第244話
アレクの案内で魔法学校の寮を目指す。段々中心部に移動しているようだ。
「あそこね。」
アレクが指差したのはクタナツの学校とは桁違いの大きな建物だった。まるで石造りの城だ。どれが教室でどれが寮かまるで分からない。
幸い校門付近に受付のような所があるので聞いてみる。
「こんにちは。エリザベス・ド・マーティンに会いたいのですが、どうすればよいですか? 私は弟のカースと申します。」
「何か身分を証明するものはあるかな?」
やはり警備はしっかりされてるんだな。そもそもクタナツの学校には警備員なんていないもんな。
ギルドカードを手渡した。
「はい。いいですよ。女子寮はあの建物ね。そこでまた受付をしてね。」
なるほど。女子寮だから別に受付がいるのか。
到着、再度受付にて同様の挨拶をする。
「こんにちは。エリザベス・ド・マーティンに会いたいのですが、どうすればよいですか? 私は弟のカースと申します。」
「男性の立ち入りは禁止されておりますので、そちらの方に入っていただくかここで出てくるのをお待ちください。」
何だそれ……
「じゃあアレク、非常に行きにくいとは思うがお願いしていい?」
「もちろんいいわよ。ではエリザベスさんは何号室ですか?」
「……五〇一です……」
何だか妙な間があったな……
「じゃあ行ってくるわ。」
待つ間、気になったので聞いてみた。
「弟の私がそのうち訪れることは聞かれていたと思いますが、待つ以外に方法はないのですか? もし一人で来ていたら待ちぼうけだったかと思いますが?」
「……私は聞いておりません。他の者が聞いたのかも知れませんが。面会方法は各自工夫していただければよいかと。」
ふーん、そんなこと言うタイプか。
「工夫ですか……魔法学校ですから魔法を使ってもいいんですよね? 魔法使いらしくしろって意味ですよね?」
「……そうですね。ここでは強い者こそ優遇されますので……」
なるほど。さすが辺境。学生と言えど甘くないんだな。
「カース、お姉さんは居ないようね。」
「ありがとね。さて、ここの生徒は受付に無断で外出してもいいんですか? それとも不在をご存知だったのですか?」
「……休日の外出は自由ですから私どもは把握しておりません。」
「そうでしたか。失礼いたしました。では出直して来ます。」
私達は一旦校門前の受付まで戻り先程の人に伝言を託した。あのオバさんに伝えるよりマシだろう。
「ちなみに私も部屋の入り口下の隙間に伝言を残してきたわよ。」
「さすがだね! アレクは気がきくね! じゃあまた夕方ぐらいに出直すとしてお昼にしようか。行ってみたいお店とかある?」
「昔家族で行ったお店があるの。でも場所も名前も覚えてないのよ。分かるのは美味しかったことだけ。」
そりゃ無理だ。でもアレク一家なんだからきっといい店高い店に違いない。
「じゃあ高そうなお店に行ってみようよ。子供だけで入れるかは分かんないけど。」
「そうね。高級店が集まる所に行ってみましょうか。」
子供二人で高級店が連なるエリアを歩くのは奇異に映ったようで、少し注目を集めている。アレクは何もしなくても上級貴族オーラが出ているし、私は上級魔物素材の仕立て服。まあ目立つのか?
「当時食べたメニューは覚えてる?」
「さっぱりね。父上と母上、二人の兄上、そして弟。楽しかったことしか覚えてないわ。」
「じゃあ素直に美味しそうな店を選んでみようか。アレクがね。」
「そうね。直感で行きたい店に行こうかしら。」
その結果、アレクが選んだ店は『ベイルリパース』
高級そうだということしか分からない。前世なら怖くて入れなかっただろう。
「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」
子供だけでもいいのか?
「そうです。大丈夫ですか?」
「もちろんでございます。ご案内いたします。」
普通に席まで案内された。トイレ前などではない。 比較的いい席にだ。
「メニューでございます。お飲み物はこちらのページです。」
「ども。アレクは何飲む? 僕はやっぱりペイチサワーかな。」
「カースはペイチの実が好きよね。私はブラッディアイにしようかしら。」
ちなみにブラッディアイとは甘いトマトのようなジュースだ。
飲み物はすぐに運ばれてきた。
「お食事はいかがいたしますか?」
「本日のオススメコースを二人前で。」
考えるのが面倒になったので適当に頼んでみた。コース料理も楽しみだったりする。
前菜:トビクラーレバーのコンフィ
スープ:グリードオニオンのコンソメスープ
魚料理:ジェットシュリンプのバターソテー
口直し:メローネのシャーベット
肉料理:オークキングのトルネードステーキ
デザート:キラービーハニーのパンケーキ
締め:コーヒーとバターソイビーンズ
最高だった……
美味い……
満足だ。このまま昼寝したいぐらいだ。
しかしそうもいかないので帰るとしよう。さあいくらかな?
「お会計、金貨十六枚と銀貨三枚でございます。」
おお、さすが領都の高級店。高いな。材料からして凄そうだったもんな。
「ご馳走様。美味しかったですよ。」
「ご馳走様でした。私はパンケーキが気に入りました。」
もちろん私が払った。
「ご馳走様。お金は大丈夫なの? 困ってない?」
嬉しいことを言ってくれるじゃないか。
「全然大丈夫だよ。美味しかったよね。ここは違う?」
「うん……違うみたい。でも美味しかったわよね。さあ次はどこに行く? それともお昼寝?」
「あーそれがいい。どこかで横になりたいよね。」
「それならこっちよ。行くわよ。」
そう言ってアレクは私の手を取り歩き出した。
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