おはよ。昨日は楽しかったね。」
「おはよう。アッカーマン先生は凄かったけど、キアラちゃんの魔法も凄くなかった?」
「あー確かに。狼ごっこにあの魔法はやり過ぎだよね。そりゃ母上も怒るよね。」
「おはよー。狼ごっこしたの? 呼んでよー。」
「あーセルジュ君おはよ。昨日うちでね、無尽流のアッカーマン先生と狼ごっこをしてたらキアラが大きい魔法を使ってめちゃくちゃにしたんだよ。」
確かにあの展開はセルジュ君も呼ぶべきだったな。いや、待てよ?
「多分だけど、新しい道場ができたら入門者が殺到すると思うんだよね。そこで先生は全員に狼ごっこをやらせそうな気がする。楽しめそうじゃない?」
「面白そうだね。剣術はともかく狼ごっこには参加したいよ。」
面白くなりそうだ。セルジュ君はスティード君がいるから目立たないが、体育の成績は悪くない。基礎体力はバッチリある方だ。鍛錬遠足だって最後まで自力で歩き通したのだから。魔法だってそうだ。先日、学校生活最後の測定があったのだが……
私、アレク、セルジュ君の三人だけが一万だった。
スティード君は五千と少し、サンドラちゃんは六千と少しだったのだ。つまりセルジュ君は五人の中で学問・魔法・体育の合計点が上位に位置している。もしも私達四人がいなかったら総合で学年トップだったかも知れない。
そんなセルジュ君が道場に来るとは。面白くなりそうだ。
そして放課後。
今日はアレクとデートがてら靴と帽子、ベルトを受け取りに行く。
帽子とベルトはファトナトゥールだが、靴は靴屋だ。
まずは靴屋から行こう。
やはり一番街にある『チャウシュブローガ』だ。ここの店主はおじいさんなのだが、名人と言われているらしい。
「こんにちはー。」
「こんにちは。」
「いらっしゃい。できてるよ。」
「ありがとうございます。」
早速履いてみる。
おお、履きやすい! なのにピッタリとフィットしている!
今回頼んだのはウエスタンブーツに近いもので、普段私が履いているものに寄せてもらった。色は黒、トラウザーズとの相性もバッチリだ。靴底はお任せで魔物素材、丈夫で柔らかい骨がオススメらしい。それ以外はサウザンドミヅチだ。これで暑さや汗に悩まされることはない。素晴らしい靴ができた。
「最高です! ありがとうございました! またお願いいたします!」
「いい仕事をさせてもらったよ。いい素材が手に入ったらまたおいでね。」
次に私達はファトナトゥールへと顔を出す。
「こんにちはー。」
「こんにちは。」
「いらっしゃーい。できてるよー。」
どれどれ。早速かぶってみる。ベルトは収納しておく。
ボルサリーノの中折れ帽に近いデザインだ。黒地に灰色の飾り布が巻いてある。
「似合ってるわね。なんだか渋みが出てきたわよ。」
「えへへ、そう? ありがと。」
確かにこれはかっこいいな。今気付いたけど、これは夏には向いてないか……
サウザンドミヅチの革なので温度調節が効く。よって問題ないのは問題ないが……見た目が暑苦しいかな?
さあ、次はアレクだ。
真っ白で鍔が広いエレガントな帽子だ。高原の避暑地を歩くお嬢様がかぶっていそうだ。
「うわー、すごく似合うね。そのまんまだけどお嬢様って感じがするよ。当たり前だよね。」
「ふふ、ありがとう。いい感じね。」
これでコートと帽子がお揃いだ。デザインも色も全然違うが同じ革から作られた逸品だもんな。
それにしても皮なめしから始めてるのに一ヶ月かからないなんてどうなってるんだ? やはり魔法で解決しているのだろうか。すごいものだ。
ついでなので、手袋を発注しておいた。これで全身がサウザンドミヅチだ!
もちろんシャツや下着は除く。
手袋はアレクと全く同じになるよう注文しておいた。またまた楽しみだ。女の子を着飾らせるのがこんなに楽しいとは知らなかった。アレクも喜んでいるし、いいよね。
またサンドラちゃんにオッさんと言われるのだろうか。そうだよ私はオッさんだよ。
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