決戦(1)

 俺達はザルツ山に到着した。頂上付近の洞窟の中にアジトがあるらしい。


 そして俺達は山を登り……それらしき洞窟を発見した。俺はロビンに聞いてみる。


「ここがお前らのアジトか?」

「そうですね! でも普通見張りがいるはずなんですけど……あれ? いませんね?」


 ロビンは首を傾げている。……確かに入口には誰も立っていなかった。随分強気なものだな。


「早く全員で突っ込もうぜ!」


 突然リーノが皆の先陣を切って洞窟に進もうとする。が、俺はそれを急いで止める。


「待ってくれ。考えがあるんだ」

「何だよ考えって」


 俺は皆に向かって作戦を話し出した。


「まずは俺が1人で乗り込む。下手に刺激したら、奴らクローバーに何をしでかすか分からないからな……」


 ──その間にクルトが一人一人に小さな紙を配り始める。それは『本当の作戦』が書かれた内容の紙だ。


「……そしてヤバくなったら俺が笛を吹く。そしたら皆洞窟へと突撃してほしい。笛を吹いてから来てくれ……分かったか?」


 クルトが作戦の紙を全員に配り終わったのを確認してから、俺は大きな声で言う。


「それじゃあ行ってくる!!」


 ──


 ……なーんてな。


 ──


 洞窟の中は薄暗く、両端に松明が均等に並べられている。そして地面には足跡が続いている。誰かいる気配もするが、構わずにオレはその足跡を辿るように奥へ奥へと足を進めていく。


 そして……



 ──手錠と足枷を付けられて座り込んでいるクローバーの姿を発見した。


「お、おい!! クローバー!!」


 オレは急いで駆け寄る。


「おい大丈夫なのか!?」

「……ホム……さん?」


 どうやら意識はあるようだが……


「おいクローバー!! 分かるか!? 助けに来たよ!!」

「……」


 クローバーはぐったりしている。この手錠……魔力を吸収する魔道具の一種だ。エグいことしやがって……


 ……早く外さないと。


 手錠を詳しく見てみるが、やはり鍵がかかっているようであった。早く鍵……鍵を探さなくては……


「……捜し物はこれかな、ホームズ君?」


 ふと、背後から不気味な声が聞こえてくる。当然振り返って見てみる。


 そこにいたのは、タキシード姿の白髪糸目の男だった。洞窟内は暗くてよく見えないが、ずいぶんと整った格好をしているようだった。


「……誰だ?」

「おやおや忘れてしまわれたのですか。随分前にギルドハウスで会ったでしょう。ルイトですよ」

「……」


 その男はオレの顔をジロジロ見つめくる。オレはそいつに向かって叫ぶ。


「おい!! クローバーの鍵を渡せ!!」

「……お断りしますよ。私達の大切な『武器』を返す訳にはいかないので」


 何が武器だ……!! ふざけやがって!!


「違う!! クローバーはオレ達大事な仲間だ!!

 武器なんかじゃない!!」

「ふふ、よくお仲間ごっこなんかできますね。彼女の過去をご存知ないのですか?」

「過去?」

「まぁ、冥土の土産にでも話してあげますよ」


 すると男はまるで昔話でも話すかのように、ゆっくりとした口調で語り始めた。


 ──


 元々彼女……カタギリは私達の仲間だったのです。


 その当時は裏ギルドメンバーも少なかったので、メンバーを手当り次第かき集めていた時にたまたま彼女を誘ったのです。


 適当に「世界をより良くする為に仲間になってほしい」とかなんとか言ったら彼女は仲間に加わってくれました。


 そして裏ギルドの新メンバーは力を見るため、最初は簡単なクエストを受けてもらうのです。


 ……まぁ正直期待はしていなかったのですが。


 ですが、そこで目にしたのはとてつもない魔力で最大級の魔法を放つ彼女の姿!他の新メンバーと比べても1つも2つも格が違っていたのです!


 ……それはそれはもう最高の人材でした。


 そこで私達は彼女を言葉巧みに操り、モンスターを壊滅させ、村を破壊させ……人を殺させた。あいつは悪いヤツだと言うと素直に信じて言うことを聞いてくれましたよ。ええ。


 とても稼ぐことが出来ました。カタギリには本当に感謝してますよ。


 ……ですがそれも長くは続かず、私達の本当の目的に気がついたらしく、いつの間にか逃げ出してしまってました。


 ですがその後、我々は力を付け自分の姿を変えパワーアップし、新・裏ギルドを作り上げました。後は彼女が再び仲間になるだけです!


 そしたらこの国……いえ、この世界は確実に私達の物になる!!


 ふはは……はははっ!! あはははは!!


 ──


 ……クソっ……黙って聞いてりゃ馬鹿みたいな話をペラペラと……!!


 オレの中で怒りが湧いてくる……いや、そんな生易しいものではない。怒りを超えた感情……殺意だ。



「……殺すッ。殺してやるッ……!!」

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