第14話:妖精について私が知ってる二、三の事柄②
真っ向から否定された紗矢がしょんぼり肩を落とすのを感じて、何とか言い抜けないとと再び委員長に視線を戻したら、
ごふっ!!
「ちょっと! なんですのその奇っ怪なお顔は!!」
「や、その、ちょっとむせて……」
うっかり吹き出してしまった美羽に目をつり上げる委員長、頭に何かを乗せていた。いや、正確には乗っていた。
『もふ~♪』
艶やかな髪の上で、ご機嫌で鼻唄なんか歌っているのはフワフワした綿毛みたいな物体だ。大きさは手のひら大、可愛らしい薄紅色で、ちょこんと小さな手足がついている。
(よ、妖精? 妖精なの、あれ!?)
「こらあっタマコ! 朝っぱらから美羽に絡むでないわっ」
「何ですってええええ!?!」
どこかに寄り道していたらしき杏珠が飛んできた。凄まじい勢いで振り返った拍子にふわふわが転げ落ち、美羽の手元に降って来たのであわてて受け止める。『もふっ?』とのん気につぶやいている妖精さん(仮)をよそに、お嬢さま二人の熾烈な舌戦が始まった。
「何度言えばわかるのかしら紅小路さん! タマコではなくてアキラコ、
「なああああにが魂の名じゃあつかましい!! 勝手に読み方を変えておるだけじゃろうが、戸籍謄本にはばっちりタマコと明記してあるわ!!」
「不愉快な単語を連呼しないでくださるかしらッ!? 全く口の減らない、永代華族紅小路家の名が泣きますわよ!!」
「こんなことで泣くような安い家名ではないわ! お主みたく、編入試験で全科目ほぼ満点だったとか自分より美人だとかいうくっだらない理由で人様に突っかかる方がよっぽど可哀想じゃ!!」
「こ、こ、この、言ってはならないことを堂々と~~~~……!!!」
つまりはまあ、そういうわけだ。皮肉なことに、当の美羽が素直すぎて全く嫌味が通じず、さらには杏珠という多弁の権化みたいな障壁がいるので、毎回放った攻撃が倍以上になって返って来る悲喜劇に見舞われている委員長なのだった。
「あ、杏珠さんすごい! 霧生院さんの舌鋒が鈍った!」
「口から先に生まれてきたと評判の委員長を完封するなんて……恐ろしい子……!!」
「……うーん、確かにすごいかも」
『もふ?』
盛り上がる紗矢と巴萌の横で、妖精を匿ったままうなずいてしまう美羽だ。あんなふうに立て板に水でしゃべれるようになったらさぞ楽しいだろうなぁ。
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