第275話
スパラッシュさんにお願いして、母上かマリーを城門まで連れて来てもらう。私は蛇を連れているので中に入れないからだ。
程なくして馬車がやって来た。
マリーに母上、そしてキアラにスパラッシュさん。全員で来てくれたようだ。
「スパラッシュさんが呼びに来たものだから焦ったじゃない。いつかのオディロンみたいにね。」
「はは、予定を切り上げて帰ってきちゃってさ。そ、それで母上に相談なんだけど……こいつ……フォーチュンスネイクを……飼いたいんだよ。……でも母上が蛇嫌いってことをさっき思い出して……だめ?」
「別にいいわよ? そもそもカースは勘違いしてるわ。私、蛇は嫌いだけど、フォーチュンスネイクは蛇じゃないわよ?」
「えっ!? そうなの!? スパラッシュさんも知ってたの?」
「へぇ、もちろんでさ。坊ちゃんは蛇っておっしゃってやしたが、別に訂正するほどのことじゃありやせんや。見た目は蛇でやすからね。」
「へぇー! そうなんだ! じゃあこいつは何の魔物なの?」
「一応は魔物だけど、ほぼ精霊なのよ。まあ詳しくは私も知らないわ。要は出会えたカースが幸運なのよ。」
「じゃあ飼っていい?」
精霊って何だ? 私の頭の中のしょぼい教科書にはもちろん載ってない。
だからあれだけたくさん食べても体型が変わってないのか?
「もちろんいいわよ。ペットと違って糞の始末をしなくていいし。手がかからなくていいわよ。餌にはカースの魔力を込めてあげなさいね。強くなるわよ。」
「うん! 母上ありがとう!」
ちなみにキアラは母上の後ろで泣きそうな顔をしている。見た目は蛇だもんな。
「ではカース坊ちゃん。名前を付けてあげてください。精霊との付き合いは名を付けることから始まります。決して蔑ろにすることのございませんように。」
マリーが威圧感を込めて忠告してくれる。きっと大事なことなんだ。
「うん。分かった。」
名前……どうしよう。虎徹はノリで決めたけど……
蛇、幸運、スネイク、フォーチュン、ミヅチ、オロチ、ノヅチ、ウロボロス、ケツァルコアトル、ヨルムンガンド、ガラガラ、ハブ……
いかん、大げさだな。もっと気軽に友達になるイメージで……『コーネリアス』
愛称コーちゃんだ!
おおすごい! コーちゃんが喜んでいるのが分かる! これが精霊との付き合いか!
「良い名付けをされたようです。今日という日をお忘れになりませんよう。」
何だか今日のマリーは厳しいぞ? 精霊に拘りがあるのか?
「戦乱の時代にコーネリアスって偉大な女王がいたらしいわ。精霊に雌雄はないけど良い名前ね。」
そうなのか。幸運の幸の読みを使いたいだけだったのに。神代文字で無理矢理に書くと『
「じゃあ手続きはどうしたらいい?」
「私が代官府に行ってきてあげる。カースはここで待ってなさい。」
「分かった。いつもありがとね。あと、スパラッシュさんもわざわざありがとう。これ今日のご祝儀。スパラッシュさんのお陰でコーちゃんに会えたってことで。」
「ありがたくいただきやす。またのご指名お待ちしておりやすぜ。マギトレントの件も来月中旬には何とかなりやさぁ。」
こうしてこの場には私とコーちゃんが残された。ペット扱いしていいものか分からないが、可愛いものは仕方ない。躾とか必要なんだろうか? 意思疎通ができてそうな気がするからダメなことは言えば聞いてくれるのでは?
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