第二章:

第12話:断章 夜明け前

 何の前触れもなく目が覚めた。

 うっすらと見える置時計の針は、午前二時過ぎを指している。普段なら一番眠りが深くなる時間なのに、どうしたというんだろう。

 明日も早いのだから寝ておかねば、と、寝返りを打った時だ。ことことと、本当にかすかな音がした。

 上の階のひとが起きたのか。いや、それにしてはやけに音が軽い。

(ねずみ、かな?)

 気づかなければよかった、と思いながら、寝具から顔を出す。そちらに目をやって、――息が止まった。

 反対側、ちょうど同室のクラスメイトが寝ている寝台の足元の方。ぼんやりとした、白っぽいものが蠢いている。風で布が揺れるような動き方だが、あいにく窓はきちんと閉まっていて風の通り道は存在しない。……第一、あんなところに布が掛けられるようなものは置いていない。

(おばけ……!!)

 頭から寝具を引きかぶって、目をつぶり耳もふさいだ。

 結局、空が白みかかるまで、眠りにつくことはできなかった。

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