第261話
アンデッド狼を倒した頃にすれ違った同級生が恐らく最後だったのだろう。あの分だと日暮れまでにバランタウンに到着できるかも怪しいものだ。
もしかして先生方の予想以上に我々五年生は軟弱なのか? 一緒にされてはかなわない。私達だけでも頑張ろう。
それから一時間、誰も何も言わず、それでも倒れることなく歩いた。
だいぶ日は傾いている。多分四時半から五時ぐらいだろうか。
私達に追いつく者はいない、が……
ついにサンドラちゃんが倒れた。
「校長先生! 倒れた者を他の者が助けるのはアリですか!?」
「好きにしていいですよ。全ての行動は評定に影響します。」
くっ、私の評定などはどうでもいいが、助けたばかりにサンドラちゃんの評定が下がってしまったら……
「カース君、もしここが戦場だとしたら僕は倒れた仲間を放っておけない!」
さすがスティード君、その通りだ。
迷った私がバカだったのだ。
ならば……
「このリアカーに乗せよう。水も樽も捨てる! その前にみんな、できるだけこの水を汲んでおいて!」
全員が自分の水袋に補給をする。サンドラちゃんのマジックバッグは操作できなかったので無視だ。さらに残った水は全員で飲めるだけ飲んで、それでも余った分はサンドラちゃんを始めみんなにかけておく。少しでも冷やした方がいいだろう。
樽を下ろし、おが屑はそのままにしておく。樽は少しでも邪魔にならないよう遠くに蹴り転がしておこう。
さて、サンドラちゃんを乗せ再出発だ。リアカーを用意しておいて大正解だ。
「言い出したのは僕だから、それは僕が引くよ。」
スティード君はどこまでもまっすぐだ。
「じゃあお願い。適当に交代でやろう。」
「ごめん、僕は無理そうだよ。」
「いいんだよセルジュ君、できる者がやればいいんだから。アレクもきつかったらこれに座るんだよ。」
「え、ええ、ありがとう……」
残りどれぐらいだろう。もう一人ぐらいなら倒れても乗せられるが、二人倒れたらアウトだ……
「みんな! これを無理矢理食べて!」
干し肉だ。今食べたって効果なんかないだろうが、ここからは根性と気合いだ。無理にでもみんなで気合いを入れよう。
そうだ!
「みんな! 荷物もこれに乗せて! 少しでも歩きやすくしよう!」
これはいいアイデアだ。もっと早く気付けばよかった。
あとどれぐらいなのだろう。似たような石畳が続くだけなので現在地の見当がつかない。行きと同じペースだとしても後二時間ぐらい。むしろもっと遅いので三時間はかかるだろうか……
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