第41話 カース、入学2

髪をかき上げながら声をかけてきたのはアレックスだった。

「マーティン君だったわね。貴方さっき面白いことを言ってたわよね。狼ごっこ無敵とか。

あれは私に対する挑戦よね?受けて立つわ!」


できる女は行動が早い!

ふふふ、面白い!


「やあアレックスちゃん。挑戦じゃないよ。お誘いだよ。一緒に狼ごっこしようよ。」


少々馴れ馴れしいが子供なんだし別にいいだろう。

付かず離れずを決意したことなど忘れよう。


「むむっ! 初対面で愛称呼びとは…

さすが好色騎士アランのご子息ね。

しかもお誘いだなんて……」


マジか、父上ってそうなのか。

いや、若い頃の話かも知れない。


「公職? 騎士はみんな公職なんじゃないの?」


五歳に好色を理解できるわけないだろ。

まあ公職もなお理解できそうにないが。


「騎士はみんな好色ですって? そんなことあるわけないわ!

そんなの王都や西や南方の騎士だけよ!」


そうなのか。


「ふーん。そんなことより狼ごっこしないの? みんなでやらない?」


「み、みんなでやる、で、ですって!? 何て破廉恥な!」


だめだコイツ、五歳でどんな発想してんだよ?姉上に近いのか……


「はれんち? って何? 狼ごっこやらないの?」


「そ、そうよね! 狼ごっこの話よね!

もちろんやるわよ! 明日の放課後よ!

他に誰か呼んでもいいのよ!」


「うん、みんなでやろうね!」


やっぱり友達がいないのか。

セルジュ君達に声をかけておこう。


「じゃあアレックスちゃんまた明日ね。

僕のことはカースでいいよ。」


「ふふん、いい心がけですわ。カースと呼んであげます。ではまた明日、御機嫌よう。」




呼び捨てかよ!

確かにそう言ったけど!

今度こそ帰ろう。父上とマリーが待っている。


「父上お待たせー。ちょっと話し込んじゃった。」


「おおーもう友達ができたか。えらいぞ。

セルジュ君達以外なんだろう?」


「うん、アレクサンドリーネちゃんて言う女の子。アレクサンドル家だって。明日狼ごっこするの。」


「おっ、女の子とはやるじゃないか。

しかもアレクサンドル家ってことは騎士長の娘さんだろうな。」


「へー、アレックスちゃんも父上を知ってたよ。こうしょく騎士なんだって。父上は有名なんだね!」


「う、うむ、昔のアダ名だな。大昔のな。」

さすが俺の息子、初日で騎士長の娘と仲良くなるとは。まああのオッサンは堅物だからな。娘もどうせガチガチの貴族娘なんだろうな。

何にしてもカースが楽しく過ごせそうで安心だ。

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