第12話 新キャラ

 新キャラ。

 新しいキャラクター。


 それは、小説や漫画などのエンターテインメント作品においては欠かすことのできない極めて重要な存在だ。

 このキャラはどんな性格なのだろう。

 どう考えて、どう喜んで、どう怒って、どう哀しんで、どう笑って、どう喋って、どう動いて、どう絡んでーーーーそして、どういう風に物語を掻き回してくれるのだろうといった感じで、媒体を挟んだ向こう側の人間の胸をドキドキさせてくれる、躍らせてくれる、そんな存在。


 何でも、シリーズものの小説なんかでは、新キャラが登場する巻と既存のキャラのみの巻とでは、売り上げに倍以上もの差が出るという(大嘘)。


 まぁそんな2秒で考えついた法螺話はどうでもいいにしても、やはり創作物における新キャラというのは、如何ともしがたい魅力を備えたナイスでワンダフルな素晴らしい存在なのである。

 思わず意味が多分に重複してしまうくらいの存在なのである。


 とまぁ、そろそろ存在存在言い過ぎて、誤ってぞんざいと聞き違え、大事な大事なキャラクターをぞんざいに扱っていると勘違いされてしまいかねないので(ねぇよ)、ここらで少しずつ本題に入っていくとしよう。


 今まで僕の日常には、あの傲岸不遜、冷酷非道の毒舌女、僕の実の幼馴染であるところのゆきみや千歳ちとせが、誠に不本意ながら事実上のメインヒロインとして君臨なさっていたわけなのだけれど、ここで1つ、僕は疑問を挟みたい。


 果たして、人間2人のみの日常が、日常と呼べるものなのかどうかと。

 そんな疑問を挟みたい。


 いささか話が逸れるけれど、改まって言及するまでもなく、僕らは1人で生活しているわけじゃあない。独りで生きていても、1人では生きていない。

 家には母親がいて、父親がいて、兄弟姉妹がいて。

 学校には同級生がいて、先輩がいて、後輩がいて。

 会社には同僚がいて、上司がいて、部下がいる。


 何だか一人暮らしのフリーターからクレームを受けそうな物言いになってしまったけれど、別に物理的な空間ではなくとも、自分の心には常に他者が巣食うのが僕ら人間だ。

 巣食う彼らが、弱った心を救うなんてこともあるだろう。


 確か、人間は社会的動物である、という考え方を根本に持つのは、何の学問だったか。

 ここで言う『社会』というのは国だとか地域だとか、そんな大仰なものではなく、あくまでも個人間の関係、対人関係を指している。


 対人関係と言うからには、やはり人1人の人生は1人では完結せず、そこには歴然としたコミュニティが存在し、その中でお互いに影響を与え合っているのだ。


 そんな、人と人とが繋がった共同体を、コンピュータ並びにインターネットの普及が急速に進んでいる現代に則って、ここはネットワークとでも呼んでおこうか。


 ネットワーク。

 ネット。

 網。


 まぁ、僕は別に学術的な話をしたいわけではないし、何ならそんな話ができる程の頭脳も有してはいないので、ここで最初の疑問に戻るけれど、言うまでもなく、網は支点2つでは形成され得ない。それではただの線分だ。登場人物が2人と言わず、幾人も存在することで人間関係の網は形作られ、そして、物語が構築されていくのである。


 屁理屈と捉えられるのを承知で言うと、人間は『人』の『間』と書くのだから、やはりそこには漫然と幾重もの繋がりが生じるだろうことは、発想としては悪くはないのではないか。


 一体誰が、キャストが2人のみの日常ドラマを見たいと思うのだろう。

 誰だって、エンドロールで流れてくる名前が2名だったなら興醒めするに決まっている。

 それじゃあ3話どころか、1話切りされちまうぜ。


 だからまぁ、あくまで日常系を謳っているならば。

 さらに言えば、青春を謳っているならば。


 ここで1つ、僕らの日常に追加キャストをーーーー新キャラを加えるのも悪くない。


 と、言うわけで。

 大分迂遠な前置きになってしまった感は否めないけれど。


 新たなる命に、前回の花火よろしく、僕らの日常に華を添えてもらおうじゃあないかーーーーー




*****




 ーーーその日。

 僕は自分の部屋で、ある古典作品と向き合っていた。

 好き好んで歴史的仮名遣いの作品を読む崇高な趣味は僕にはないので、別に読書中というわけではない。

 いや、ある意味では読書中と言えなくもないだろうが、断じて娯楽として嗜んでいるわけじゃあない。


 僕は今、古典の勉強をしている最中なのである。

 真夏の勉強会という大枠のテーマを大胆に外れ、今までゲームをしたりオープンキャンパスに行ったり、ついには景品が欲しいという俗物的な理由で、本来忌むべき対象であるはずの夏祭りなんてイベントに参戦してしまったりと、かなり好き勝手に過ごしてきてしまったけれど、やっぱり学生にとって勉強というのは切っても切り離せない天敵だ。


 むしろこれまで遊んでいた分の遅れを取り戻さんがごとく、ここ数日は僕専任家庭教師の元、結構ハードな課題をこなしている。

 僕のために熱心になってくれているのは素直にありがたいと思うが、そもそも前回で言えば、あいつの方から遊びに誘ってきたんじゃなかったっけ……?

 それなのにそのツケを僕が払わされている現状は、何とも納得がいかないというか、理屈に合わないような気がするけれど、まぁ理屈が通じないのがあの悪魔ーーー失礼、あの千歳である。


 数日前にオープンキャンパスに行って以来、ぼんやりとではあるが受験も意識し始めた僕だけれど、今進めているのは夏休み明けのテスト勉強である。

 そもそもの話、勉強がからっきしだった僕がこうして意識転換して勉強し始めたのは直近のテストに向けてであったので、初志貫徹と言えば初志貫徹だ。


 まぁまぁ、全ての勉強は受験に通ず。

 これが無駄になることはあるまい。


 千歳大先生の指導の甲斐あって、今やそこそこの学力をつけることに成功しつつある僕なのだけれど、しかし今現在、古典作品を前にして、盛大に頭を抱えていた。


 「くそっ、やられた!」とでも言いそうな勢いで頭を抱えていた。


 と言っても、世界一の名探偵に出し抜けに正体を明かされたわけではもちろんなく、至って現実的な、そして高校生にとっては避けては通れない苦悩が原因である。


「ぜんっぜんわからん……」


 そう、単純明快にして一目瞭然、要するに古文の解読に苦戦していただけである。

 先程も言ったが、夏休み前に比べれば幾分学力が上がったのは嘘じゃない。じゃないのだが、しかしそれはあくまで社会やら数学やらの教科書並びに参考書が、現代日本語で書かれているものというところが大きい。


 はっきり言おう。僕にとって、古文は異言語なのである。

 いつ話したことだったかは忘れたけれど、そしてあまり自分で改まって言うのは恥ずかしくて烏滸がましいけれど、僕は国語の成績はそこそこ高水準を保っている。

 だがここに注釈を加えるとするならば、それは現国に限った話なのだ。


 現国。あるいは現代文。

 普段の読書の甲斐あって、論理的、物語的な長文を読むのを苦に感じることはないのだけれども、しかしこと古文に関して言えば話は別だ。

 古文では、国語分野の基本中の基本、読解を行う以前に、そもそも使われている古文単語や文法を理解していることが大前提となる。


 言ってしまえば、比較的柔軟な頭脳が要求される国語の分野において、暗記力が重要になってくるのだ。


 そこが世間一般で言う『バカ』の烙印を押されている僕には厳しい。


 さらに言えば、英語は完全に異文化の言語なので割り切って一から学ぶ意識が持てなくもないのだが、古文はなまじっか日本語だから余計にたちが悪い。


 あと昔の人、和歌詠み過ぎな。

 メッセージ性の強い歌とか最近のJ-POPかよ。

 詠まれたそれを読むこちらの苦労も読んで欲しいものだ。


 とまぁそんな感じで、古文は進学した新高校生が最初にぶち当たる、高い高い壁に違いない。

 ……いやまぁ、僕は一応2年生なんだけど。


 それからも何とか集中力を持続させようと僕は手近にあったラノベに目をーーーー間違えた、古典作品に目をやった。


 ……駄目だ、完全に切れた。

 

 難解な文字列に疲れ果てた僕は、ふと振り返り、勉強机の後方に備え付けられた本棚を見やる。

 そこには、色とりどりの背表紙をこちらに向けた、様々なレーベルのライトノベルが並べられている。


「古文がラノベだったらな……」


 そう弱々しく呟く僕だった。

 ラノベみたいにライトな文体なら、古文も読みやすいのに……。

 古典作品のラノベ進出はよ。ゐせかゐてんせゐ。

 いや、まぁでも、古典作品も注意深く読んでいくと、男主人公とヒロインが出会って、惹かれて、アプローチして、恋が成就するか否かといった風な恋愛話がかなり多く、はたまたその主人公が、読んでて思わず突っ込んでしまう程の結構なゲスさを披露するって話も聞いたことがある。


 人を愛する心は今も昔も変わらないと言えば聞こえは良いけれど、まぁそう考えると、遥か昔の物語と今現在のライトな物語の間には、大した差異はないのかもしれない。


 そんな益体も無いことをつらつらと考えていたその時だった。


 ガチャリと。

 唐突に、部屋のドアが開く音がした。

 それはまるで、長々と語ってしまったどうでもいい古文への愚痴を一刀両断せんとするような唐突さだった。


 ドアの方に目をやると、そこにはーーーー、



「ーーーあら、1人でもちゃんと勉強してるなんて偉いじゃない。槍から空が降ってくるのかしら」


「どういう現象だよーーーーーって、え?」


 果たして、そこにいたのは。

 いつも通りの、ありのままの千ノ宮千歳であった。


 ……………は?


「え……何でお前、ここにいんの?」


「? 別に、いつも通り部屋に来ただけなのだけれど」


 いやいやいやいや。

 そういうことじゃなくて。


「あのさ……一応今回の冒頭でさ、何というか、新キャラが出てくるような振りをしてたんだけど……」


 ばつが悪そうに、言いづらそうに、おずおずと申し上げる僕。

 すると千歳は、ふむと納得したように頷き、


「えぇ。だから今回は、これから出す予定の新キャラをどういうキャラにするのか、それを2人で話し合う回でしょう?」


 ……………………………は?



「は………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



 ……と、いうわけで。

 いや、あの、どういうわけなのか僕の方もさっぱり把握できていないのだけれど。


 今回はそんな、メッタメタな内容でお送りするみたいであるーーーーーー




*****




 冒頭演説が駄々滑りした僕は古典の勉強どころではなくなり、急いで部屋中央のテーブルについた。

 対する千歳は澄ました顔で、悠々と対面に座った。


「どういうことだよ。何がどうしてこんなアホな企画になったんだよ」


 未だに状況を飲み込めていない僕は、開口一番にそう言った。


「何でも、新キャラの造形がまだ固まっていないらしく、結構頭を悩ませているのだそうよ」


「誰がとはあえて訊かないが、なるほど」


「そこで、いっそのこと当事者である私たちに白羽の矢を立てて、決めてもらおうって魂胆らしいわ」


「ど畜生じゃねぇか」


 そんなことまでネタにするのかよ……誰がとは言わないけど。誰がとは言わないけどっ!


「つーか僕、入りで思いっきり新キャラ登場の振りをしちゃったんだけど。それがこれじゃあ、まるで僕が馬鹿みたいじゃないか」


「勝手に突っ走ったあなたが悪い」


「僕が語り部なのに……?」


「語るに落ちるとはこのことね」


「このことじゃねぇよ」


 用法間違えてるぞ、しっかりしてくれよ僕の先生。


 しかし、まさか新キャラ会議を僕たちが自らすることになろうとは……。


 タイトルは忘れたが、何かのラノベでメタネタは諸刃の剣だと言っていたのを思い出した。

 僕らの場合、諸刃どころか単純に刃を自分に向けて振りかぶっているくらいの阿呆さがあった。


 心配だ……僕らの日常が心配だ……。


 と、思っていたのだが。

 ここで僕は、ある事実に気がつく。

 いや、それは千歳に今回の企画を伝えられた地点で、いの一番に気がつくべきことだった。


「あのさ、これってつまり、どんなキャラを出すか僕たちが自由に決められるってことだよな?」


「えぇ、まぁそういうことになるわね」


 千歳の肯定を受け、僕はそっと机上のライトノベルに目を向けた。

 微かに、自分の口角が吊り上がるのを感じた。


 千歳はそんな僕の視線に気づいた様子はなく、


「さぁ、さっさと始めましょう。ただでさえ、何の伏線にもならないあなたのしょうもない古典不満のせいで尺が迫っているのだし」


「尺って言うな」


 あくまでも僕は比喩表現として言っていたのだが、やはりあれには僕のダラダラした独りごちを打ち切る意味合いも含まれていたのか。


「そろそろ紙幅が尽きてきたので、恒例の謝辞に移らなくてはならなくなるわ」


「小説のあとがきっぽく言うな」


 まぁ、紙幅に関係なく、お詫びの意味の謝辞は大いにあるのだけれど。

 タイトル詐欺もいいところだしな。


「では、始めていきましょうか」


 気を取り直して、千歳は話し始めた。


「まず基本的なところだけれど、日常系だから、まぁ無難に種族は人間でいいとして、問題は性別ね」


 『日常系だから』とか、普通に言っちゃうんだ。

 今回はメタ方向にフルスロットルとはいえ、一応そこら辺の線引きはしっかりしておいた方が良いのではなかろうか……。


「性別ねぇ……そりゃ、やっぱりもう1人のヒロイン登場ってのが王道だし、女の子で良いんじゃないか?」


「その場合、私がいるのだからそいつは即お役御免になってしまうけど、良いの?」


「良くねぇよ」


 というか、『そいつ』という言い方が引っかかったのはともかくとして、セオリー的に考えて、この場合、幼馴染ヒロインであるお前の方がどちらかと言うと危うい立場になる可能性大なのだが。


 幼馴染ヒロインが報われないエンドは、そっち方面に精通している人間にとっては暗黙の前提である。まぁ、とは言っても例外はあるのだろうけれど。


「いっそのこと新機軸として男キャラを出すのもありかもしれないわね」


「いや、それ別に新機軸じゃないし、それじゃあ少女漫画みたいになっちゃうだろ」


 これはごく個人的な意見なので無視してくれても全然構わないのだけれど、少女漫画によくある男:女=2:1、紅一点という構図のラブコメは、見ていてむず痒くなるところがある。

 何というか……どうしてもヒロインの心が軽く見えちゃうんだよな。

 ブレるというか、どっちつかずというか……。

 そこが少女漫画の魅力なのかもしれないが。


「別に良いじゃない、少女漫画風でも」


「嫌だよ。目が巨大になるし」


「何でメディアミックスされた側からの視点なのよ」


「大体、何で第12話目にして急に少女漫画風にシフトチェンジするんだよ、おかしいだろ」


「別におかしくないわよ。前回の『嬲る』の件は、その為の伏線だったのだから」


「そんな雑な伏線があるかっ!」


 つーか、それこそ前回のお前の発言に乗っかるなら、それは少女漫画じゃなくて淫女漫画だろ!

 ……自分で言っておきながら、何だよ淫女漫画って。聞いたことねぇよ。


「とにかく却下だ却下。新キャラは女の子な。その方が絵的にも僕的にも嬉しい」


「最後に本音が駄々漏れているわよ、この男の子が」


「『男の子』ってワードを悪口として使う奴を僕は初めて見たぞ」


 ともあれ、これで新キャラは人間の女の子という、至って簡素な設定は決定したわけだ。

 ていうか、そんな基本中の基本設定すら決まってなかったのかよ。頭を悩ませた挙句の苦肉の選択として僕らが話し合う、と先に千歳は言っていたけれど、ここまでくると、もはやふざけたネタとしてやっているんじゃないかと思ってしまう。


 思うが、まぁそれが僕らに課された義務であるならば仕方がない。

 上の命令には逆らえない。

 日本人の難儀な性として有名な言葉であるが、僕らにとっては本当に文字通りの言葉である。


 さてさて、理不尽な企画の元、これで種族と性別が決まった。順調と言えば順調。だがしかし、先程、千歳は性別が問題と言っていたけれど、僕にとっての真の問題はむしろこの後のことである。


 千歳が口を開いた。


「じゃあ、次に細部を詰めていくわね。まずはそうね……やっぱり、私たちとの続柄かしら。かず、何か案はあ」



「妹が欲しい」



 と。

 僕は、はっきりと、よく通る声で、間髪容れずに、だけども強烈なこぶしは入れて、拳で鼓舞してそう言った。


 千歳が「る?」と言い終わる前に、そう言った。

 相手の話が終わる前に発言するなんて、一応突っ込み役であるところの僕としてはいささか礼儀を欠いた行いかもしれないし、もっと言えば人間として円滑なコミュニケーションが取れているとは言えないかもしれないけれど、今の僕には、そんなことに配慮している心理的余裕はなかった。


「ーーーーー」


 数秒の沈黙。

 自身の発言を遮られ、加えて彼女からしてみればおよそ意味不明な、理解不能な、案ではなく願望を出し抜けに突きつけられた千歳は、口を『あ』の字に開けたまま固まっていた。


 だがしかし、そこは流石は千ノ宮千歳。

 切り替えの早さは天下一品である。


「たった今、新キャラが決まったわ。勇猛果敢な警察官なんてどうかしら」


「待て千歳。切り替えも展開も早すぎる」


 スマホを取り出し、目にも留まらぬ速さで110番をしようとした千歳を慌てて遮った。


 ダイヤルを押そうとする腕の力と、それを掴んで止めようとする手の力とが拮抗し合う。

 しかし、幾ら千歳といえども、女子は女子。

 単純な力比べで男子である僕に敵うはずもなく、今にも『1』をプッシュしようとしていた指を静かに離し、スマホを仕舞った。


 それから頭痛を抑えるかのようにこめかみに手を当てながら、


「急に何を言い出すかと思えば……一樹、今は別にあなたの性癖を暴露する場ではないのよ? そういうのは夜の自慰行為時にやってくれないかしら」


「花の女子高生が自慰行為とか言ってんじゃねぇよ。あとそもそも性癖を暴露しながら自分を慰める奴なんかいねぇよ」


 ある意味ではそう言えなくもないけれど。

 ていうか、まず大前提として、別に僕は己が性癖を暴露したわけじゃない。これは性癖ではなく、どちらかというと嗜好の類である。それ同じか。

 ……いや、別に嗜好でもないな。

 まずい、このままだと墓穴を掘りまくる未来しか見えないので、ここら辺で抑えておこう。

 嗜好どころか思考すらまともにできていない僕である。


 というか、性癖って言葉も、本来の意味からは幾らか外れた使われ方をしていたりもする。

 今では性癖と聞けば、性的嗜好や性的指向、つまりは〇〇フェチとか何とか言って、個人が性的興奮を覚える対象みたいな意味で、まぁこれは例外なく侮蔑的な意味合いを込めて使われているけれど、元々はもっと広義的で、単純に個人の性格を基にした、行動における癖を指す言葉だったーーーと、聞いたことがある。


 ただし注釈を加えておくと、だからといって女性に対して「君の性癖は?」なんて質問をすればまず間違いなくセクハラで訴えられるので、くれぐれも男性諸君は肝に命じて置くように。


「私もセクハラで訴えようかしら」


「いや、別に僕、お前の性癖は訊いてないじゃん」


「セクレタリー・ハラスメントで訴えようかしら」


「秘書いびりじゃねぇか」


 秘書だとか、それこそ日常を生きる僕らには全く無縁の言葉だろ。


「あら、私の母は弁護士、父は医者よ」


「後付けでお嬢様になるな」


 話を戻そう。

 今は新キャラについてだ。

 むしろそれ以外は話さなくていい。


「聞いてくれ千歳。僕は真面目に提案しているんだ。妹キャラを出すのはどうかと、まさに本物の議論よろしく真面目に提案しているんだ」


 いつになく真剣な面持ちでそう告げて、僕は再度、机の上に無造作に置かれたライトノベルを見やる。


 それは、古文の勉強に飽きた僕が思わず手に取っていた、今ハマっているラノベーーーータイトルは言わないが、主人公の妹がメインヒロインのラノベである。


 僕は、一般文芸と比較してライトノベルを別種扱いもとい蔑視扱いする風潮には断固として反対している立場の人間だけれど、残念なことに未だ世間ではそういう価値観が深く根ざしていることは否定できない。

 そんな話はひとまず置いておくとして、大方の人がライトノベルに限らず、ごく普通の一般文芸を購入する際に重要視するのはもちろんストーリーであることは疑いようがないし、それは僕も例外ではない。


 だがしかし、僕には、対象がライトノベルである場合には、もう1つ、思わず確認してしまう事柄があるーーーーー妹。


 主人公に妹がいるかーーーーさらに言えば、魅力的な妹キャラが出てくるかを、僕は見てしまう。


 流石に妹キャラがいないからといって、ストーリーが面白ければ購入を渋ったりはしないけれど、それでも可愛らしい妹キャラがいるだけで、作品への期待がさらに高まるのは間違いない。


 はっきり言おう。

 いち一樹は『妹萌え』の良き理解者である。


 これまでの人生で触れてきた作品でも、そのほとんどで妹キャラを好きになることが多かった。


 今回の企画に乗っかれば、そんな愛すべき妹を合法的に、何の違和感もなく、何の後腐れもなくーーーー正々堂々と胸を張って生み出すことができる。


 千歳に今回の企画を説明された時、僕が思わずにやけてしまったのはこれだーーーーー自由に新キャラを決められる。


 ーーーつまり、僕らの日常を、僕に妹が存在する世界観に変えることができる。

 それができれば、華を添えるどころか、もはやその子が華そのものとして君臨ーーーー否、降臨する。


 こんなまたとないチャンス、絶対に逃してなるものか。


 案の定、千歳は難色を示した。


「妹ね……まぁそれも無難なところではあるとは思うけれど、でも……」


 ここまでの状況下で、僕らに兄弟姉妹がいるというのは、いささか強引な感はあるけれど、しかしだからと言って支離滅裂というほどのことではない。


 これまで登場しなかったことへの違和感はあるにしても、別に僕らが『一人っ子』と明記されてはいない……はず。多分。おそらく。メイビー。


 まぁいざとなったら、禁断の必殺技、究極奥義かいこうを使うまでだ。


 これまで散々メタ発言に突っ込んできた僕だけれど、こと妹のこととなれば容易に禁忌タブーの一線を越えてしまう脆弱っぷりである。

 支離滅裂なのは他でもない僕のようだった。


 千歳はいまいち納得がいっていないようで、難しい顔をして考え込んでいた。


「……そもそも、私にはその『妹燃え』というものがよく理解できないのだけれど」


「いや、言い古されたボケをするなよ。燃えるんじゃなくて萌えるんだよ」


「え? いやでも、『あ〇たのジョー』の矢◯丈は、最後、妹の声援で灰のように真っ白に燃え尽きたのだから、あながち間違いではないでしょう?」


「まぁ、そうかもな」


「………」


 千歳が苦虫を噛み潰したような顔をした。


 本人は完全にボケたつもりだろうし、また僕もそれを理解している。そもそもジョーに妹はいない(いたらすいません)。


 だがしかし、ここに「いや、マンガ史に残る屈指の名シーンを、そんな風に汚すな! 妹の声援で燃え尽きるとか、どんなシスコンボクサーだよ!」と突っ込んであげられる人材はいないのだ。


 実際、妹に黄色い声援を送られれば、僕だったら燃え尽きている自信がある。


「話を戻すけれど、そもそも妹の何処がそんなに魅力的なの?」


 理解できないといった風に小首を傾げる千歳。

 そこには、普段の馬鹿にし腐った態度は感じられず、ただ純粋に疑問に思ったから訊いてきた色がある。

 疑問を疑問のまま放置しておけないところは、いかにも聡明な彼女らしい。


 それに、その反応に無理はないだろう。

 千歳がラノベとか、そういう類のカルチャーに触れ始めてまだ日が浅いし、経験の短さを抜きにしても女の子、それもこいつ程の女の子となれば、僕ごときの欲望など理解の範疇を超えているに違いない。


 でも、だからこそ、僕も、誠意を持って、真摯な態度で語るとしよう。

 彼女の新しい扉を開けてやることにしよう。

 妹の魅力を存分にーーーー瞳を輝かせながら語るとしよう。


「とは言っても、僕個人的な意見としては、世の男子は一寸の例外なく皆が妹を欲しているはずなんだよ」


「なわけねぇだろ、あぁん?」


「口悪っ!?」


 さっきまでの殊勝な感じは何処いったんだよ。

 急に口調を変えんなよ、思いがけず新キャラが登場したのかと思ったわ。

 逆ドッキリかと思ったわ。


 千歳は、今度こそ普段通りの人を小馬鹿にしたような、侮蔑的な視線を向け、深く嘆息した。


「そもそも今現在、実際に、それこそ真隣に妹がいる男性だっているでしょうに」


 ……ふむ。

 まぁ、ないものねだり程無意味で虚しいものはないけれど、それでもやっぱり自分にないものを求めてしまうのが人間の性であり、人間を人間たらしめている核となる部分であることは確かだ。


 僕に兄がいれば弟姉妹を欲しがるのだろうし、弟がいれば兄姉妹を欲しがるのだろう。


 それは姉妹の場合もまた然り。

 逆に言えば、妹がいればーーーー妹を欲することは、なくなる。


 そんなことを言っては身も蓋もないけれど。


 だからまぁ、結局何が言いたいのかというと、実妹がいる人にとってみれば僕の切望はただの戯言であり、聞くに値しない愚見だということだ。


 なれば、言い方を変えよう。

 世の男子が皆妹を欲しているのではなくーーーー世の男子は皆妹を愛しているのである。


 実妹だろうが義妹だろうが妄妹(妄想上の妹)だろうがーーーー皆一様に、万物に溺れるほど愛される存在だと、僕はそう信じている。


「何か格好いいことを言っているようだけれど、噛み砕いてみると、ただの童貞の妄言ね」


「童貞は関係ないだろ」


 童貞は関係ないが、まぁ妄言ってところは千歳の言う通りかもしれないと思わなくもない。

 実際に妹がいる人に「妹が欲しい」だとか「妹がいればなぁ」とか「妹さえいれば人生は常に(以下自粛)」とか話してみると、ほぼほぼ100%の確率で「妹なんてそんなにいいもんじゃない」って回答が返ってくること請け合い。


 やれ家では小うるさいだの煩わしいだの毎度こき使われるだの可愛げがないだの……。


 だが、僕はあえて言いたい。

 それは妹という存在を貶めていい理由にはならないと。


 それは『妹』だから悪いのではない。


「ーーーそう、それは『お前の』妹だから悪いんだ!」


「ねぇ、今日のあなた、偏差値が2億くらい下がっている気がするのだけれど、大丈夫?」


 それ以上頭が悪くなったら、いくら私がついていても取り返しがつかなくなるわ、と、もはや突っ込むどころか憐れむように、可哀想な子供を見るかのような視線を投げかけてきた。


 自分で言うのも何だが、それは偏差値というよりも知能指数の方だと思う。

 本当に自分で言うのも何だな。

 

 僕はそのやりきれない反応に肩を竦めて、


「何を言っているんだ千歳。僕は今、新キャラ、ひいては僕らの日常の進退について真面目に考えているんだぞ。これ以上ないくらいに真剣に熟慮しているんだぞ」


「え、えぇ……」


 珍しく、本当に珍しく、千歳が狼狽したような態度を示した。

 その珍景に気を良くした僕は、


「分かってくれたか。じゃあ続けるぞ」


「まだ続くのね……」


 千歳は辟易した表情で、深く長いため息を吐きながら額に手をやるが、無論だ。

 自称するのはあらゆる意味で気が進まず、自称どころか自傷でもあるけれど、持たざる萌え豚の妹への熱き渇望は止まることを知らない。


「はぁ……仕方ない。こうなったら、とことん付き合ってあげるわ」


 何かを諦めた様子の千歳は、ぱんぱんと軽く自分の頬を叩くと、すっと居住まいを正して聞く体勢に入った。


 如何に止めたところで収まることはないのだろうと、腹を括ったようだ。あるいは首を括ったのかもしれない。


「ちなみに、一樹。あなた、もし仮に自分に妹がいたとしたらどんなことをしたいの? あるいはされたいの?」


「そうだなぁ……」


 それは妹だけに限らず、万物において持たざる者が空想することだけれど、改めて訊かれると、何だか妙に小っ恥ずかしいな。


「やっぱり、家に帰った時に、あのお決まりの台詞は言って欲しくはある」


「あぁ、それなら有名だから私でも知っているわ。確か、『お風呂にする? 入浴にする? それともB・A・T・H?』」


「全部風呂じゃねぇか」


 そんなに入ってたらのぼせちゃうわ。


「『ご飯にする? お米にする? それともR・I・C・E?』」


「頼むから炭水化物以外も食わせてくれ」


「『私にする? あたしにする? それともあ・た・い?』」


「妹何人いるんだよ、天国か」


 正しくは『お風呂にする? ご飯にする? それともわ・た・し?』だ。


 まぁこれは兄妹間のやり取りというよりも、元々は新婚夫婦のやり取りとして一世を風靡した気がするが、現実に玄関先でこの会話を繰り広げているカップルはまずいまい。


 玄関先と言えば、これまたテンプレの『行ってらっしゃいのキス』と同レベルのおぞましい痛々しさがある。


 それは分かっていても、いや分かっているからこそ、僕みたいな思春期のどうてーーーーごほん(咳払い)、思春期の男の子は妄想してしまうのである。


 妄想は自由だ。行動に移さない限りは。


 千歳ははてと首を傾げ、


「いや、でもあなたの場合、あなたの方が帰りが遅くなるなんてことはないんじゃないかしら。だってあなた友達いないし」


「もはや僕がぼっちキャラとして定着しつつあるな……」


 だが千歳の言い分ももっともだ。

 決していないわけではないのだが、それでも放課後にゲームセンター然り、映画館然りにふらっとトゥギャザーするくらいの友達を僕は持っていない。


 しかしまぁ、そこは問題あるまい。


「その時は、妹にも友達を作らないようにさせるから大丈夫だ」


「最低最悪の兄ね」


 路上の汚物を見るような、蔑んだ目を向けられる。

 その眼光が、悠然と「死ねばいいのに」と語っていた。


 視線だけで人を殺せるなんて、ホラーじみた設定もあったもんじゃないが、実際に目の当たりにしてみると背筋が凍り、本当にこのまま凍死するんじゃないかってくらい怖気がした。


 やがて千歳は怜悧な眼差しを引っ込めると、今度は呆れた息を吐き、


「まさか何の特徴もない黒子キャラだったあなたが、シスコンでロリコンなんて特殊性癖を持っていたなんて……」


 と、頭痛を堪えるかのように額に手をやりつつ呟いた。


「いや、シスコンはまだいいにしても、僕は別にロリコンではないぞ。僕は少女や幼女が好きなんじゃなくて、妹が好きなんだ。妹だったら1下でも、何なら同い年でも年上でもいいとすら思える」


「あなたの脳味噌はオワコンだったようね……」


 人の脳味噌をコンテンツ扱いするな、と言いたかったが、千歳の絶望顔を見たら飲み込んでしまった。


 代わりに、聞くに堪えない譫言が口をついて出る。


「でも千歳、考えてもみろよ。妹って字は『女』に『未』って書くだろ? つまり、女性の未来像、これからのあるべき理想の姿が妹なんだよ」


「………」


 もはや何の反応も返してくれなくなった千歳は、本日何度目になるかわからないため息をこぼしたのだった。




*****




 ーーーそれから、数時間が経過した。


 ちらと窓の外を見てみれば、雲ひとつない青をたたえていた夏の空は、思わず見惚れるほどの綺麗な茜色に染まり始めていた。


 西に沈みつつある紅き太陽が、夜がもうそこまで迫っているのだと如実に告げているようだ。


 来たる夏の夜は短命で、でもだからこそ、その前兆である束の間のこの夕焼けは、ひどく風流なものだと、心の奥底で感じてしまう。


 今更古典話に戻るわけじゃあないけれど、そう言えば百人一首にそんな歌があったような。


『夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ』


 ……ちょっと、いや、大分違うな。

 慣れない知識披露はするもんじゃあないな。


 その数時間も僕の妹語りが途切れることはなく、日々頭の中で作り上げていた妄妹とのあれやこれやを延々と垂れ流していた。


 とうとう傾聴の限界を迎えた千歳が強引に遮り、ごほんと1つ大きな咳払いをすると、何処か疲れた表情で、


「もうあなたの偏好は十分伝わったから、ここらで落としどころとしましょう。このままだとあなたの評判どころか、それを聞いている私の評判も落ちそうだし。……新キャラもあなたの妹ってことでいいから」


「まじか」


 最後にぽしょりと付け足されたその言葉に、僕は思いっきりガッツポーズを決める。


 千歳が僕の要求を素直に受け入れたのは意外だったが、まぁ千歳は元々、企画だから仕方なく会議を進行している印象があった。

 彼女にとって新キャラなんてどうでも良く、たとえそれが女の子であったところで決して自分の立場がブレることはないと踏んでいたのだろうか。


 自分に絶対的な自信を持つゆえの、強者の余裕。

 流石、メインヒロインのメインヒロインたる所以である。


 僕の大袈裟なガッツポーズを苦笑交じりに見つめていた千歳は、立てた指をふりふりと動かしながら、


「新キャラを妹にするってことは、まずはあなたの両親が子供を作るところから始めないといけないわね。次回は御両親の濡れ場シーンから入りましょう。タイトルは『セッ」


「そんなど直球のタイトルがあるかっ!」


「え、じゃあ2人の出逢いの場面から」


「違う、ちゃんと馴れ初めからやれって言ってるんじゃない!」


「えー、じゃあ排卵からでそれで」


「妊娠の過程もいらねぇよ!」


 そもそも濡れ場シーンすらいらねぇよ!


 長々と妹語りを聞かされた鬱憤を晴らすかのように、直截的な下ネタをぶっ込んできた千歳に、「言わせねぇよ!」とばかりに突っ込んだ。


 だが、千歳は別段冗談で言ったわけではないらしく、難しい顔をして唸っている。


「でも、そこから始めないとリアリティがなくなるのではないかしら?」


「曲がりなりにも日常ラブコメに子孫繁栄のリアリティがあってたまるか。そういう生々しいのはなしだ」


 自分の両親のそういう乳繰り合いなんて、想像するだけで吐き気を催すレベルだ。ましてやそれを事細かに語るなんて言語道断である。


「なぁに、心配しなくても、日本の技術の進歩は凄まじいからな。あと数年後には、妹を作るんじゃなく、創る時代に変わっているさ」


「あなたの倫理観はどうなっているのかしら……」


 呆れたため息を吐く千歳。


 だが、妹のためなら倫理すら捨てる。

 それが兄貴というものだ。


「それに、そうじゃなくっても、義妹って線もあるからな」


「ーーーー義妹?」


 義妹。

 その単語を耳にした途端、千歳の眼光がやや鋭くなるが、僕はそれに気づかない。


 エンタメ作品では、主人公の妹だと思われていた女の子が、実は血の繋がっていない義理の妹だと発覚、あるいは最初から義妹だとわかった上で、そこから主人公と恋に落ちていくなんて展開は結構多い。

 と言うより、妹がヒロインのラブコメ作品では、むしろ義妹設定の方が普通なんじゃないだろうか。

 実妹との恋愛なんて不健全だと、見る側にバイアスがかかるのは避けられないし、そんな恋愛に身をやつす主人公はかなり奇異に映ってしまうだろう。


 だからまぁ、一応ラブコメを謳っているならば、義妹という線もありだと思ったのだがーーーーー


 と、その辺のところをかいつまんで説明する僕。


 すると、そこで、僕はようやく、千歳がこちらを射抜くような冷めた目で見つめていることに気づいた。


「え、ど、どうしたんだよ、千歳?」


 戸惑いながらも、探り探り訊ねる僕。

 すると千歳は、その眼光を緩めることなく、


「一樹、新キャラを妹にするのは認めるわーーーーただし、条件がある」


 と、淡々と言った。

 その表情は、何処か怒っているように見えた。


「じ、条件?」


 思いもよらないことを言われた僕は、そうオウム返しをする。


 それに千歳はこくりと頷き、


「えぇーーーー新キャラは実妹にすること。いいわね?」


「え……いや、でも」


「いいわね?」


 再びそう念を押され、その有無を言わさぬ迫力に、僕は「は、はい」と答えることしかできなかった。


 まぁ、僕としては実妹だろうが妹が生まれるのであれば万々歳だし、別にこの条件に対して文句があるわけじゃない。


 しかし、何故千歳が唐突に、しかもこんなに不機嫌な様子でもって義妹の登場を許そうとしないのか、その真意がわからずに訝しんでしまう。


 僕の返答に満足したのか、一転して機嫌良さそうに軽く微笑みながら、「少し喉が渇いたから、お茶でも持ってくるわ」と言って部屋を出ていった千歳の後ろ姿を、僕は呆然と見つめていた。



 ともあれ、こうして。

 意見をぶつけ合うこともなく、ディベートと言うよりは、僕の妹講座で終わってしまった感は否めないけれど。


 紆余曲折を経て、一部条件付きではあり、また何処となく釈然としない雰囲気を残したまま、僕らの日常に華を添えてくれるであろう、一之瀬一樹の妹がここに誕生したのだった。



 乞うご期待。

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