第276話
コーちゃんと戯れながら待つこと三十分。
役人らしき人がやってきた。
「カース・ド・マーティン君ですかな? 私は代官府の役人、ギョーム・ド・バトン。魔物の愛玩契約の手続きに参りました。」
「お世話になります。カース・ド・マーティンです。よろしくお願いいたします。」
「ではこちらに。」
私が案内されたのは城門付近の詰所。もちろん始めて入った。
「まずはこちらの書類を読んでください。通常ならこちらは保護者の方が目を通すものですが、イザベル様からは全ての責任はカース君が負うと聞いております。いいですね?」
「問題ありません。承知しております。」
さすが母上は厳しいな。自分で飼うなら全責任は自分か。私が言い出したのだから当然だ。まずは読んでみよう。
内容は魔物を飼うことに際しての規約だった。うちのコーちゃんは魔物じゃない! 精霊だ! 何て言う気はない。素直に読もう。
大まかに言うと
・契約魔物がやったことの責任は飼い主が負う。
まあこれは当然だろう。
・契約魔物は飼い主の指示に従えなければならない。
躾のなってない危険なペットを飼ってはいけないってことか。
・契約魔物と飼い主は自衛しなければならない。
自分達の身は自分達だけで守れ、騎士団に頼るなってことかな。
・違反した飼い主には罰金、労役、奴隷役のいずれかが課される。
これも当然だな。気をつけよう。
「異存がなければ署名を。これは契約魔法でもあります。ご注意下さい。」
「ええ、承知しております。」
紙から魔力を感じるんだもんな。今日会ったばかりの不思議生物の行動の全責任を取るだなんて我ながら恐ろしいことを。全く……かわいいは罪だな。
署名をすると妙な魔力が体を走った。いつもは人にかけるばかりだったが、こんな感覚なんだな。
「では最後に『同命の首輪』の代金と登録料、手数料合わせて金貨百枚いただきます。」
「カード払いでお願いします。」
ギルドカードは便利なのだ。
ちなみに同命の首輪とは、飼い主の情報が特定できたり、契約魔物であることを示す物である。そして最大の特徴は飼い主が死んだら首輪をした魔物も死ぬようになっていることだ。これには二つの意味がある。
一つは飼い主の支配下でなくなった魔物が市民に迷惑を及ぼさないようにするため。
もう一つは、契約魔物を狙う者から飼い主を守るためである。契約魔物を奪うために飼い主を殺したら魔物まで死んでしまうのだ。
他にも理由がありそうだが、手続き次第で解放や譲渡はできるので、一先ず問題はないだろう。
家族が増えるぜ、やったぜコーちゃん。
家に帰る前にギルドに寄らなければいけない。今回の終了報告はスパラッシュさんがやるとしても、先週の馬鹿貴族四人組が来てるはずなのだ。
ギルドに到着。
いたいた。夜まで待たせるつもりだったが私が早く帰ってきてラッキーだったな。
お、意外にも四人だけだ。もっと大勢連れて来るかと思ったが。
私やリトルウィングに危害を加えない、迷惑をかけない、近付かない契約魔法をかける。そして絶対服従を解く。これで私も一安心だ。
さっさと帰ろう。
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