奪還作戦(2)
「……えーっと、ロビンだっけ。お前が持ってる情報を全部教えてくれよ」
「全部ですか! 長くなるけどいいですか!」
「うん……いいから教えて」
そう言うとロビンは「はい!」と返事して語り出すのだった。
──
まずですね、僕は裏ギルドのメンバーに所属していまして……あ、裏ギルドって言うのはルナティア王国を乗っ取ろうと考えている組織のことですね。
それで着々と計画を進めていたんですけど、どうも戦力が足りないってことで仲間を集めていた所だったんですよ。
それでリーダーが言ったんです。「昔、ギルドにとてつもなく強い魔法使いがいた。そいつを仲間に出来たら計画は確実に成功するだろう」と。
そこで我々はその魔法使いを捜索したところ、なんとこんなボロっちい所で便利屋をやってるって情報が出てきたんです。そして更に謎の男と一緒に過ごしているとの情報も手に入ったんです。
そこで我々はこの男を人質にしたら、この魔法使いは仲間になってくれるのではないかと考えたのです。
そして昨日。魔法使いと接触に成功して、リーダーは「仲間になれ。さもなければお前の男を殺す」と伝えた所、OKして貰えたらしいです。まぁ脅しですけどね。
そして今日。我々のアジトのあるザルツ山へと魔法使いを連れて行くことに成功したのですが……ミスも犯していたのです。
それは置き手紙を許したこと。そしてそれであなた達が隠されたメッセージに気づいてしまったことです。
僕は念の為に便利屋を見張れと、男が不振な動きをしたら処理しろと言われたので見張ってたのですが……この通り負けて、貴方様の仲間となったという訳なのです。
まぁーこんな感じですね。
──
「なるほどな……いやまずいよね。この状況!! まずいよね!!助けにいかなきなゃ!!」
大体の出来事は分かった。だが、何も解決していない。まだ片桐が危険な状態であることにはなんら変わりはないのだ。
俺が急いで向かおうとすると、ロビンが俺の手を引っ張って引き止めてくる。
「待ってください! アジトには沢山の裏ギルドメンバーが溜まっているはずです! そんな1人だけじゃやられますよ!?」
「そんなこと言ったって……俺は助けに行かなきゃいけないんだよ!」
これは俺の問題だ。他の人を巻き込む訳にはいかない……ロビンを振り切って進もうとしたら、クルトも俺を引き止めようとしだした。
「ホームズ。ロビンの言う通りだ。お前1人で行ってもこてんぱんにされるのがオチだ。確実にクローバーさんを助けたいのなら、こっちも仲間を集めなきゃ」
「……仲間」
俺に仲間なんて……そんなの……
「……ホームズ、お前便利屋だろ? 世話をしてやった人が俺以外にも沢山いるだろ。そいつらに事情を話したらどうだ?」
「でも……そんな迷惑をかけるわけには……」
そんなただの依頼人だった人に……片桐を命を懸けて手伝って欲しいなんて言える訳がない……
するとクルトは笑って、俺の肩をポンと叩いた。
「バカだなぁホームズは。絶対お前らに感謝してる人がいるんだって。オレもその内の1人だし」
「……そうなのか?」
「そうだよ。きっとみんな手伝ってくれるって……ほら、仲間集めに行こう!」
そうか……みんな感謝してくれてるのか。なら……今回ばかりは……俺もわがままな依頼を頼んでもいいのかな。
「分かった。誘いに行こう」
「よしきた! 誰から誘いに行く?」
うーん……やっぱり最初は1番絡みが多かったメルの所だよな。
「まずはミルドタウンのメルシーカフェに連れてってくれ」
「了解」
クルトはテレポートを唱えて……移動した。ロビンも着いてきた。
──メルシーハウス───
「いらっしゃーい……あ、ホームズと……お友達? まぁー座ってお茶でも……」
「メル! すまない! 俺に力を貸してくれないか?」
俺は店に入るなり、すぐに頭を下げてお願いをした。
「えっ、ちょっとどうしたの!? 」
「実はクローバーが連れ去られた。助けるのに力を貸して欲しいんだ」
「えっ……ちょっと待って……話が急すぎて何が何だか……」
メルは頭を抱える。まぁ無理もない。こんな話いきなりしてきたら、質の悪いドッキリだと思ってしまうよな。
……すると。
「そ、そ、それは本当ですか!!!」
奥の方から声が聞こえてくる。そしてドタドタと音がして……エミリオがカウンターへと出てきた。どうやら会話が聞こえていたらしい。
「ホームズさん!! それ本当何ですか!!」
「残念だけど本当なんだ。……エミリオ……お前も力を貸して欲しい」
するとエミリオは迷わずに
「もちろんです!!! 絶対に助け出してみせますよ!!」
と叫んでくれた。
「ありがとう……エミリオ」
「いいですよ!! 早く助けに行きましょう!」
俺とエミリオはぐっと硬い握手をする。
……それを見たメルは
「……はぁー、分かったよ。私も手伝う。クローバーちゃんには世話になったもん。それに……ホームズまでいなくなったら目覚めが悪いしね」
と言ってくれた。
「メル、ありがとう……!! 2人ともありがとう……!!」
──
「次はギルドハウスへ向かってくれ」
「了解ー」
テレポートで移動する。
──ギルドハウス──
ギルドハウス内を探すと……身長の高い2人が並んで立っていたため、すぐに見つかった。
「リーノさん! ミナトルさん!」
そう声を掛けると2人は振り向く。
「おう、ホームズどうした?」
「久しぶりだなホームズ。1日ぶりだ!」
いつもと変わらず2人は俺の呼びかけに答えてくれた。俺は手伝ってくれないかを頼んでみる。
「実はクローバーが連れ去られたんだ。……2人の力を貸してほしい。クローバーを助けてほしいんだ! もちろん報酬も──」
そこまで言ったところでリーノに殴られる。
「がハッ!!」
「馬鹿野郎!! 仲間を助けるのに金払うやつがいるか!!」
「その通りだホームズ。我々は友を助けるのに金貨等必要ない。お前達に力を貸そう」
2人はそう言ってくれた。
「2人とも……ありがとう!!!」
──
「いてて……まだ殴られた所が痛むよ……」
「次はどこに行くんだ?」
「えーっと……」
……すると背後から声が聞こえてくる。
「……クックック。貴様ら我のことを忘れていないか?」
俺達は振り向く。
「お前は……!!マルコ!!」
「……マルクだ。そんな茶番はさておき……クローバー氏が大変なのだろう? 我は手伝ってやっても良いのだが……」
「お願いします!!!」
俺はマルクに頭を下げた。もう盗人だろうがなんだろうが、俺には手伝ってくれる人が必要だった。
「えっ……じゃあ土下座……」
「お願いします!!!」
ノータイムで土下座をする。
「……ごめん。言い過ぎた。顔上げて? 」
「……手伝ってくれるんだよな?」
「あ、ああ。無論だ」
「……その言葉が聞きたかった。……お前前線に立てよな?」
「えっ」
───
「よし、ホームズ……そろそろザルツ山に行こうか」
「その前に伝えたいことがある……作戦があるんだ。これはお前の力が必要なんだが……」
俺はクルトに作戦を伝える。
「……へぇ。面白いねそれ」
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