決戦(3)

 ……は? ……はぁあああああん!?


 いや、今そんな雰囲気じゃねーだろ!!!! ここは血を血で洗う殺し合いの場所なんだぞ!!!! バトル・ロワイアルなんだぞ!!


 ……こんな状況で何をそんな馬鹿げたことを……もしかして洗脳状態とかになってるのか? ならマルクとかに解除してもらわなきゃ……とか思っていると。



「ねっ、ねぇ!!! ホームズ!!! もう無理!!! 」

「クッ……強いっ……!!!」


 ……マルクの情けない声とクルトの辛そうな声が聞こえてきた。どうやらそんな状況ではなさそうだ。……そして。


「…………ねぇ……ホム……さん…………ねぇ……すき?」


 なんか片桐がメンヘラみたいになってんだけど……この状況どうすりゃいいの? ……分かんねぇよ。



 ──


 ……依然として後ろから辛そうな声が聞こえてくる。


 ……片桐はフラフラになりながらも必死に立って、俺に声を届けている。


 ……他のメンバーも大勢のフードの男達と逃げずに戦っている。


 そうか。……みんな戦ってるんだ。命を懸けて。なら

 俺も……戦わなきゃ。






 ……いや、何とだよ。



 自分の気持ちと……?



 ……いや、もう考える時間はない。もう恥ずかしいとか言ってる暇はなさそうだ。


 俺は心の奥底に眠っていた、片桐に対しての思いを打ち明けることにした。



 ──










「……好きだぞ。クローバー」


 ──そう言った瞬間、片桐に力が戻った。


 ……いや違う。力が戻ったのではない。……最初から力があったのだ。わざわざこいつは隠して弱ってるフリをしていたんだ。


 片桐は大きく目を開き、にゃっと口を開いて、笑いながら魔法を放つ体制を取り出した。


「えへへっ! 弱ってるフリしたらホムさんが好きーって言ってくれたっす! これはボイスレコーダー作っておくべきでしたねー!」

「お、お前なぁ……」


 ああ、呆れた。とても呆れた。めちゃくちゃ呆れた。史上最高に呆れたが……


「へへ、ボクもだーい好きっすよ? ホムさん!」


 それ以上に片桐がいつもの調子に戻ったことが何よりも嬉しかった。


「はぁ……ぶちかましてやれ!! クローバー!!」

「はいっ!『ファイナル・ブレイジングッ!!』」

「なっ!?」


 片桐は男に向かって、炎魔法を放った。


 素早いスピードで飛んできた魔法の玉を男は避けることができず、顔面にクリーンヒットし……


「だあぁああああ!!!!!」


 しばらくのたうち回った後、倒れて動かなくなった。



「……殺ったか!?」

「いや、ホムさんフラグ立てないでくださいよ」


 ──


「おいホームズ達大丈夫か!」


 入口の方からリーノ達がやって来た。


「こっちは大丈夫だ、そっちは?」

「ああ、雑魚ども全員ぶちのめしてやったぜ!」

「私に傷一つ付けれる者はいなかったぞ!」


 どうやら全員倒したらしい。流石にこの2人は強いな。


「はぁ……怖いよ」

「僕1人倒しましたよ!! すごくないですか!!」


 メルとエミリオも無事みたいだ。本当に良かった……んで。


「さて……どうするこれ」


 俺達の周りは、裏ギルドメンバーの死体があちこちに転がっていた。いくら悪人とはいえ、この光景を見続けるのは気分が悪い。


 そこで片桐が指揮を取り出した。


「クルト君、街から警備隊を呼んできてください。その間にボクがこの人らを生き返らせます」

「えっ、生き返らせるの?」

「はい。罪は生きてしっかり償って貰わないと、ダメっす。……逃げるなんてずるいっす」

「……そうか」


 片桐は裏ギルドメンバーを生き返らせた。もちろん手足を縛った状態でな。


 そして10分程経った時、クルトが警備隊を呼んできて裏ギルドのメンバーは全員警備隊によって連れて行かれた。……ロビンも。


「ち、ちょっと!! 僕仲間でしょ!? ホームズさん!!」

「……お前俺を殺そうとしてたんだからな。そのこと絶対忘れねーぞ」

「ち、ちょっとぉおおおお!!! ああぁぁぁ!!!」



 ……それらを見届けると、全てが終わったということを感じて、疲れがどっと溢れてきたのだった。


「終わった……あー!! 終わったぁ!!!」




 ──




 次の日。メルやエミリオの提案により、メルシーハウス貸切でお祝いパーティーを開くことになったらしい。


 正直俺は疲れてるので、ずっと寝ていたかったのだが……


「起きるっす!! ホムさん!!」


 ガバッと強引に布団をめくられる。そして冷たい風が俺の体にダイレクトアタックして、縮こまってしまう。


「う、うぅ……さ、さみぃ」

「今日はボク達の為にパーティー開いてくれてるんすよ! 行かなきゃダメっす!」


 片桐に無理やり起こされて、外に出る準備をする。


 いつもの平穏な日々が戻ってきたんだなぁ……とひしひしと感じながらちゃっちゃと着替えた。


 そして紺のコートを手に取る。


「さぁ! 行くっすよ!」

「へぇーい」

「あ、待ってください!」


 片桐は両腕を大きく広げるポーズをする。


「……なに?」

「大好きのハグっす!! ほらぁ!! 」

「嫌だよ恥ずかしい」

「もー。ホムさんってばー!! ボクのこと好きならこのくらい……」










「…………」

「………………ふ、ふぇ?」







「……ほら、行くぞ」

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